二十歳の曖昧さと孤独を、日常の景色に溶かし込んだ透明な詩
- ★★★ Excellent!!!
はじめてのビールの苦さに「まだ大人になれない」とこぼす感覚。二十歳のわたしにもよく分かります。大人と子どもの境界に立っているはずなのに、自分の内側はまだ追いついていない。そんな曖昧さが、この作品全体に静かに流れていました。
月や観覧車、ファミレスのカウンターといった身近な景色が、どれも少し寂しく、でも温かさを残しているのも印象的です。とくに「雪が溶けるみたいに観覧車はまわる」の一節は、時間のやさしい残酷さを表していて心に残りました。
そして、ぬいぐるみの存在。大人になれないわたしと、ぬいぐるみにしか委ねられない心。それは決して幼さではなく、かろうじて自分を守るための拠りどころのように感じました。孤独と安心が同居する、この作品の核のように思います。
透明で、すこし切なく、それでいてどこか日常に根づいている詩。二十歳のわたしだからこそ、深く共感できる言葉たちでした。