花もぐらの子トトとリンドウ

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第1話 花もぐらの子トトと秋のスキー場

〜花もぐらの子トトと秋のスキー場〜




花もぐらの子トトは、お母さんと秋のスキー場にやってきました。


白い雪はまだ降っていません。代わりに、草原には青紫のサファイア・ブルーのリンドウが群れて咲いていました。


カタン、カタン、と揺れるリフトにのって空へ。

足元を見下ろすと――



「あ、あれは北斗七星みたい」

トトは目を丸くしました。


リンドウの花が並んで光っているように見えたのです。


「わあ、こっちはカシオペア座だ」


リフトが高くなるほど、花々は星座のように散りばめられていました。


空は昼の青。けれど足元には夜空のような群青の世界が広がって、

トトは不思議な気持ちになりました。


リフトはさらに上へ。

風に吹かれてリンドウはゆらりと首をふり、

まるで星たちがトトに「こんにちは」と言っているようでした。


やがて山の頂に近づくと、

トトの胸の中にも小さな星がひとつ灯ったように、あたたかく輝きました。



――秋のスキー場は、リンドウの星座でいっぱいの、もうひとつの夜空だったのです。


♪♪♪

あれ、バイオリン?

ステキな弦楽器の音楽が聴こえてきます。

秋の虫たちが、すてきなBGMを奏でていました。


それはまるで、チェロとバイオリンの二重奏のようでした。



ママはトトのために今朝アップルパイを焼きました。

そして、焼きたての熱々をバスケットに入れて持ってきています。


「今日のお楽しみのパイはな〜に?

今朝何かを作っていたでしょう?

ぼく知ってるんだよ。

いいにおいしたもの。」とトトが言うと、


お母さんは「そうね、もう少しあとのお楽しみかしら」とこたえました。


ふたりでリフトにゆられています。


おひさまの光が心地よく背中に届きます。


「サングラスしてるわね?」


「うん」

もぐらは、外では光が強いので、サングラスをしなくてはなりません。


涼やかな風が 心地よく吹いています。



そうして秋のスキー場の野原は極上の秋の一日を演出してくれたのです。




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