第3話

「店長ぉ、さっきの音の原因、わかりましたか?」


 店の奥から若い女性の声がした。

 店長って呼んだってことは、このエプロン男性が店長なのか。

 室内だというのに色とりどりの花があふれている。さっき立ち寄ったフラワーショップよりも花の種類が多いようだ。その理由が、季節外の花も店内を飾っているからなのだと察した。

 ホンモノ? いや、流石にそれはねえか。


「うん。犯人を捕まえてきたところだよ」

「看板、道にはみ出ていたから蹴られてしまったんですねえ」

「違う、蹴り飛ばした小石がうっかり当たっちまったんだ」


 俺が弁解すると、店長と呼ばれていたエプロン男性が肩を震わせて笑い出す。


「君が倒したことには変わらないよね」

「それは……そのとおりです」


 店の奥から女性が出てきた。愛らしい女性だ。彼女は俺を見て首を傾げた。


「で、犯人をどうするんですか?」

「弁償がてら、スイーツを食べてもらおうと思って。向日葵、好きらしいから」

「別に好きだとは言ってねえ」

「とりあえず、席に案内して。今月のおすすめスイーツセットを頼むよ」

「わかりました。では、どうぞこちらへ」


 俺は言葉を遮られて、強制的に席に案内される。店長は大きく伸びをしながら外に出て行った。

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