第17話

少女は、死人たちとの遭遇のあともまだ震えていた。

胸に木のかけらをしっかり押し当てながら、彼女は目の前の男を見つめた。


「あなたは誰?」— 弱々しい声で尋ねた。


主人公は名を名乗らなかった。

ただ冷たい目を彼女に向け、言った。

「邪魔をするな。もし襲おうとするなら…お前を殺す。」


廊下には重い沈黙が漂った。

少女の目は見開かれ、恐怖がその顔に刻まれていた。

それでも彼は振り返らず、彼女を無視して歩き始めた。


少女はためらったが、すぐに彼の後を走った。

「どこへ行くの?」


「台所だ。」— 振り向きもせずに答えた。 — 「隠れたほうがいい。ますます危なくなっている。」


彼女は唇を噛んだが、諦めなかった。

「一緒に行ってもいい?」


彼は一瞬立ち止まり、素早くせっかちな目を向けただけだった。

「勝手にしろ。ただし襲わないこと、邪魔をしないことだ。」


少女は深く息を吸い、なんとか勇気を取り戻そうとした。

「私の名前はLena。あなたを見たことがない…」


主人公は数秒考えた。

多分…たいてい授業に遅れて来ていたのだ。目立つタイプではなかった。


彼は答えず、廊下を歩き続けた。


数分後、二人は台所に着いた。

「やっとか。」— 彼は周囲を見回し、つぶやいた。


廊下は静まり返っていた。足音も、息づかいもない。

彼はようやく少しだけ緊張を解き、息を漏らした。


振り向いてLenaに言う。

「何もしていないなら、その袋に食べ物と水を詰めろ。」


彼女は緊張しながらもうなずき、棚や戸棚を探り、見つけたものを詰め始めた。


その間に、彼は鋼製の引き出しを開けた。

中には二本の鋭い包丁が収まっていた。彼は両方を手に取り、重さを確かめる。

一本を腰にしっかり差し込んだ。

「これでより素早く効果的に切れるだろう」と思った。


その考えに深く沈む間もなく、ドアに鋭い二度のノックが響いた。

コン…コン…


彼は立ちすくみ、入口を見つめた。

Lena の手に持った袋が、その場で止まった。


二人の呼吸は、台所の息苦しい静けさと混ざり合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る