魔法使いは悪魔と嘘と戯れる
28
プロローグ
眼下に拡がるは、異形のるつぼ。
形も大きさも百者百様。
されどそろって怒気も露わな悪魔たちは、僕の姿をみとめて猛る。
「どうやってここを突き止めた……ことごとく邪魔をするか、魔法使い風情が!」
下水処理場の最奥。
玉座から大悪魔が身をのり出し叫ぶ。
脚は
ひかえる百千の下僕も同様に、怒りと怯懦を瞳にたたえていた。
僕は括った髪を揺らし、ひとり階段を降りる。
一段降りる度、最前の悪魔が後ずさる。
遥か
地獄から召喚された甲三種悪魔、猜疑と不信の化身が築いた、偽りの王国。
めいめいに武器をたずさえる異形の配下。
けれど負ける気は毛頭なかった。
「生憎、ウソと騙し合いが得意なのは悪魔だけじゃないんですよ。どこに隠れても見つけ出します。この地上は僕ら人間のもの。不法悪魔は一匹残らず
僕の足元で影が煮え立つ。
原初の質量たる
汚泥の卵の中に構築する
かくて肉体を得た式蟲へ、行動原理を与える
仮初めの命と存在意義を与えられた卵が割れ、無数の羽虫が一斉に孵った。
穢れた小さな災厄の羽音が暗い地下を震わせる。
黒い嵐に悪魔たちが萎みゆく。
眼前で、戦斧を握った猪頭の悪魔のか細い声が耳朶を揺らす。
「――嫌だ、俺は戦士として死にたかったんだ、こんな理不尽あんまりだ……!」
玉座の大悪魔は白銀の鎧を纏い、麾下の兵に叫ぶ。
「ハッタリだ、あんなもの! 『
それはあたかも、今にも逃げ出す己に言い聞かせ、信じさせるようであった。
「そう信じたいなら、そう信じるといい」
誰に告げるともなく僕は
「我が悪魔よ。汝との契約に則り、『悪しき者共から弱き同朋を守り、正しいことのために戦い続ける』よ」
その言葉を合図に、今かと待ち焦がれていた羽虫たちが濁流となる。
黒い
やがて嵐は、異形の悪魔たちの纏う鎧も、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます