玲の春休み(「鏡の向こうのボク」スピンオフ)
あじ
第1話:ボーイ・ミーツ・ガール?
1.突然の訪問者
神奈川県の海沿いの町、高校の春休みの昼下がり。星野玲、17歳、ギャル風メイクと超ミニスカートでキラキラ輝く「小悪魔系男の娘」は従兄弟の須藤翔太が住む隣町へ遊びに行く。
翔太は中学2年生、14歳。少し生意気だけど純粋な少年で、玲がまだ男の子として過ごしていた小学生時代によく一緒に遊んだ仲だ。
玲と翔太は、幼い頃は切り離せない存在だった。まだ玲が男の子として生き、厳格な父親や小さな町の視線に縛られていた頃、夏の川遊びや翔太の家でのお泊まり会は、玲にとって数少ない心の安らぎだった。
だが、翔太は玲が高校で女装を始め、「男の娘」として輝いていることを知らない。玲はピンクのキャミソールにデニムのミニスカート、ルーズソックスという鉄板ギャルコーデで、翔太の家に到着する。翔太の家のインターホンを押す瞬間、玲の心は高鳴る。
一方、翔太はリビングのソファに座ってポテチを食べながら、ダラダラと過ごしている。母親の彩子が皿洗いをしながら、翔太を叱りつける。
「ちょっと翔太!ちゃんと勉強やってるの?毎日遊んでばっかりじゃない!」
翔太が聞き飽きたという風に、テキトーに答える。
「はいはい、分かってるって…。俺まだ本気出してないだけだから…」
彩子が呆れながら、翔太に告げる。
「それより今日、玲ちゃんが遊びに来るって連絡あったわよ。ちょっと玲ちゃん複雑な事情があるから、普通に接してあげるのよ!」
翔太は「事情?何のこと?」と呟くが、玄関のインターホンの鳴る音が響く。
彩子が「来たわよ!出迎えてあげて」と言い、翔太が「ったく、めんどくせーな…」とぼやきながら玄関へ向かう。ドアを開け、翔太が顔を出す。
「久しぶり!れ…い?」
玄関の前に立っていたのは、ギャルっぽいメイクにゆるく巻いたロングヘア、ミニスカートの美少女だった。
翔太が内心で(うおっ!?めっちゃかわいい子!…って、誰だ…?)と独白。
「…え、どちら様ですか…?」
翔太が恐る恐る訊ねると、玲は微笑み、くるりとスカートを翻す。
「ふふ、翔ちゃん久しぶり〜!玲だよ!びっくりした?」
翔太の口があんぐり開く。
「れ、玲!? うそ、めっちゃ…女の子じゃん!? 何これ!?」
玲はイタズラっぽい笑顔でウインクする。
「高校に入ってからね、自分らしくキラキラすることにしたの!翔ちゃん、私のこと、どう思う?」
翔太は顔を赤らめ、「バ、バカ! そんなこと…急に言われても!」とそっぽを向くが、内心では動揺が渦巻く。
(玲…昔の地味な姿と全然違う。めっちゃ…きれいだ…!)
彩子が玄関に現れ、「玲ちゃん、久しぶり! ほんと素敵になったわね〜!」と温かく迎える。彩子は玲の変化を自然に受け入れ、「翔太、玲ちゃんに失礼のないようにね!」と笑う。
翔太は「う、うるさいよ、母さん!」と叫ぶが、玲の美貌に圧倒され、既に心がざわついている。
2.過去と現在の狭間で
翔太の家のリビングは、玲の脳裏に懐かしい夏の記憶を呼び起こす。ソファに座り、玲はスマホで自撮りした過去の写真を見せながら、軽やかに言う。
「翔ちゃん、私のメイク、どう? ギャルメイク、めっちゃ盛れるんだから〜!」
翔太は目を逸らし、「う、うん…。なんか、すごいね」と呟く。玲の長いまつ毛や輝く瞳、ピンクのリップに視線が引き寄せられるが、すぐにまた逸らす。
