先生、お願いします

柏望

日本列島改造論

「先生、お願いします。頼れるのは、もう、田中角栄先生しかいないのです」


 鏡のように磨かれた議員会館の床には苦悶に歪む自分の顔が映っている。立場も金もなく、こうして頭を下げるしかできないこんな自分を、角栄先生はどう思われるだろうか。じっとりと滲む汗が首筋を伝い、今日この日のために購入してきたスーツと靴の間に染み込んでいく。

 派閥の議員やその秘書に至るまで、ネクタイの柄から時計の色まで、服装と立ち振る舞いを厳格に定めている角栄かくえい先生にとってはこれ以上ないほど見苦しい姿だろう。それでも今やるべきだった。

 因習に凝り固まった故郷の現状を変えるべく上京し大学で勉学に励んだ。ご縁があり角栄先生の事務所でお手伝いをする機会をいただき、時に「学だけじゃいかん」と叱咤されたこともある。

 ――だからこそ、建設省に入庁した今こそ、覚悟を示す時だと思った。


「先生、どうか、お力を貸してください」


 田中角栄たなかかくえい先生が教わった最大のことは、現実に目を向け、己の信念を曲げずに進むことだった。だからこそ、いま自分は、額の汗も、震える声も、全部さらけ出してここに立っている。


「その言葉が聞きたかった。日本の国土増強のためにともに進もうじゃないか。高木くん、顔を上げなさい」


 部屋の空気が一瞬で張り詰める。銅鑼を打ったような声が、壁や天井に反響し、耳鳴りのように響き渡った。

 がっしりとした体格と背広の張りで威圧感を放つ男、田中角栄先生の小さくも鋭い目がじっと私を捉えていた。全身の血がさっと引いていく、蛇に睨まれた蛙とは、きっとこういう気分なのだろう。しかし、ここが正念場なのだ。日本の未来のため、先生は必ず理解してくれるはずだ。私は震える膝を必死に支え、先生の眼光を正面から受け止めるように、まっすぐに見つめ返した。

 どれほどの時が経ったろうか、顎から落ちた汗が数滴床に滴ったころ、角栄先生の目尻がわずかにほころび、嬉しそうな笑みを浮かべた。持っていた煙草を灰皿に押しつけ立ち上がれば、一七〇センチにも満たない小さな身体が故郷の山岳すら霞むほどに厳かに見えた。


高木たかぎくん。君のような志ある若者に頼られて、私はとても嬉しいんだ」


 ダークグレーのスーツに白いシャツ。しっかり結ばれた紺のネクタイ。完璧に整った隙のない装いの背後に、両手を広げた大人二人分ほどの大きさで印刷された日本地図があった。日本列島を這うように引かれた赤い線は、まるで血管が脈打っているかのよう。長短や太さに至るまで様々な線の一本一本が幹線道路であり、新幹線であり、橋の建設予定計画だ。角栄先生の出身地である新潟の雪深い街から私の生まれ育った山奥の田舎に至るまで、角栄先生が引いた赤い線は日本全国の隅々をつなげている。


「三国峠をダイナマイトで吹き飛ばせば越後に雪は降らなくなる。余った土砂は海に運んでいって埋め立てに使えば佐渡と本土を地続きにできる。本州から北海道まで、金に糸目をつけずに掘って掘って掘りまくれば、日本列島のどこに住んでも一定以上の生活ができるようになるのだ!」


角栄先生の声は部屋中を震わせ、胸の奥まで響き渡る。


「私はこの国の国土増強のため、惜しむ物などなにもない!!」


 小さな目を太陽のように爛々と輝かせ、声を張り上げる姿は、唯一絶対の神からの神託の如き威厳さえ感じられた。

 日本全国を高速道路と新幹線で繋ぐなど荒唐無稽な話だと受け止める人もいるだろう。だが、実際にこの場にいて、その声を耳で受け、その眼光を間近に見れば、誰もが「この人ならやれる」と確信するに違いない。

