ずっと、隣で笑えるように

@ayaya05

新学期


「お前らもとうとう今日から高校3年生だ。最後の高校生活で、行事や部活に全力で取り組むのは分かるが、特進クラスの名に恥じぬよう、受験生であるということも忘れるな。」


3年間変わらない担任の声。クラスの顔ぶれもほぼ同じ。


窓際の一番後ろ。


出席番号順に座らされたその席は、もはや私の指定席のようになっている。


そこから見える景色は、1年生の頃と比べると少し見晴らしが良くなった。





生徒会長にテニス部の部長。


周りの期待に押しつぶされそうになる日々の中で、この席に座っているときだけは、ほんの少しだけ息がしやすい。


ここからは教室全体を客観的に見渡すことができ、誰の目線も気にならないから。





私は、みんなが思っているほど完璧な人間なんかじゃない。


「岩瀬家の人間は常に一番出ないといけない」病院を経営している両親は決して口には出さないけれど、そういう圧力を子供のころから感じてきた。




決して弱みを見せてはいけない。


誰もが羨む完璧な存在でなくてはいけない。


私はずっと自分にそう言い聞かせてここまで来た。




------------------------------------------------------------------------------------------------




「瑞稀(ミズキ)、何ぼーっとしてんだ。もう始業式終わったぞ。蒼真も杏子ちゃんももう生徒会室に待ってるって。俺らも早く行こう。」


気が付けばいつのまにか担任の話は終わっていて、隣の席から声をかけてきたのは神田飛鳥(カンダ アスカ)。生徒会書記で、弓道部の部長。


飛鳥の姉と私の姉が親友で、飛鳥とは幼稚園の頃からよく一緒に遊んだいわゆる幼馴染と呼ばれる関係だ。


とても頼りになるしっかり者で、私が困ったときには必ず助けてくれる。




「あ、瑞稀。今から生徒会あるんでしょ?部活、来れそう?」


「うん!今日は、新年度が始まって心機一転頑張ろうっていう話をするだけだからすぐ終わる!」


「了解!じゃあここで待ってるね。」


テニス部副部長の七海晴菜(ナナミ ハナ)

ショートカットがよく似合う、太陽みたいに明るい子だ。どんな時でも笑顔を絶やさないその存在に、私は何度も救われてきた。


ちなみに晴菜は飛鳥の彼女でもある。お互いが相手を大切に思っていることが節々で感じられ、理想の美男美女カップルとして学校内でも有名だ。


この二人が出会うきっかけを作ったことを私は密かに自慢に思っている。




------------------------------------------------------------------------------------------------




「ごめんごめん、お待たせ。」


「やっと来たー。なかなか来ないから、待ってる間に水上に入学式の説明しておいた。」


軽口を叩くのは神田蒼真(カンダ ソウマ)。飛鳥の弟で、生徒会の副会長。


2年生でありながら副会長に当選し、私の右腕としての役目を果たしてくれている。


バレー部所属で、いつも元気で明るく、周囲の人を惹きつける魅力を持っている。


ちなみにどうして弟である蒼真が副会長で兄である飛鳥が書記なのかというと、飛鳥曰く「俺は書記以外したくない」かららしい。私が中学3年生で生徒会長になった時も、蒼真が副会長、飛鳥が書記だった。



「瑞稀先輩、お疲れ様です。改めて新学期からもよろしくお願いします。」


丁寧に頭を下げたのは水上杏子(ミズカミ キョウコ)。


会計を務める彼女は2年生とは思えないぐらい大人びた雰囲気を持っている子だが、1つ1つの仕事はとても正確でとても頼りになる。


よく私のことを尊敬していると言ってくれるけれど、本当は私の方こそ彼女に助けられてばかりだ。





生徒会長・岩瀬瑞稀、副会長・神田蒼真、書記・神田飛鳥、会計・水上杏子。この4人で今は生徒会として活動している。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る