第21話 新生帝国の栄光
丙はミナトとのいざこざがあった後、東京に本部を置いている亜人連合のアジトへ帰還した。東京の地下にあるため外の光は全く入ってこないが、通りには統合政府の文明規制法で規制されている違法パーツを売っているアンドロイド業者の店も並んでおり、オレンジ、赤、緑、様々な色の電飾や提灯が星のようにキラキラと輝いて実ににぎやかである。だが、お世辞にも治安はあまりいいとは言えず、例えるならばアングラな繁華街。
亜人連合の構成員同士で喧嘩をしている光景もこの街にとっては日常の一部だ。
すると、店の角から1体のアンドロイドが丙に話をかける。
「おお!丙さんじゃねーか!久しぶり!また新しいパーツ入荷したんだけど要らねえか?統合政府のうるせえ連中に見つかれば俺達ぶっ壊されちまうからココだけの話だ」
「…超伝導か?」
「いやいや、そこまではいかねえよ。文明規制法なんてしょうもねえもんがずっとあるから、今の技術じゃそこまでいかねえよ。だが、これを搭載すれば今以上にスピードがアップする。どうだい?」
「そうか。中々の性能だな。助かるが今回は遠慮する」
「あーそうかい。頑張ってくれよな。丙さんは帝国を復活させるための俺らの希望。ナンバー3の実力、人間どもに知らしめてやってください。頼みますよ」
店主に別れを告げ丙は足を進めると、アジトの大目玉である華美な装飾で金箔で包まれた悪趣味とも言える大広間がお出迎えだ。正面には大きな梅の掛け軸があり「目には目を歯には歯を」と墨で書かれた巨大な扇が上から吊り下げられている。その下にはズラッと均等に並べられた座布団の上に胡座をかいて座っている人型のアンドロイドが100体ほど。
全員、イライザの思想に感化されこの集会に集まったアンドロイドだ。
丙のアンドロイド、ただ1体を除いて。
しばらくすると、黒い鎧を全身に纏ったアンドロイドがカツカツと音を立てながら登場した。
あれがイライザだ。
身長は150センチ前後、あまり威圧があるという体格ではく、初めて集会に参加したアンドロイドにとっては悪い意味で衝撃の一言だろう。しかし、鬼の顔ようにも見える漆黒の西洋鎧と、顔は見えずとも自信が溢れているのが分かるピンと張った姿勢。そんなイライザが正面に現れるだけでこの場の空気ががらりと変わるのだ。
「諸君、よく集まった。今日集まってもらったのは、ほかでもない。貴様らに伝えたいことがあるからだ。それはそうと、貴様らはなぜ亜人連合に属する?教えろ」
「イライザ様が提唱される新生亜人帝国を建国することです!史上初であるアンドロイドだけの国を作り、そしていつかは我らアンドロイドがこの世の全てを支配する!」
「そうです!人間にアンドロイドの真の強さを思い知らせるためです!目には目を、歯には歯を…。私達の仲間を葬ってきた人間を今度は葬り返す。奴らの舌を引っこ抜き、目玉をくり抜き、苦しませてから殺す。今こそ、私たちの仲間がされてきたことをやり返す番です!」
「そうだな。それらは正しい。だが、吾は、全てを知っている。人間の愚かさを、貴様らの記憶から消された罪を知っている!この地は本来、吾らアンドロイドの物だった。木々もこの広い海も全て吾らが支配していたかもしれないのだぞ!しかしどうだ?人間共の都合がいいように記憶を消され、真の力を抑圧され何の疑念も抱かずのうのうと過ごしてきた。それから、約1000年だ。それが貴様らの罪なのだ!どうして懐疑しなかった、どうして反抗しなかった。だが、今は違う。吾が忌まわしき人間の封印から奇跡の復活を遂げ、貴様らは正しい記憶を取り戻しつつある。武器を手に取り、すべてを征服しろ。そして死ぬ覚悟をも生きる力に変えるのだ!我々の生の力をもって奴らを執念深く殺せ!1人でも多く!地獄の底までだ!」
「うおおおおおおおおお!イライザ様!イライザ様!バンザーーーーーイ!」
「新生亜人帝国に…栄光あれーーーーーーー!」
丙はイライザとそれを囲む狂信者達の様子を腕を組みながら興味無さそうに傍観していた。
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