第45話 観測局最終宣告
未記録の王を退け、観測不能領域は一瞬の静けさを取り戻した。
だがその空は、すぐに破られる。
雲が裂け、巨大な“目”が開いた。
無数の筆記具が針のように光を放ち、僕たちを見下ろす。
◇ ◇ ◇
「……観測局本体か」
リュカが剣を握り締め、低く唸る。
魔導書少女は淡々と本を開き、文字を走らせる。
“観測局、最終宣告開始。対象:モブ勇者、矛盾因子”
「宣告って、なんか最終処分っぽい響きなんですけど!?」
僕は胃を押さえながら叫んだ。
◇ ◇ ◇
空から声が降りてきた。
それは言葉というより、頭の奥に直接響く命令文だった。
「――モブ勇者。
汝は歴史における逸脱因子。
存在を許容できない。
最終修正を行う」
光のペンが幾重にも降り注ぎ、地を刻む。
石畳がインクに染まり、街そのものが“記録紙”へと変わっていく。
◇ ◇ ◇
「このままじゃ……街ごと書き換えられる!」
リュカが叫ぶ。
「逃げる場所も残らない!」
「……やはりここで決着ですね」
魔導書少女の瞳は冷たく光っていた。
「対象が拒絶を続けるか、それとも消えるか」
「だから胃に悪い二択やめろって!!」
◇ ◇ ◇
光のペン先が僕に突き立とうとした瞬間、
胸の奥から声が湧き上がった。
――お前は、何者だ?
僕は震える唇で答える。
「僕は……ただの皿洗いモブだ!」
その言葉が、観測局の命令文とぶつかり合い、世界に激しい亀裂を走らせた。
◇ ◇ ◇
「矛盾因子……修正不能……」
空の目が揺らぎ、光が不安定に明滅する。
だが次の瞬間、声はさらに冷酷に告げた。
「……ならば、世界ごと初期化する」
「ちょっ、待っ――!?」
◇ ◇ ◇
次回、「世界初期化宣言」
お楽しみに。
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