第4話
落ち着かない。
店内に俺以外の客はいないらしい。とても静かだ。
まあ、仕切りが高いから、人がいたとしても黙ってりゃわかりにくいだろうが。
半個室のようにレンガのようなデザインの壁と季節感がごっちゃな植物で仕切られている。俺は四人程度座れるだろう奥のボックス席に案内された。
カウンター席には誰もいない。ボックス席が並ぶ間の道を通ってきたはずだが空で、当然ながら誰とも顔を合わせなかった。店員も彼女以外を見かけない。
「アイスティーでいいですか? セットメニューはアイスコーヒーも選べるんですけど、紅茶のほうがおすすめなんです」
席に座るのを確認して、店員の若い女性は注文をとってくれる。
「じゃあ、おすすめで」
「アレルギーはないですかね?」
「はい」
「よかった。では、スイーツセット、お持ちしますね」
彼女は営業スマイルを残して店の奥に戻ってしまう。
こんな店、あったんだな……。
地元の商店街だというのに知らないこともあるらしい。子どもの頃は活気があった商店街も、今やシャッターが閉まっている場所のほうが多い。小学校高学年になったときに閉まった店舗に次の店が入らなかったあたりから、どんどん寂しくなっていった。
若い人を町に呼んでギャラリースペースにしてるところも出てきたけど、こんな広いところ、どこかにあったか?
俺は天井を見る。半個室に客席は仕切られているが、天井は仕切られていないから見渡せる。全ての席が埋まったら五十人は入る気がする。詰めればもっと入るのではなかろうか。
広いよな……それで閑散としてるとあっちゃ、ここも長くはねえな。
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