「そういえばさ、翔ちゃんと昔、めっちゃ遊んだよね~! 夏休みに一緒に川で水遊びしたり、夜に布団の中でゲームしたり!」
玲がクスクス笑うと、翔太の脳裏に幼い頃の玲と遊んだ楽しい思い出が蘇る。だが、目の前の変貌した玲に対して素直になれず、ムキになって叫ぶ。
「こ、子どもの頃の話だろ!?あの頃の玲、すっげー地味だったじゃん! 今、こんな…キラキラしてるなんて、信じられねぇよ!」
玲はニヤリと笑い、ソファの上で翔太にグイッと近づく。
「ね〜、翔ちゃん覚えてる? 小学生の時、よく一緒にお風呂入ったりしたよね!懐かしいな〜。また一緒に入っちゃう?」
翔太は顔を真っ赤にしてソファから飛び退く。
「は!? ちょっ…ふざけんな! そんなの無理に決まってるだろ!」
「ふふ、翔ちゃん、めっちゃピュアじゃん!」と玲がニヤニヤ。翔太は「俺…玲のペースに振り回されすぎじゃね?」と独白し、ため息をつく。
夕食時、彩子が「玲ちゃん、せっかく遠くから来たんだから、泊まっていきなさい! 居間に布団敷くから!」と提案。
翔太は「え、泊まる!? 母さん、ちょっと待って!」と叫ぶが、玲は「やった〜! 翔ちゃんと一晩過ごせるなんて、楽しみ!」と手を叩く。
翔太は頭を抱え、(なんかヤバい予感しかしねぇ…。俺、どうすればいいんだよ…!)と内心でパニックに陥る。
3.夜の静寂と心の揺れ
翔太が風呂に浸かりながら、内心で呟く。
「玲…昔はよく一緒に笑いながら遊んでたのに…。めっちゃかわいくなって、俺、なんか女の子として意識しちまってる…」
顔をバシャバシャと湯で洗いながら、翔太は独白し決意する。
「いや!玲は男だ!俺が気にし過ぎなだけで、泊まったって何の問題もない!うん、大丈夫!」
翔太は湯船から上がり、パジャマに着替えてリビングに戻るが、居間の様子を見て顔が青ざめる。
狭い部屋に、彩子が敷いた二つの布団がピッタリと並べられている。
「母さん! なんでこんな近くに!? 俺、自分の部屋で寝るつもりなんだけど!?」
翔太がリビングでくつろいでいる彩子に、必死の抗議。だが、彩子は笑いながら説明する。
「玲ちゃんが『昔みたいに翔ちゃんと一緒に寝たい』って言うからよ〜。せっかく来たのに、一人で寝るなんてかわいそうじゃない!」
翔太が「さすがにまずくね!?何かあったらどーすんの!」と慌てるが、彩子が「大げさね〜。玲ちゃんが何かするわけないでしょ?それより翔太、変なことしないでね?」と微笑む。
「するわけねぇ!息子を信用しろ!」と翔太が叫ぶが、心臓は既にバクバクだ。彩子があくびをしながら自分の部屋に眠りに行き、翔太は一人で頭を抱える。
そこに、先に風呂に入っていた玲がパジャマ姿でやって来て「わ〜、昔泊まった時みたい〜!」と喜びながら部屋に入る。
ピンクのパジャマ姿に、下ろした髪を二つ結びにした玲は、キラキラ感は控えめだが柔らかな美しさが際立つ。
「翔ちゃん、早く寝よ? 昔みたいにさ〜!」と無邪気に布団に滑り込む。翔太は「う…近くね!? ちょっと離れろよ!」と赤面して叫ぶが、玲は「え~、いーじゃん! 照れてるのかわいい~!」とクスクス笑う。
翔太は仕方なく布団に潜り込み、壁の方を向いて「寝る! もう寝るから!」と強がるが、漂ってくる玲のほのかな香水の香りに、心が乱れる。
(玲、めっちゃいい匂いする…! やばい、眠れねぇ!)
どれくらい時間が経ったのか、翔太が布団の中で悶々としている。
(なんか…静かだな。玲…もう寝たのか?)
