クールな俺は君に振り回される
日常さん
第一章 期末テストの赤点回避は厳しい!
プロローグ
4月の春。多くの人が新たな門出を迎える季節が始まった。別れを乗り越え、多くの出会いを迎えるこの季節に・・・変な奴がいた。
高校入学初日から、机に突っ伏してして寝ている男がいた。
入学して数ヶ月ほど経ったならともかく、初日に寝ている奴がいるのだ。
普通なら友人を作ろうと話しかけるかなどの行動をするだろう。それでなくても緊張で寝ることは無いはずだ。
さらに、その男はなんと銀髪であったのだ。そういう体質ならなんとも思わないが、明らかに染めていた。
受験の際に、誰一人として銀髪の男を見ていないからだ。
そんな、変人の話題でクラスは初対面の緊張を忘れ話をしていた。
「な、なぁうちのクラスヤバくないか、、、?」
「ぎ、銀髪!?誰かあの人の知り合いの人いる、、、?」
困惑、拒否感、驚き、そんな感情が複雑にクラスメイトの胸中に渦巻いていた。
その様子に当の本人は気付いていない・・・
はずがなく、内心では喜びでいっぱいだった。
おぉ!みんなが俺を見てやがる!どうだかっこいいだろ?この銀髪!初日で寝てしまうこのクールぶり!みんなの憧れと期待の視線が刺さるぜ!
彼の名前は
彼は重度の中二病だ。銀髪のその髪はもちろん染めたものであり、地毛な訳が無い。この学校の校則はだいぶ緩く生徒をあまり縛るルールがない。そのため彼のような好き勝手は出来るにはできるのだが、、、まあ普通はしない。
常人ならやって金髪、茶髪が関の山だろう。
彼みたいな髪色にする者は少ない。そのため注目が集まるのは仕方ないだろう。
しかし、結城は注目されていても気にしない振りをしていた。
さて、突然だがあなたは心理学用語である同一化や模倣という言葉を耳にしたことはあるだろうか?
簡単に意味を述べると、憧れの人物やキャラの行動、思考、姿を丸ごと自分自身に重ね合わせることを指す。
例えばこんなキャラがいたとしよう。
『やれやれが口癖のクールキャラ』
このキャラに憧れを持ち現実でもやれやれを口癖にしたり、クールな性格になろうとする人を見たことはないだろうか?
それが、同一化だ。
突然この話をした意味が分かっただろうか?
そう、霧島 結城はこの同一化によってこのような残念なことになってしまったのだ。
時は結城が高校に入学する前、、、2月14日のバレンタインデーのことだった。
チョコなんてもちろんもらえるはずがない彼は、家でさみしくスマホを触っていた。
そこでふと友人が言っていたあるサイトを思い出した。
それは、小説投稿サイト『カクヨム』だった。
普段は小説なんて欠片も読まない彼だが、暇をつぶすため(ついでに惨めな現実から目をそらすため)小説を読むことにした。
それが、すべての始まりだった。
最初はファンタジーものを読んでいた。最初の一話だけ読み、面白くなかったら別の小説に移る。それの繰り返しをしていた。
なかなか良い小説に出会えなかった結城は、最後の小説でもう読むのをやめようと考えていた。
そして読んだ最後の小説で結城は衝撃を受けた。
あまりにもその小説が面白かったのだ。そして何よりも、主人公が格好良かった。
クールで無気力だが本気を出したら、、、いや、本気を出さずともその才能だけで圧倒するその姿が、結城の男としての感情が大きく揺さぶられた。
俺もこんなふうになりたい!そう本気で思った。
・・・思ってしまったのだ。
そこからの結城の行動は早かった。欲しかったものを買うために貯めたお小遣いのすべてを使い、髪を切り銀髪に染めた。
高校の制服の新しいワイシャツに、わざわざシワを付けたりヨレヨレにしたりした。
全ては無気力でクールで、天才的な自分を演出するためだ。
だが、金だけではどうあがいても突破できない壁があった。
『才能』だ。
才能がなければクールで無気力なただの凡人になってしまう。
では、どうするか?
結城は考えた。そして至極単純な答えに行き着いた。
頑張って頭を良くして、体も鍛えよう!と、、、
結城は一度やると決めたらやり切る男であった。その日から高校入学まで必死に勉強した。体も鍛え腹筋も割れた。信じられるだろうか?元美術部の男が腹筋割るまで鍛えられたのだ。
そして晴れて結城は天才クール系のキャラを確立した。
周囲の評価を代償にして。
・・・ここまでつらつらと長く書いていたが端的にまとめると、結城はバレンタインデーに中二病を発症したということだ。正直前の文は全部この一言でまとめられる。
夏◯先生がこの文を読んだら全て赤線で消すだろう。
さてそんな哀れな男、霧島 結城は高校でも衝撃的な出会いをする。
これは、そんな彼の物語を面白おかしく時に悲しくまとめた小説だ。
ではでは、彼の物語を安全圏から読んでいるあなた達!
なんの影響もないところで読んでるならせめて霧島 結城を応援しててくれよ?
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