第18話 大軍襲来
急いで宿屋を出ると既に村人たちは混乱状態だった。
「落ち着いてください!」
レティシアが必死に呼びかけていたが効果は薄いようだ。
「一体何が起きているんだ?」
航希が問いただすとレティシアは深刻な表情で答えた。
「深淵教団の大規模な侵攻が始まったようです」
「そんな……まさかここで?」
エルミナが震える声で言う。
「恐らく次の司祭が動き出したのでしょう」
ハルトが冷静に分析する。「この村はちょうど封印への道筋にあるはずです」
「ならば……迎え撃つしかないな」
航希が決意を固める。
「はい。全員準備してください」
レティシアの号令で全員が戦闘態勢に入る。
その時突然地面が大きく揺れ始めた。
「地震!?」
フィオネが驚愕する中村の北側にある丘陵地帯から巨大な黒い影が姿を現した。
「あれは……岩巨人!?」
航希の目には四メートル以上ある巨躯を揺らしながら進む石像のような怪物が映った。
「ゴォォォ……!」
その咆哮は大地を震わせ村全体が恐怖に包まれる。
「みんな!来るぞ!」
航希の警告に応じて全員が武器を構える。その時……
「待ってください!あれはただの巨人じゃない!」
ハルトが声を上げる。「よく見て!あれは……古代兵器です!」
「古代兵器……?」
レティシアが眉をひそめる。
「かつてこの世界がまだ一つだった時代……科学文明が栄えていた時期に作られた機械ですよ」
ハルトの解説に全員が驚愕する。
「つまり魔法ではなく機械の力を持っているということか……」
航希は慎重に観察する。「弱点はあるんだろうか?」
「通常の生物ではないので生命エネルギーへの依存はありません。しかし……おそらく動力源があります」
ハルトがそう言い終わる前に岩巨人が動き出した。
「まずは時間を稼ぎます!」
ノヴァが一歩前に出て巨大化すると岩巨人の前に立ちはだかった。
「ギャオォォ!」
ノヴァの咆哮と共に銀色の鱗が光り輝き岩巨人を押し返す。しかし……
「硬い!?まるで鉄みたいだ」
ノヴァは必死に戦うが岩巨人の装甲は想像以上の硬度を持っていた。
「ノヴァ!そのまま持ちこたえてくれ!」
航希が指輪に意識を集中すると新たな図形が浮かび上がった。それは水と雷の属性を組み合わせた複雑な紋様だった。
「ハイドロ・ボルテックス!」
航希の手から放たれた青白い渦巻きが岩巨人の足元に命中する。その瞬間大量の水滴が広範囲に散乱し電気を帯び始めた。
「雷槍!」
エルミナがすかさず追撃の魔法を放つと水中に帯電した電流が岩巨人の内部を駆け巡る。
「ゴォォ……!」
苦悶の声を上げながら岩巨人の動きが鈍くなった。しかし—
「まだだ!表面は破壊できない!」
アッシュが悔しそうに歯噛みする。
その時フィオネが何かを思い出したように叫んだ。
「そう言えばハルトさんが言ってませんでした?動力源があるって」
「ええ。通常機械は燃料や電力を必要とします」
ハルトが頷く。「問題はそれがどこにあるかですね」
「もしかしたらコアみたいなものがあるんじゃないかな?」
フィオネの推測に全員が注目する。
「なるほど。なら全身を隈なく攻撃するしかないか」
航希は決断するとノヴァに指示を出した。
「ノヴァ!一度下がってくれ!俺たちで分散攻撃を行う!」
ノヴァは短く頷き後退すると同時に全員が散開した。
「私が左脚を狙います!」
エルミナが前方に躍り出る。
「なら右脚は任せろ!」アッシュが斧を構え突進する。
「私は胸の部分を調べます」
レティシアが跳躍し空中から攻撃の機会を伺う。
フィオネは弓を引き絞ると同時に航希とハルトに視線を送った。
「行くぞ!」
航希の合図で全員が一斉に動き出す。岩巨人は腕を振り回し防御しようとするが……
「サンダーバレット!」
フィオネの放った電気の矢が岩巨人の右肘関節部分に命中する。
「グォォ!」
僅かに揺らいだ隙を見逃さず航希とハルトが接近する。
「見つけた!ここだ!」
ハルトが岩巨人の背中にある小さな穴を発見した。それは一見するとただの装飾のように見えるが確かに内側に続く通路があった。
「航希さん!中に核があります!」
ハルトが叫ぶと航希は指輪に意識を集中した。
「アイス・ランス!」
氷の槍が岩巨人の背中に突き刺さると同時に亀裂が入り内部構造が露出した。
「これか!?」
航希が手を伸ばすとそこには赤く光る宝石のような物体があった。
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