 故郷を変えるという夢がようやく叶うと全身に力が入って、頬が熱くなる。角栄先生は自らの思いを語ってくれたのだから、私も覚悟を述べるべきだ。


「角栄先生の夢のため、不肖の身ではございますが、どうか、どうかこの高木をお使いください! 救急車さえ入れないようなあの故郷を田舎と笑わず、真剣に憂いてくれた先生のお気持ちに今こそ応えます」


 角栄先生の事務所には、老若男女を問わずさまざまな人々が働いていた。

 しかし、舗装道路すらない土地での暮らしを骨の髄までわかってくれた人間は、先生以外にはいなかった。地方から上京し、先生の手伝いをしている学生は何人もいたが、その多くは地方都市の出身や地主の子息。志はあっても、辺鄙さの真の重みを知る者はいなかった。

 角栄先生はわずかに目を細めると、重々しく頷き、立ち上がった。


「あいわかった高木くん。ぜひ。ぜひともこの寸志を受け取ってほしい」


 角栄先生が机の中から分厚い大型の封筒を取り出し、なんの躊躇いなく私の懐の中に滑り込ませてきた。ずしりとくるこの感覚は田中角栄事務所名物のそれだとすぐわかった。


「先生、お礼を申し上げたいのは私の方です。金銭など頂いては」

「君が金で動くような人間でないのは後援会でさんざん見てきた。どうか。どうか受け取ってくれ。タオル代くらいにはなるだろう」


 手のひらが震え、声もわずかに揺れた。公務員規定のことだけではない。これまでの学費や稼いできた額などが、まるで砂粒のように感じられるほどの金額が入っているのだ。

 田中角栄事務所名物五百万円の茶封筒。中身を知らなくても、いいや知っているからこそ受け取りがたい。

 だというのに、角栄先生は茶封筒をぐっと押し込んだまま手を離さない。私の顔を、そしてその奥を読み取るようにじっと見据えてわずかの身動きもしなかった。この封筒の重みで私の覚悟を量っているいるかのように。


「この金の使い方はわかっているだろう。私から教えるようなことはないと信じているよ」


 角栄先生の瞳の奥に熱く燃えている情熱が、私の心まで熱く燃やしていく。この金は建設超の一職員を買収しようとするものではない。ともに日本を良くすることを目指す同志に託したものなのだ。

 金は額ではなく、心意気で受け取ってもらうものだということを今理解した。


「わかりました。この高木、必ず成し遂げてみせます」

「やってみせるんだ。責任はこの田中角栄が取る。後始末も任せてくれ」


 あの角栄先生に万事を託されたのだと思えば体中に力がみなぎって、私の背筋は真っ直ぐ伸びた。

 数寄屋造りの伝統的な和風建築。県内有数の高級料亭に、行灯の橙色の灯が柔らかな影を落としている一室がある。畳に染み込む藁の匂いと、徳利から立ち昇る熱燗の香り。襖のわずかなきしみさえ、張り詰めた静寂の中ではひどく大きく響いた。目の前の男たちの耳に届くことはないだろうが、私には自分の鼓動がまるで太鼓のように聞こえている。


 仲居が器をそっと置くと、盃の縁が軽く震えて、静寂にまた一つ“音”が刻まれた。緊張がバレないよう敢えてゆっくりと箸を取り、白銀を炊いたように輝くご飯を一粒、ふくよかな漬物とともに口へ運ぶ。香の物の鮮やかな色合いにほのかな酸味。よく漬かっている。そう感じるのも一瞬で、緊張によって味覚が曖昧に喉の奥へと流れ去ってしまった。どうすれば、田中角栄先生から託された使命を果たせるのか。いくら酒を呑んでも酔う気配すら感じられない。


 東京へ出て、故郷へ戻った意味は、この席で男たちを説き伏せられるかどうかにかかっている。田中角栄先生の名前をちらつかせたとはいえ、一介の公務員がこの地方の有力者とのアポイントをまとめたのは私の手柄かもしれない。

