第3話  ポリープ・・ではない?

 七月一日、〇〇病院(257床の中規模病院)を受診。

 この時、私は呑気にも、

「お医者様は女医さんが良いなあ〜」

 と、長い待ち時間を待ちながら、そんなことを考えていたわけですよ。

 女性の方だったら分かると思うのですが、診察台に乗った後はまな板に乗った鯉も同然の状態で、女性のシークレットゾーンがガバーッと晒されるわけですよ。本当に、本当に、男性医師じゃなく女性医師が良いなあ。


 クリニックからの紹介で私は〇〇病院の婦人科を受診するのは始めて。診察室は二つあって、左は若い女医さん。右は白髪のおじいちゃん先生。

「ああ! 左! 左! 左がいいな〜!」

 と思っていたところ、

「もちづきさーん、第二診察室にお入りくださいー!」

 ああ、右ですね、おじいちゃん先生決定です。


 おじいちゃん先生は貫禄のある先生であり、クリニックからの紹介状を眺めた後に、

「とりあえず、子宮体部癌は陰性で、頸部癌もうちの検診で陰性だったわけだねえ」

 と、言いました。そう、そう。私は年一回の健康診断をこの〇〇病院で毎年受けているのですよ。

「とにかく一度、見せて貰いましょう」

 診察となると、子宮エコー検査をするわけですが、

「あああ〜」

 画像を眺めていた貫禄ある先生は、

「もちづきさん、とりあえず一度、待合所で待って貰って、今日は子宮鏡検査をしましょうか?お時間大丈夫ですかね?」

 と、言い出したわけですよ。


通常、女性が婦人科受診をして子宮の中まで見るために子宮エコーというものをします。超音波を使って子宮や卵巣の状態を見るんですが、膣内にプローブという細い棒状の器具を挿入して超音波を当てて調べるわけです。


 子宮鏡検査というのは、子宮内を胃カメラのような小型のカメラで細かく診ていく検査になりますね。組織を採取するのなら一段階上の検査ってことになります。

「もちづきさん、すみません、先生、救急患者さんのオペに入ってしまったのでしばらく待って頂く形になるのですけれど・・」

 朝八時半の予約で病院に到着した私は、子宮鏡検査のために他の患者さんの受診が終わるのを待っていたんですけども、先生がオペですか。

「大丈夫です! 待てます! 待てます!」

 先生が検査をしてくれるって言うのならいつまでも待ちます!


 しばらくして先生が戻って来て受診が開始、十一時半に再び、

「もちづきさん、第二診察室にお入りください!」

 子宮鏡検査をするために再び入室。

 この時の先生は、

「もちづきさん、具合が悪かったらすぐに言ってくださいね」

「大変だけど頑張ってね」

「痛かったらすぐに言ってね!」

 と、度々声をかけて来てくれたのですが、とにかく私のポリープ周りがやたらと汚いということで念入りに診てくれたわけです。カメラで確認しながらポリープ周りの汚れを徹底的に除去、検体も採取、汚かった部分をスッキリ綺麗にして頂いたのはカメラを見ている私にも良く分かるほどで、

「うーん、これは、検体の結果を見なくちゃ分からないけど、大山鳴動してネズミ一匹動かずということだったのかなあ・・」

 という先生のお言葉が。私の小さかったポリープちゃんは成長を続けて現在3センチの歪な形に成長。子宮筋腫になっちゃったとも考えられるけれど、

「もちづきさん、これは早急に手術をして取ってしまった方が良いので、今日はこの後、手術前検査を全て行って貰いましょう。七日の月曜に麻酔科医との面談、十一日の金曜日にもう一度受診をして、十三日日曜日に入院、十四日に手術、十六日に退院という形で予約を取ってしまいましょう」

 と、言われたわけです。


「え? 手術?」

 え? もう手術? 内視鏡下でスパッと切ると言うけれど、予定が早くないですか?

「まずは手術が本当に出来るかどうかを確認するため、MRI検査をしてもらいます」

「MRI検査?」

「13時半の予約が取れたので検査を受けて貰った後にね、もう一度お話をさせて頂きますね」

「はい、分かりました」

 看護師さんからは、

「お昼過ぎちゃいますけど大丈夫ですか?」

 と、言われたけれども、

「はい!大丈夫です!」

 人間、こういう時にはこの返事しか出来ないんだな。

 先生がオペに入って〜の時点で、売店で菓子パン買って食べていたから、お昼を越えでも全く問題ないけれど、

「MRI検査、人生で初めてだわ」

 今日、MRI検査までするなんて。かなりきっちりと見てくれる先生なんだなあ〜。


 こうして私は人生初のMRI検査をすることになったんだけど、検査結果を見た先生は、

「うーん・・」

 隣の診察室の声が気になって仕方がないらしい。

 それは何故かと言うのなら、若い女医さんが患者さんの子宮鏡検査をしているらしくって、隣から患者さんの啜り泣く声が聞こえてきているからで、

「先生、すみません、ちょっと手を貸してくれませんか?」

 隣の看護師さんからお声がかかってきたんですよね。

「もちづきさん、ちょっとだけ席外すけど良いかな?」

「良いです!良いです!大丈夫です!」


 子宮頸部から子宮体部(奥の方)の検査をすると激痛が走る場合が多く、私の友人はこれで失神したことがあるという話を聞いてはいたけれど、

「私、これについては、全然大丈夫かも〜」

 本日、子宮鏡検査をした私は激痛というほど痛くなかったけれども、

「もういいです、もういいです、やめてください」

 隣から患者さんの声が。

「どう?これまで撮影は出来たのかな?」

「いやあ〜」

 おじいちゃん先生の質問に、ノートパソコンを動かしていた看護師さんが、

「出来ていませんね」

 と、答えている。


 戻って来た先生は、

「もちづきさん、私は患者さんに対してそこまで負担になるようなやり方はしませんから」

 と、言っていたけれど、この一連の流れで私は思ったわけですよ。『あぶね〜、ここに来た時には女医さんが良いって言っていたけれど、本当の本当に、おじいちゃん先生で良かったー!』ってね。


 婦人科検診は女性のシークレットゾーンをガバーッと開いて見るので、本当の本当に、女医さん求む!と思い続けていたけれど、

「ベテランのお医者様で本当の本当に!良かったわ!」

 と、その後、心の奥底から思うことになるのです。


 MRI検査の結果を見た先生は、

「とにかく早く取らないといけないから、今から術前検査をしちゃいましょう」

 と言って検査の予約を入れてくれたので、その日のうちに血液検査、心電図、レントゲン、肺機能検査までやることになりました。

 こうして朝の八時半に診療のためにやって来た私が全ての検査を終えたのが十五時。この時おじいちゃん先生は多忙だったゆえ、途中から一緒に説明を聞いていた女医さんが内視鏡下で行う手術の説明をしてくれたんだけど、

「肺は綺麗だし! 肝機能は問題ないし! 手術は問題なく出来そうですね!」

 と、言ってくれたんだけれどもね。




     ************************



さてさて、ここからどうなってしまうのか? 次回からは毎日十六時に更新していきたいと思います!

癌の告知を受けた私の状況をコミカルに描いていております。

癌を治療するにあたり、私としてはこうした方が良いのだなという部分をクローズアップして、二人に一人が罹患すると言われている癌について、情報を共有しつつ、楽しんでいただけたら幸いです!

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