龍神様の信仰集めダンジョン攻略配信。
八塚みりん
第1話 龍神様のおなーりー、じゃ!
「くそっ、何でこんな階層に、あんな化け物がいるんだよ!」
もはやロボットかというほど巨大なゴーレム……A級魔物のヒュージゴーレムに追われ、俺は走っていた。
しかしついに限界が来て、その、人間三人分ほどの長さの腕に、勢いよく叩き潰された。
死。
それはソロ探索者にとっては、あまりにも身近だったはずだ。俺は慎重にやって来たはずだが……いつだって予測不能なイレギュラーというものは存在する。これはまさにそう、ノーブレーキのトラックに突然轢かれたも同じことだった。
「はっ……」
冷たい石の感触を背中に感じながら、俺は目を覚ました。
生きていたのか。何と幸運な。通りすがりの
身体を起こして周りを見ると、小さな薄暗い、何もない小部屋の中、石の台座のようなところに寝転がっていたらしい。石造りの壁を見るに、まだダンジョンの中のようだ。
そしてすぐ、違和感に気づく。視界に入った手足があまりに小さい。そして、着ている服も見覚えのないものだった。
配信用の丸形ドローンが、俺が起き上がったのに反応したのか、近づいてきた。
俺はドローンが空間に投影したバーチャルキーボードを操作して、ドローンに撮影されている自分の映像を見てみた。
「な、なんじゃこりゃあぁ!?」
そこには、小さな女の子がいた。
しかも、ただの女の子ではない。頭からは二股の小さな角が二本生えていて、髪は流れる水のような透き通った水色。そして極めつけは魚……とは少し違う、虹色の鱗が付いた長い尻尾。
知らぬうちに、見慣れない和風の赤と白の衣装を着ていた。動きやすい、短いスカートのような袴だった。
「どうなっとるんじゃ、この姿は!」
いやいや、姿だけじゃない。声も可愛らしい、マスコットみたいな声になっている。子供に人気が出そうな。それと喋り方まで、勝手に古風な喋り方に変換されている。
俺は一体どうなったんだ? あの時、何が起きたんだ?
配信は五分遅延だから、死の瞬間の直前にはセーフティが働いて配信は停止されたはずだが、録画自体は残っているはずだ。
録画の記録を見ると、俺が死んだ映像が確かに記録されていた。そして、その先誰かに助けられたような記憶はなく、ドローンは一人でさまよい、眠っているこの身体の元にたどり着いたようだ。
最悪の気分だ。間違いなく俺は死んで、どういうわけか見慣れない姿に転生した、らしい?
俺は冷や汗を垂らしながら、バーチャルキーボードを操作して、自分のステータスを解析させた。
ダンジョン産の材料を使い作られたドローンには、敵や自分の状態、ステータスを解析する機能がデフォルトで付いている。
ステータス画面を見ると、そこには、見慣れたHP、SP、MPのゲージが無くなっていた。体力やスキルポイント、マジックポイントは戦うための大前提情報。これが表示されていないのは異常事態だ。
ステータス画面の下の方へと視線を移すと、自分の技や能力の一覧が表示されていた。以前であれば、「アイテム鑑定」や「開錠」、「俊足」、「バックスタブ」などが表示されていたはずだが……
そこに並んでいたのは見慣れないものばかりだった。
種族:龍神
状態:信仰 … 生存に民からの信仰を必要とする(解除不可)
状態:老成 … 常に威厳に満ちた態度、口調となる。(解除不可)
スキル:龍気術 … 龍気を操り、肉体強化、放出を行う。
スキル:咆哮 … 高濃度の龍気を爆発的に放出する奥義。
「龍神じゃと……?」
勝手に種族が人間から龍神になっている。この奇妙な姿は、龍神とかいうものだったのか。言われてみれば角と尻尾は、龍のそれに見えなくもない。このわけのわからないふざけた喋り方は、老成、とかいう状態異常のせいらしい。
信仰? とか言うのは何だ?
見ると、HPなどの代わりに、一つだけ見慣れないゲージが存在していた。そのゲージには、信仰と書いてある。押してみると、説明が表示された。
信仰 … 民からの人気。民衆からの信仰が集まれば上昇し、無くなった場合は存在が消失する。
そのゲージはほとんど無くなっていて、赤い警告色が、もう尽きかけていることを訴えていた。
存在が、消失……? いやいや、死んだばかりなのに、俺はまた死の危機に瀕しているのか?
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