 だが実際に状況を動かしているのは、政治家たちの欲望そのものだと痛感している。田中角栄先生には「君なら大丈夫だ」と励まされたが、その言葉は私の才覚への賛辞ではない。ただ、金と権力への渇望が最後の一押しになるというだった。


「で、どうだね、高木くん。田中先生は私のことを何か……言っていたかね?」


 桐谷きりや代議士は、恰幅のいい体躯に七三分けの髪型、濃紺のスーツという出で立ちで座している。 金地をあしらったネクタイがやや奔放な印象を与え、薄暗い料亭の照明にも負けずギラリと光る腕時計が目を引く。まるで田中先生が戒める『派手すぎる政治家』の典型を自ら演出しているようだ。


「はい。こちらに到着する前に、ぜひ桐谷先生にお声がけするようご指導いただきました。『打てば響く、本物の政治家だからな』と」


 桐谷代議士は愛嬌のある笑みを絶やさないが、その瞳の奥ではこちらの腹を探る視線が揺れている。票を取り、土地開発の利権を手に入れるための欲が、隠しきれていない。私を介して田中先生への恩を示そうとする思惑も──その狡猾さも、自分はすべて見透かしているつもりだが油断できないのは彼だけではない。


 隣席の男が杯を掲げ、柔らかな笑みを向ける。彫りの深い顔立ちに浮かぶ陰影、日焼けの濃い肌に刻まれた細かな皺、太い腕に浮かぶ血管。大藤おおふじ工務店の社長は現場たたき上げの風格を漂わせている。櫓木のように厚い胸板と強張った表情からは、得失を見極める狡猾さが伝わってくる。


「先生、よかったじゃないですか。いよいよ国政に打って出るなんてのも、面白いんじゃないですか」

「はっはっは。気が早いなぁ。大藤工務店とはまだまだ地元を盛り上げていきたいのに」


 大藤社長から賛辞を受けた桐谷代議士は軽やかに笑いながら酒を呷るが、その言葉には「結論を先送りにしてほしい」という暗黙の申し出が含まれている。地元で踏ん張って工事という実績をたたき出したい人間と、話題を逸らしてこの案件から離れたい人間。持ちつ持たれつで保たれていただろう均衡を、私が崩す。

 角栄先生の計画成就のため、今が正念場だ。大藤社長にはなにかなんでも呑んでもらう。私は意を決し、杯を静かに置いて話を切り出した。


「大藤社長、この案件は物資集積所の建設だけでは終わりません。高速道路建設の下請け、沿道整備。開通後の需要に合わせた新たな計画が、都道府県、市町村あわせて数え切れないほど控えています。今後の御社の業績にも多大なる貢献をするかと」


 柔らかな光の下で大藤社長の視線がグラスの影へと落ちる。大藤社長の動揺を読み取った桐谷代議士が、さらに踏み込んできた。


「大藤工務店にだけに声をかけたのは実績と信頼、そして今までの私への貢献があるからこそだよ。感謝の意を仕事として表明できればと思ったからこそなのだが、余計なお世話だったかね」


 大藤社長は居心地が悪そうに座布団に座り直すも、曖昧に言葉を濁すだけだった。


「うちにも事情というものが……」


 と呟く大藤社長の声を、桐谷代議士が鋭く遮った。


「ツベコベ言わずに進めてくれればいいんだ」


 その一言で、大藤社長の肩から力が抜け、青菜に塩をかけたようにしおれた。私は息を整え、追い打ちをかける。


「桐谷先生、いかに田中先生のご意向でも、無理強いは難しいかと存じます。東京には最新の機材と体力を備えた企業も多数ございます。まずはそちらをご検討ください。名簿をいまお渡ししますので」


 東京の企業からいくら金を受け取ることが出来るのか。桐谷代議士がほくほく顔で名簿を受け取ろうと手を伸ばす。名簿を入れた封筒に代議士の指が触れるかというタイミングで、大藤社長が叫んだ。


