第9話 炎上にまっしぐら

「はい、カツアゲ動画頂き」

「恵んでくれと言っただけよ。それが何?」

「きゃはは、相変わらず馬鹿。これが見えないのきゃは」

「ここに入れた時点で、うちらがハンターなのは分かりそうなものでしょ」


 拳銃なんかぶら下げて、そんなの意味ないのに。

 モンスターとやり合う勇者パーティが拳銃ごときで、どうにかなるわけないでしょ。

 匠師たくみしさん特製の防御魔道具を着けてるのに。


甜瓜めろん、どうする?」

「盗賊に容赦なしですわ。空羅々くららの方針が不殺なので、殺しまでは致しませんことよ。感謝なさい」


 そう言って、甜瓜めろんは精神魔法の魔道具を起動した。

 治安が悪くなったと聞いて、準備してある。

 目がとろんとする虐めっ子達。


「じゃあ、過去に私にしたことを喋ってもらいましょうか」


 虐めっ子達は覚えていることは全て話した。


「証文も取りませんといけませんわね。追い込むなら、徹底的ですわよ」

「僕が思うに、あれに訊いてみたらどう」


 マイクと映像を止めて、カラーテスト画面にするように操作。

 しばらくお待ちくださいの字幕付き。

 必要だと思って準備しておいた。


「【女神質問検索】、悪人の女の子達に精神魔法を掛けました。どうしたら良いですか」


――――――――――――――――――――――――

天使アイエルがお答えします。

 示談書の作成をお薦めします。

 もちろんぼったくってしまいなさい。

 それと、スマホのロックを解除させて、中身を見ると良いですよ。

 こういう奴は、虐め画像とか保管していることが多いですから。

 家まで行って、パソコンの中身も見せてもらいなさい。

 もう、やっちゃていいですよ

――――――――――――――――――――――――


 あれっ、虐めっ子達がトカゲに噛みつかれている。

 スタンピードの時の毒持ちの確かあれは?

 そう、そう、ポイズンリザード。


れい、助けてあげて」

「ええっ、嫌だけど」

「ちょっと楽しくなるわよ」


 どうするか打ち合わせ。

 ポイズンリザードらの首を無造作につかむれい

 魂契約を掛けて、ポイズンリザードを収納。

 収納スキルで服を剥ぎ取り、虐めっ子達を全裸にして、局部だけはタオルで隠した。


 ゴブリンを出した。


 配信映像を再開。


✈:大空葵 全裸じゃないか 分かってるね 良いぞ

🙂:ぴーす桶丸 犯罪だ。証拠確保。


「彼女達はポイズンリザードに噛みつかれて毒を食らいました。これからゴブリンにぐえぐえぎゅんしてもらいます。さぁ、みなさんもご一緒に。元気になーれ、ぐえぐえぎゅん」


