国語の教科書に載ってもいいような、感動的な、そして問題提起のある作品だと思いました。
お母さんは、主人公を産む時にすごく悩んだと思います。病気の自分が母になっても良いのか。本来なら独りで誰にも迷惑をかけずに生きて、死んでいくのがいいのかもしれない。でも、愛されたいと願ってしまった。
自分は今でも、親のエゴで生まれてきたのだと恨みに思っているので、お母さんの葛藤は、心に響きました。
私は、病気があり、障害者なのですが、時たま「あなたのこんな状況で家族なんて持ってはいけないよ」という言葉をかけられます。反対に、「あなたの年齢なら、自分の家族を持つべきだし、仕事にも就いていないのはおかしいよ。いくら障害者だからって、障害に甘えてる」という言葉も、時たまかけられます。
人間は、その「人間」という言葉の通り、人の間で生きています。
生きているだけで誰かに迷惑をかけるのなら、何もしない方がいいのではないか?
生きていると誰かを不幸にまでしてしまうのなら、ここに居てはいけないのかもしれない。
ずっと、こんな思いを抱えて生きている自分です。
しかし、この物語は架空のものではありますが、そんな自分の思いを受容してくれました。
主人公も、お父さんも、主人公が想像しただけかもしれないけど、お母さんも、優しい愛でいっぱいです。
この家族には、思いやりが溢れていると思いました。
人間は、人の間で生きている。
その繋がりは、どうしたって求めてしまうし、夢見てしまうし、願ってしまうものなんだと思います。
永遠の命や、病気のない世界が、本当に善いだけのものなのかは、その未来になってみないとわかりません。
しかし、幸せを求めるということは、強い信念であり、その信念は、確かにこの現実を動かしているものなのだと、この作品を拝読し思いました。
読んでいたら、感動の涙がちょちょぎれてしまった自分です。
あづま先生、素晴らしい作品をありがとうございます!
本当に「万博」の会場を訪れたような、そんな驚きと「夢」に満ちた時間を体験できる作品でした。
主人公の少年は万博を訪れる。彼の母親は「とある心の病」を抱えており、今は人形のように横たわるばかりの状態になってしまっている。
そのことに悩みつつも万博の会場を闊歩する中で、彼の目の前に「化け物」が現れる。人間のようなフォルムをしているが、目は大きく、肌はじめじめとした質感。
その姿を見て驚くが、相手は気さくな性格をしており、関西弁で楽しそうに話しかけてくる。
そして、「彼」に手を引かれる形で「万博」の中を見て歩く。そこでは未来の技術で可能となっている「レンジでチンするだけでハンバーグに変わる人工肉のもと」や「命の問題も解決してくれそうな発明」などが出てくる。
この辺りの描写がとてもリアルで、「意外と大阪万博に行くと、こんな感じの発明品が実際に発表されてるのでは?」と思わせられました。
本作は、そんな未来のヴィジョンが次々と提示されるワクワク感にまず心を奪われます。更にその先で少年の切実な想いが浮き彫りになり、「母」との思わぬ形での心の交流に、ジーンと胸があたたかくなりました。
「科学の未来」を見て行く楽しさと、少年のひと夏の成長が描かれる瑞々しさと切なさ。
読んだ後に前向きな気持ちになれる、とても素敵な作品でした。
未来技術の祭典を舞台に、病に倒れた母を救いたいと願う少年・湊の心を描いたファンタジー作品。
人工心臓や3Dプリンタの食べ物、未来の自分との遭遇といった夢のような展示と、不思議な化物との冒険を通して、「命」や「家族」について深く問いかけます。
「命とは何か」、「人はどこまで人を救えるのか」。
未来技術によって再生された母が、言葉では伝えきれない“愛”を涙で語る場面は胸を締めつけられました。
湊はただ奇跡を願っていたわけではなく、“癒えない現実”と向き合うことで、本当の意味での成長を遂げていきます。
テクノロジーがもたらす希望と、人の心が抱える痛み。
子供にも大人にも響く“未来”と“いのち”の物語を、ぜひ読んでみてください。
命のことについて世界中の未来技術が集まる国際的イベント「大阪いのちの博覧会」
主人公の湊がいのちの博覧会へ訪れた目的――それは病に伏す母を治す手がかりを探すためでした。薬物治療が奏功せず、今では横たわり、悪夢を見るだけの人形と変わり果ててしまった母。
東京に臥す母のため、湊は父親と二人で東京からはるばる大阪までやってきたのです。
しかし、そこは大変な盛況ぶり。見て回りたい人気パビリオンは幾つもありましたが、結局ひとつも叶えられそうにありません。諦めかけた時、不意に吹いた不思議な風。それは湊にとって魔法のような体験として映るのです。
過去の人々にとって現代の高度に発展した科学技術は、魔法のように見えることでしょう。それが世代を超えて人々のもとへ届けば、救えなかった命を守れるようになるかもしれません。その願いを魔法に代えて――誰かのために叶えられる未来がきっとある。ひと夏の思いに吹く可能性の風が呼び起こす素敵な物語です。
大阪いのちの博覧会。湊は母の病を治す手がかりを探して、ここを訪れた。しかし、大変な混雑に、どの人気パビリオンも回れないまま帰る時間となってしまう。幾重にも絶望を上塗りしたその時、大屋根リングから潮風が通り抜けてくる。
展開やキャラの受け答えが良い意味で荒唐無稽で、意外性があって、すごく面白かったです。シーソーみたいに切なさとドタバタがやって来て、泣けたり楽しくなったり、感情が大きく振り回されました。
湊の「母の病が治って欲しい」というのは、いわば夢であるし、そのための手がかりを探して博覧会に来たというだけで、彼は夢への一歩を踏み出しているのだと思いました。
その歩みが何歩続くかはわかりません。歩み続けたところで、夢にたどり着けるかもわかりません。でも、彼がもし足跡を遺したのなら、その分だけ人類は魔法を会得して、やがては「未来の湊」を救うことになるのだろうと思います。
どうせ見るのなら、悪夢よりも夢を見たい。「遊べっ!」という言葉が心に響きました。
素晴らしい作品をありがとうございました!