「あの祠があるのに工事なんかしたら命がいくらあっても足りねえぞ!」


 大藤社長の声が、料亭の静寂を破った。それは彼ら地元の者だけが知る、土地に宿る底知れぬ怖れの吐露だった。桐谷代議士が知らなかったのも無理はない。言葉にするのも恐ろしいから、祠がある地域の住民は言葉にするのも控えていた。


「大藤くん、そんな前時代的なこと君らしくもない。せっかく大金が転がっているんだぞ」

「あそこの祠は昔から触れちゃいけないんです。住んでる連中全員で代々守り続けてきたのに。今更それを破れば、ウチは看板すら立たなくなる。責任取れるんですか」

「私はそこまでやれとは」


 大藤社長の声には、祠への畏怖が混じっている。そのただならぬ雰囲気に桐谷代議士は気圧されたように息を呑んだ。地元のしがらみではどうやってもあの祠はどかせない。だから私は東京に出てきたのだ。


「祠の件は建設庁、というより田中角栄先生の下で責任を持って対処いたしますのでご安心ください」


 私の提案に大藤社長は絶句した。桐谷代議士はきょとんとした顔で問いかけてくる。


「高木くん、一体どういう意味かね?」

「東京には機械と資金だけでなく、祭祀を執り行える人材も集まります。それでも拒まれるなら、本件は白紙に戻して構いません」


 部屋の空気が、まるで水を打ったように変わった。大藤社長は額の青筋を隠すように視線をそらし、桐谷代議士は呆然と私を見返している。東京から役人が真面目に祭祀の話をしていることはまだ呑み込めていないようだ。


「というわけですから、今この場で……」


 私は鞄から合意書を取り出し、その重みを掌で確かめながら印鑑を押す位置を示した。


「判をお願いします」


 朱肉の香りを含んだ沈黙が、静かに満ちる。桐谷代議士はゆっくりと頷き、朱の印影が書類に刻まれた。


 大金と実績を手に入れることが決まった桐谷代議士は軽やかな足取りで立ち上がり、書類を携えて料亭を去っていく。外へと向かう背中を、私は料亭の門の前で頭を下げて見送った。彼の車のヘッドライトが揺れる灯りとなり、やがて闇へと消えていく。


 桐谷代議士を見送ったのは私だけでない。隣にいる大藤社長も同じだった。祠の対処を自分たちでなく、他所の誰かがやるとわかった途端の態度の変わり様は政治家に負けず劣らず見事だった。祠は恐いが、商売人らしく金も欲しいのだと確信する。


「今日はありがとうございました。少し、ご相談があるのですが……」

「はいはい。高木先生、なにかご用ですか」


 大藤社長にも桐谷代議士と同じくたっぷりとお土産をお持ち帰りいただいている。ちょうど買い取りたいものがあったので、少し用立ててもらえないかとお願いをした。


 私のお願いを聞いた大藤社長の目が、ひどく揺れている。眼差しはまるで信じられないものを見たかのようだった。


 逃げるようにその場を去った大藤社長を見送って、酒の残り香が漂う料亭の軒先から一歩外へ出ると、空気はひんやりと冷たく湿っていることに気づいた。東京の蒸すような湿気とは違う肌触りは故郷特有のもので。深く息を吸えば、鉄とガスではなく草と土の匂いを感じる。

 車に入ってエンジンを回せば、今までの空気は途端にホコリとガスに上書きされていく。けれど、心地よい。今の自分はこの匂いの中で生きていて、それをこの土地にも持ち込もうとしているのだから。

 料亭が遠ざかるほどに歩道がなくなり信号機が遠ざかっていく。祠のある位置に近づくにつれコンクリートで舗装されている道がなくなっていく。ヘッドライトの円錐が夜闇を切り裂いて杉林を素通りし、道の片隅にある石段の前で止まった。


