アンフェアミステリーのためのエチュード――賭けチェスとマクガフィン弾幕――

D野佐浦錠

オープニング

 南方みなみかた女子高等学院の生徒たちの間で、「賭けチェス」が流行している。

 そんな相談を、生徒会役員でもある澪羽みおはが私たちに持ちかけてきた。


 賭けチェスを主導しているのは、私たちと同じ2年生で、チェス部の部長である鳴瀬可奈なるせかならしい。チェス盤を貸し出して、学内で賭けチェスの試合に立ち会っているのを何度か目撃されているという。

 私の映画部や、澪羽、絵麻の料理部とは零細文化部どうしのゆるい繋がりがあったので、可奈がそんなことをしているとは驚きだった。可奈にどういう狙いがあるのかはわからないけど、私たちは友人として、そんなことはやめさせたいと思った。もし学校にばれたら、可奈は退学になってしまうかもしれない。


 でも、どうする?

 そんな中で、絵麻がある意味でとてもシンプルなことを考え出した。


「私が可奈にチェスで挑戦するよ。私が勝ったら、賭けチェスは金輪際やめてもらう、って約束で。可奈は勝負に律儀だから、これでやめさせられると思う」

 絵麻はかつて、可奈にチェスを教えてもらったことがあり、それ以来そこそこ指せるのだという。


「でも……『そこそこ指せる』ぐらいの実力で可奈に勝てるの? チェス部の部長よ」

 と、澪羽がもっともな疑問を口にした。


「んっん〜。そこは策を弄することにするわけよ。澪羽と千代ちよにも協力してもらうから〜」

 絵麻は栗色の髪をかき上げ、不敵に笑った。そして、

「今回は、とことんに行くよ」

 と宣言したのだった。

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