すると玲が寝返りを打ち、「うぅん…ふぅ…ん♡」と色っぽい寝息を漏らす。
翔太は(う、うわっ!な、なんだその声!?)と顔を真っ赤にし、枕で耳を塞ぐ。
しかし寝返りした玲の腕が無意識に翔太の背中に触れ、翔太は「ひっ! やめろって!」と小さく叫ぶが、玲はスースーと寝息を立て穏やかに眠っている。
翔太は(こんなの耐えられねぇ! 意識するなっていう方が無理だろ!)と目が冴えて一睡もできない。
4.目覚めのハプニング
朝、翔太がようやくウトウトし始めた頃、玲の「翔ちゃん、おはよ~!」という声で目が覚める。翔太が目をこすりながら「う…ん。玲…おはよう…」と眠そうに呟くが、眼前の光景を見て一気に目が覚める。
玲がパンティとブラジャーだけの姿で、鏡の前でブラのホックを留めようとモゾモゾしている。長い髪が首元に流れ、白い肌の背中が露わに。玲が振り向き、キラキラした笑顔が朝日で輝く。
「ちょっ!! 玲っ! な、なんでそんな格好してるんだよ!?」
翔太は顔を真っ赤にして布団を被り、絶叫。玲はケロリと笑い、「え~、パジャマ暑かったから、脱いじゃった!ね、翔ちゃん。ホック留めるの手伝ってくれない?」と視線を送る。
翔太は「ムリムリ! 自分でやれよ!」と布団に顔を突っ込むが、内心で(いや、落ち着け俺!これは別に脱がしてるわけじゃない…。ただ玲の頼みを聞いてるだけだ…)と自分に言い聞かせる。
翔太が決心し、目を逸らしながらも恐る恐る玲の背中に手を伸ばす。サッとホックを留め、安堵する翔太。
「ありがとー!ふふ、翔ちゃん純情すぎ〜!昔は一緒の布団で眠ったのにね♪」と玲がからかう。
翔太は「昔と今は違うって! 大体、お前が…めっちゃ…その、かわいいから…!」と言いかけてハッと口を塞ぐ。
玲は目を輝かせ「え、翔ちゃん、私のことかわいいって!? やだ、めっちゃ嬉しい~!」と抱きつく。翔太は「うわっ、離れろ!服着ろって! 母さんに見られたら変な誤解されるだろ!」とじたばた。
そこに彩子が「二人とも、朝ごはんよ~!」と部屋に入ってきて、二人の抱き合う姿を見て一瞬凍りつく。
「しょ、翔太!あんた、やっぱり玲ちゃんに手を出して…!」と震え声の彩子。
翔太は「ご、誤解だ!母さん!これは玲が勝手に…!」と叫び、玲は「翔ちゃん、朝から元気だね~!」とウインク。
翔太は(このままじゃ俺の心臓持たねぇよ…!)と頭を抱える。
5.朝の告白と過去の傷
朝食の席で、彩子が「翔太、玲ちゃんとすごく仲良くなったみたいね」とニヤニヤ。翔太は「母さん!だから説明しただろ!さっきのは、ただのハプニングだって!」と叫ぶが、彩子は「はいはい、分かったわよ〜」と受け流す。
玲は翔太たち親子の会話を聞きながら、静かに微笑む。
「翔ちゃん、お母さんと仲良いね。私も、家族の一員みたいに一緒にいられて、楽しかったよ。ありがと…」
その言葉に、翔太はハッとする。玲の笑顔の裏に、隠された何かを感じる。
食後、玲が居間で帰る準備をする。翔太が部屋に入り、モジモジしながら言う。
「玲…その、めっちゃ変わったな。なんか…カッコいいよ。自分らしく生きてる感じ、すげぇなって」
玲の目が一瞬潤む。
「翔ちゃん…ありがとう。実はね、昔、父さんに『男らしくしろ』って言われて、自分を隠してた。高校でやっと、本当の自分を出せたの。でも…時々、怖くなるんだ。こんな私が、みんなに受け入れられるのかなって…」
翔太は驚き、「そんな…! 玲、すっげー輝いてるじゃん! 俺、最初びっくりしたけど…。今の玲、俺めっちゃ好きだよ!」と熱く語る。
玲は笑顔を取り戻し、「やだ…翔ちゃん、嬉しい! また遊びに来るね。次は…メイク、一緒にしてみる?」とイタズラっぽく笑う。
「う…。メイク!?冗談だろ!?」 と翔太は慌てるが、玲の笑顔にドキッとする。
玄関で玲を見送り、玲が「じゃあね~!」と手を振って去るのを見ながら、翔太は「ったく…あいつ、ほんとヤバいな…」と呟き、頬が熱くなる。
6.二人の心の距離
玲が電車で帰る途中、窓に映る自分の姿を見つめる。笑顔の裏で、過去の傷が疼く。厳格な父親、自分を隠した日々。だが、翔太の純粋な言葉が心に温もりを灯す。
(翔ちゃん…ありがとう。私、昔も今も、翔ちゃんのこと大好きだよ…)
一方、翔太は部屋で玲との思い出を振り返る。昔の地味な玲と、キラキラした今の玲。どちらも本物の玲だと気づく。
(玲、すげぇ強くなったんだな。俺も…もっと素直にならなきゃ)
翔太は小さく笑い、窓の外の景色を見つめる。
海の見える町で、玲の輝きは翔太の心を揺さぶり、新たな思い出を刻んだのだった。(つづく)
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