「ライトは、付けたままでいいか」


 車のヘッドライトが煌々と光を灯しているが、石段の向こう側にある祠は見えない。山陰と鬱蒼と茂る木々に隠れているから昼間でも陽光が当たらないほど暗い場所なのだ。ただそれだけのことに、村にいた頃はどうしようもないほどの圧迫感に押しつぶされそうだった。道を進んだ先に済んでいる村人たちは今もそうなのだろう。

 それも、今日で終わるのだが。開いた後部座席にみっちりと詰められた木箱は一箱三十キログラム。中身はすべてダイナマイトであり、密会のあと田名角栄先生からのお土産を握らせて買い取ったものだ。

 箱を抱えて石段を一歩上るたび、靴底が湿った苔を踏みつける音が暗闇で異様に響く。闇の中で朧気な輪郭を浮かべる鳥居が見えて、喘息で納屋の外にも出られなかった幼いころを思い出した。

 東京で薬を飲み、栄養摂取に気をつけ、文武両道に励めば、今までの自分の身体が嘘のように頑丈に力強くなっていた。田中角栄先生が日本を変えようとするように、人も変わらなければならないのだ。だから、祠を壊さなければ、あの村はなにも変わらない。

 祠の四方にダイナマイトを等間隔で据え、導線を這わせる。汗は冷えきって額の内で氷の粒のようになり、指先の震えが疲れだけが原因でないことが自分でもわかる。最後の雷管を差し込む前、一拍だけ息が止まる。


「終わらせるんだろ」


 独り言を夜に放ち、車へ戻る。あんなに苦労して運んだダイナマイトの起爆装置は掌に収まるほど小さかった。設置から起爆までの過程は説明書を読んだから問題ないはずだ。

 深く息を吸い、起爆装置が作動するギリギリの距離でスイッチを押した。

 カチリ。

 掌に収まった起爆装置のレバーが倒れた瞬間、時が止まったように感じた。瞬きをするより早く起爆装置を窓の外に放り投げ、脚はアクセルを思い切り踏み込んでいた。

 次いで世界が反転する。

 稲妻のような閃光が、ヘッドライトの光すら塗りつぶして闇の中を駆け抜ける。視界が真空になり、運転中にも関わらず目を閉じかけた瞬間。腹を殴られたような衝撃が押し寄せ、タイヤが地面を滑っていく。車の窓ガラスがビリビリと震え、乾いた爆裂音が山肌を転がっていくなかでは、ハンドルを離さないように握るので精一杯だった――。


 パラパラと車の屋根に木っ端やらなにやらが落ちる音がして、目が覚めた。所々に傷のついた窓ガラス越しに窓の外を見ても、細かな粒子で薄くぼやけたヘッドライトの光線の外はなにも見えない。

 祠のある方を見ても闇の中にチロチロとなにかが燃えているのが見えるだけで、その勢いも徐々に弱まっていく。

 本当に祠を壊すことができたのか不安になってきた。説明書に書かれていた威力を計算して払拭する。大砲だのナパームだの、そんじょそこらの兵器でも及ばないほどの熱量と衝撃だ。あんな石造りの苔むした祠は、山を抉るほどの威力には耐えられまい。

 勝利感に酔いしれようとした瞬間、ふいに耳鳴りがした。

 額へ掌が被さる。脈打つ鼓動に合わせて視界が揺れ、鼻腔に熱いしぶきが走る。咄嗟に抑えた袖口にはどろりとした朱が滲んでいる。


「これくらいなら、興奮のしすぎだな」


 これくらいの出血なら興奮のせいだ、と自分に言い聞かせる。村人はあの祠を恐れていたし、かつては自分も祟りや呪いを恐れていた。そういえば、田中角栄先生と最期に会ったときから六時間以上の休息していない。宿に戻って田中角栄先生への報告書を送ったら、軽食を摂って半日ほど眠ろう。

 夜はまだ深いが、祠のない夜明けは――必ず見たい。

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