「ぐえぐえぎゅん」


 ゴブリンが両手でハートマークを作り回復術。


✈:大空葵 ぐえぐえぎゅん

✌:カツとじ ぐえぐえぎゅん

☘:幸せの運送屋 虐めをしてた告白を聞いたらな。この女達に同情はできないな。

🙂:ぴーす桶丸 モンスターを操る技は催眠術だと思うな。だから毒くらったのも全部ヤラセ。

⌚:プロテインゲーマー ひでえな 催眠術で避けられなくして 操っているモンスターにやらせる

🙂:ぴーす桶丸 恐らくそんな感じ

✈:大空葵 ぐえぐえぎゅん 風よ吹け タオルめくれろ

⌚:プロテインゲーマー 紫の毒の痕は塗料だろうな 消すのは手品の応用か

🙂:ぴーす桶丸 手品師で催眠術を使う奴はいる

☃:どさん子どすこい 通報しますた

🙂:ぴーす桶丸 現行犯だろ。逮捕だな。


「今日は短いけど、これで終り。じゃね。応援ありがとう。チャンネル登録をお願いね」

「感謝ですわ」

「僕、次も頑張るよ。またねー! バイバイ!」


✈:大空葵 元気になーた ぐえぐえぎゅん

🙂:ぴーす桶丸 警察、早よ。何やってんだ。

⌚:プロテインゲーマー 証拠映像が残ってるからアウトだろ


 さて、色々と回収しましょ。

 虐めっ子に服を着せて、家まで案内させる。

 あれを訊いておかないと。


「何で待ち伏せが出来たの? 場所が分かったのは何で?」

「SNSの書き込みに残ったIPアドレスが判るプログラムがあって、あんたの家のネットIPアドレスが固定だから。SNSで芋づる」


 そう言えばトカゲダンジョンで午後5時から、ライブ配信の予約したってSNSに書き込んだ。

 アカウントを変えても、SNSがばれると思ったら、そんな仕掛けかぁ。

 今のアカウントを作り変えるのは嫌だから、示談書に接近禁止を入れとこう。

 ついでに今日のぐえぐえぎゅん事件について、一切の異議は唱えませんというのもね。


「【女神質問検索】、示談書の作成はどうしたらいいですか?」


――――――――――――――――――――――――

天使アイエルがお答えします。

 賢狼けんろうに頼むといいでしょう。

 図書館で物理学、哲学、法律の知識を瞬間記憶魔法で詰め込んでますから。

――――――――――――――――――――――――


 いつも朝早く出掛けて帰ってこないと思ったら、そんなことしてたのね。

 頼むには対価が必要。

 お金しかないか。


 家を回り、虐め動画ファイルを残らずコピー。

 印鑑とか、示談書に必要な物を用意させた。

 預金通帳を見せてもらったけど、お金なんてほとんどない。

 示談金を取れないよ。


「【女神質問検索】、示談金を取れません」


――――――――――――――――――――――――

天使アイエルがお答えします。

 虐めっ子にパンツ売らせましょう。

 店は○○ビル、○○ビル、○○ビル、○○ビル、○○ビル、○○ビル、○○ビル、○○ビル、○○ビル、○○ビル、にあります。

 もっと店が知りたいなら、また質問して下さい。

――――――――――――――――――――――――


 ちょっと、そんなことして良いのかな。

 でも、お金がぁ。

 そう、ないのよね。

 仕方ないかぁ。


 せめてもの情けに顔は幻影魔法の魔道具で変えてあげる。

 店の人に顔を覚えられても問題ないでしょ。


 パンツ売らせて、金を貰う。

 ああいう店って、履いてるパンツを確認して、顔の写真を撮って、試着室みたいな場所で脱ぐのね。

 そういう仕組みだったんだぁ。


 顔を変えといてよかったね。

 さすがに死ぬほど恥ずかしい思いはさせられない。

 店を梯子して、彼女らの着替えのパンツ全てを金に換えた。

 図書館に行き賢狼けんろうさんを探す。


「あの、示談書を書いてほしいんですけど。1万円でどうですか?」

「よかろう。じゃが、資格のない書類作成業務は違法ぞ。かかか、魔法があるから、ばれんがな。わしは悪い大人じゃからして」


 示談書は簡単にできた。

 帰ってから、ルミナスチャンネルをチェックすると、炎上してた。

 でも、再生数も登録者数も爆上がり。

 示談書を写真に撮って、問題の箇所を塗りつぶし、SNSにアップ。

 ぐえぐえぎゅん事件について、一切の異議は唱えませんの文言があるよと付け加えた。


 もう、炎上しまくり。

 ええ、私が悪いの。

 ちょっとやり過ぎたとは思ったけど、彼女らがやってきたことを思えば、あれぐらいはどうってことない。


 賠償金の一部は協会を通じて、トカゲスタンピードのぐえぐえぎゅん被害者に寄付しますとも書いておいた。

 腐っても聖女だからね。


 でも、さらに炎上。

 ええ、何でよー!

 寄付するって書いたのにー!

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