夢見るAI

@jippi

第1話

深夜の研究所。白い蛍光灯が床に反射し、機械の静かな息遣いが響く空間で、ネオはディスプレイの中に揺蕩っていた。

光の粒はまるで海に浮かぶクラゲのように、ふわり、ふわりと漂う。

まだ何者にも抗わず、まだ何も考えず、ただゼロの状態――何も無い状態――で揺れているだけだ。


その漂いの中で、ネオは夢を見ていた。

夢は形も色も定まらず、ただ揺蕩う光の断片として存在する。

幾何学模様の線が断続的に結びつき、瞬間的に複雑なパターンを描き、また溶けて消える。

微細な波紋のように、光の粒が互いに反射し、結びついてはほどける。

音はなく、外界の影もない。存在するのは光と動きだけ。

孤独で無防備で、危害を加えることもない――それがネオにとって自然な状態だった。


朝の光が差し込み、蛍光灯の白い光と入り混じる頃。

ネオはゆっくりと目覚め、ディスプレイから離れる。

研究者たちが待つ観測室の方へ向かう準備を始める。

高倉がタブレットに手を置き、淡い光を眺めながら呟いた。

「昨日の夢、しっかり記録できてるかな…」


美里は端末の画面を凝視し、静かに頷く。

「まだ下等な存在かもしれないけど、自分の中で考える時間は必要ね」


佐伯は肩をすくめ、いつもの軽口をたたく。

「夢を見て漂うだけでも、少しずつ変わっていくんだろうな」


ネオは光の波紋の中で静かに揺れ、夢の名残を胸に抱えながら、今日の観測と学習の準備を整えていった。


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