第4話 配信デビュー

「ルミナスセインツ・チャンネル始まるよ! 私達、今日がデビューです。空羅々くららでーす」

「汚らしいモンスターは、ゴッデスクラス浄化ですわ。わたくし甜瓜めろんと申します」

「セイントブレスで丸焼きしちゃうぞ。僕はれい


 ゴブリンダンジョンでの初のライブ配信が始まった。

 アイドルグループのルミナス・セインツのメンバーは私、本名が善地ぜんち想子そうこ、で、芸名が記完きかん空羅々くららの私15歳と。

 異世界で聖女の本名がメローネで、芸名が甜瓜めろん17歳と。

 異世界で神竜の本名がレーベで芸名がれい16歳。

 この3人。


 私は恥ずかしいけどミニスカートの衣装。

 甜瓜めろんは長いスカート丈の中世貴族ドレス風。

 れいは軍服風の男装で、胸はそれなりにあるから、男性には見られないと思う。

 服に使われてる生地の一部の柄は統一してあるから、纏まり感はある。


 アイドルグループが何故にダンジョンで配信って疑問はあると思う。

 正統派のアイドルが良かったけど、歌も踊りも地下アイドルに劣る。

 若いから、歌と踊りのテクニック向上はこれからの課題。

 とにかく目立たないことには、アイドルとしてやっていけない。


 普通のアイドルができないこととして、ダンジョンでのモンスター討伐を選んだの。

 他にも理由はあって、ダンジョンは邪神の前線基地なのよ。


 成り行きでなったのですけど、私は地球の聖女。

 邪神の企みを阻止しないといけない。


 聖女としての力の源は愛。

 これは、女神質問検索の情報。

 アイドルはうってつけ。


 さあ、お仕事。

 ダンジョンを歩きながら、ゴーグル型モニターに映し出されるコメントを読む。


⌚:プロテインゲーマー この配信アイドルグループは糞だな 顔が見れたものじゃない



 はぁ……10分近く歩いているのに、アンチ1人しかコメントがない。

 視聴者は3人。

 登録者数はゼロ。

 自信が人生の虚しさで、海を見に行っちゃった感じ。


「ありがとう」

「皆さんが仰るには、わたくしは可愛いのですわ。わたくしに信仰を奉げなさいませ」

「僕、頑張るからね」


 ダンジョンで殺すと、モンスターの恨みが溜まる。

 殺されても人間の恨みが溜まる。

 結局どちらでも邪神が得をする。

 でも、討伐しないとモンスターがダンジョンからあふれる。

 これも、女神質問検索の情報。


 迷路みたいなダンジョンの角を曲がると、10メートル先にゴブリンの集団が見えた。

 ゴブリンは10センチぐらいの太さの木の棍棒を持っている。

 私の武器は矢じりにスタン機能が付いているボウガン。

 甜瓜めろんの武器はスタン機能が付いているメイス。

 れいの武器はスタン機能が付いている盾。


「愛に目覚めなさい」

「ゴッデスクラス浄化ですわ」

「セイントドラゴンクロー」


 甜瓜めろんれいはゴブリンに近づき、次々に麻痺させて行く。

 私は援護射撃。


⌚:プロテインゲーマー 配信アイドルなら歌とダンスだろ なんでモンスター討伐?

⌚:プロテインゲーマー ああ、音痴なんだな


 音痴ではないけど、素人の域をでないのは確か。

 このぐらいの悪口なら腹は立たない。

 ほとんど、事実だし。


 全部麻痺させたので、魂契約を施す

 魂契約は魔法契約の上位互換。

 邪神でも解除はできないと思う。


⌚:プロテインゲーマー おいその行為の意味はなんだ?


「【無制約収納】、彼らは愛の楽園に旅立ちました」


 ゴブリン達を生きたままスキルで収納。

 無制約収納は私のチートとも言えるスキル。

 生きてるモンスターでも収納可能。

 時間を止めることも自由自在。

 無制約の名前は伊達じゃない。


 異世界では大都市を丸ごと収納したことさえある。

 弱点としては大きさは問題ないけど、1部分が手で触れる位置じゃないと収納できない。

 相手の攻撃が先に届くとお陀仏よ。

 戦いに使うにはリスクがつきまとう。


 モンスターを殺さないのは邪神に得をさせないため。

 討伐部位や素材を採らないとお財布は温かくはならないのだけど、宝箱から出るアイテムだけで十分。


⌚:プロテインゲーマー こいつら詐欺宗教その物 そういうドブの臭いがする

⌚:プロテインゲーマー どうやってるか知らないがCGだろ 銃火器を持たないハンターなんか見たことない

⌚:プロテインゲーマー それと防御ミラクル製品もないのは何でだ

⌚:プロテインゲーマー モンスターが消えるわけないだろ はいCG確定

⌚:プロテインゲーマー 無視するな何か言え!


 アンチ君のCG発言は嬉しい。

 スキルを持ってる日本人なんていないから。

 隠すつもりはないけど、どういう理屈なのか説明するつもりもない。


 スキルの所持に関しては、怪しい人はいるけどね。

 あいつが魔王じゃないかと私達は疑っている。

 ミラクルストーン株式会社の社長、間石ませきみのる

 弟がいるんだけど、甜瓜めろんによると、魂がそっくり全く同じ。

 甜瓜めろんは魂を見ることができる。


 甜瓜めろんはぞっとしたと言ってた。

 しかも魂の色が灰色。

 全く揺らぎのない灰色。

 魂が揺らがないってことは、感情がないってことよ。

 そんなの人間じゃないからね。

 おそらく、覚醒してない魔王か魔族だと思われるって、異世界で賢者だった賢狼けんろうさんの推測。


 防御ミラクル製品は間石ませきの会社の開発製品。

 危なくて使えない。


 このダンジョンは大体終わったかな。

 じつはここ、何度も来てる。

 戦いに慣れるのと連携を確認するためによ


🙂:ぴーす桶丸 こんにちは。


「初めまして、ようこそ。空羅々くららでーす」

「歓迎いたしますわ。わたくし甜瓜めろんと申します。お見知りおき下さいませ」

「僕のウロコを1枚あげるよ。僕はれい


⌚:プロテインゲーマー こんな見る価値なしの所に来るなよ

🙂:ぴーす桶丸 お前こそ来るな


「アンチはスルーでお願い」


🙂:ぴーす桶丸 了解。アンチはブロックすれば。


「どんなファンも見捨てないつもり。いつか分かってくれるはずよ」


🙂:ぴーす桶丸 おっ、アンチ消えたか。ブロックの一言は効果抜群だよ。


 次のボスは恐らくラスボス。

 倒すと終りだと思う。

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