第8話 発端 その八

ダン先生の状態を見ながら続きを話そうとトーブル隊長が考えていると、再度凄まじい爆発音がシェルター全体に響き渡る。

これに避難している住民達はほんの少しだけ落ち着いていた状態から、また激しいパニック状態になっていった。


「きゃあああああああああ⁉」


「うわーん! お父さーーん!!」


「まだ、まだ死にたくないよーー!!」


こうして住民達がパニックになる中、トーブル隊長はダン先生との会話を取り止めにすると、部下と話して現在自分達がどのような状況になっているのかを、出来る範囲で理解しようとし始める。


「……トーブル隊長、今の爆発音は、先ほどの物よりもちかくで聞こえた気がしたのですが……」


「気がした、ではなく、実際に近くなっているんだろうな……」


「……隊長、という事は……」


「……最初のバンカーバスターによる攻撃よりも、深い所まで攻撃出来ている、という事だろうな……」


「……そ、それでは、このまま撃たれ続けたら……」


「……シェルターまで到達するだろう。そしてそうなれば……」


「……あ、あの、隊長、質問が、あるのですが……」


「……なんだ?」


「このシェルターって、バンカーバスターでの攻撃に、耐えられるんですか……?」


「……無理だろう。そもそもバンカーバスターはここのようなシェルターを破壊する為に開発された兵器だ。今撃ち込まれているバンカーバスターが直撃する事になれば、おそらく簡単に破壊されてしまうだろうな……」


「そんな……それでは、急いでこのシェルターから逃げ出した方が良いのでは……?」


「……おそらくだが、このシェルターから逃げ出す事は不可能だろうな……」


「なっ⁉ どうしてですか、隊長⁉」


「バンカーバスターは基本的に空中から地上に落とし、地下の目標を攻撃する兵器だ。敵の部隊は空を飛んでいる事だろう。つまり我々は空から見張られている、という事だ。シェルターを脱出して地上に出た瞬間、敵部隊の対地爆撃に晒される事になるだろう」


「……う……」


「そのような状況で、どれだけの住民が無事に生きて脱出出来ると思う?」


「う、うう……ですが隊長、このままでは……」


「……このままバンカーバスターを撃ち込まれ続けて生き埋めにされるか、シェルターから脱出した所を狙い撃ちにされて殺されるか、二つに一つだろうな……」


「そんな……」


「……このシェルターに逃げ込んだ時点で、我々の運命は決まっていたのかもしれないな……」


「隊長……そんな……」


トーブル隊長と部下の話し合いは、自分達が絶望しかない状況に追い込まれてしまった事を深く確認させる物になってしまった。

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