第45話 侵入者と選ばれし者—歓声の裏で
9/23(土)ブルーホライゾン全国大会
最終戦 13:00
会場は熱狂の渦に包まれていた。巨大スクリーンに決勝進出者の名が映し出され、観客席からは地鳴りのような歓声が響く。
「決勝タッグ戦、いよいよ開始です!」
アナウンスと同時に、フィールドが変形を始めた。床が割れせり上がる岩盤。空には電光が走り巨大な戦場が現れる。
観客たちは息を呑んだ。
「すげぇ……今回は火山ステージか!」
「アークブレイブとセレスティア、アイアンウォードのトリプルペアだってよ!」
選手たちは次々とコクーンへと入っていく。祐也、タケル、アオイも、スポンサーの掛け声に合わせてドリンクを掲げた。
「乾杯!」
アオイが笑顔を振りまき、観客席が揺れるほどの大歓声が返る。
決勝タッグ戦が始まる。フィールド中央に立つΩNovaの姿に、観客は釘付けになった。
「Ωnovaか?……!?」
「すげぇ……動きがセレスティアに引けを取らない!」
「Ωnova!Ωnova!Ωnova!」
歓声が湧き上がる。
アークブレイブの剣閃が火花を散らし、セレスティアの光矢が空を裂く。その中を、ΩNovaはわずかな隙を突いて切り込んだ。
祐也は拳を握りしめた。
「……レン!」
アイアンソードの爆音と共に放つ炎が、Ωnovaに直撃し炎と雷が交錯する中、ΩNovaの瞳が一瞬だけ揺れた。観客には見えない、小さな少女の影がバーチャル空間を駆け抜けていったのだ。
レンはその存在を追うように目を細めた。
「……なんだ、今のは」
会場は歓声で揺れ、レンのモニターの数値は限界を振り切ろうとしていた。Ωnova陣営は、タケルのアイアンソードを取り囲み、挟み撃ちにした。セレスティアとアークブレイブが崩しに入る。
コクーン内から試合の指示。
この試合は、”民間を勝たせること”が決まっていた。
「セレスティア、アークブレイブ、そろそろ手を抜け」
このタイミングを待っていた。
三人は合図をする。
コクーン内でナノシートを装着して、アバターを自動操縦にした。
「ナノマシーンからの信号を受け取ったわ。コクーンを開けます。今、三人ともコクーンから出た」
紫音が確認した。
「よし!誰もいない!監視員はトイレだ」
「走れ!走れ!!」
千斗が叫ぶ。
「三人の姿がみえたぞ!もう少しだ!」
サイレンががけたたましくなり始める。
「……急げ!非常ゲートが閉まるぞ!」
鉄の扉が高速で閉まろうとしていた。
「ジン!だめだ!間に合わない。バックを受け取れ!」
扉が落ちる寸前、祐也がバッグを投げた。
隼人のノートとブレスレット。ジンはその重みを、必死に腕に抱え込む。
———
「選手は確保しました。怪我はなし。現在、別室で休ませています」
「侵入者は?」
「正確な人数は不明。車でゲートを突破しました。追跡ドローンは妨害電波で機能停止。現在、陸路で追っています」
「日本橋四丁目で事故発生。逃走車が激突したとの通報。だが車は空でした」
「無人……?」
「はい。登録も抹消されており、所有者不明です」
東雲大佐が低く命じる。
「野次馬は追い払え。事故として処理しろ。……真壁主任、侵入者は必ずいる。捉えろ」
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