エデンより

青城澄


 昔、神さまが世界を創ろうと、お考えになりました。

 そこで、まず、「光があるように」とおっしゃいました。すると、光が現れて、光と闇ができました。

 次に神さまは、大空と海を創りました。そして大きな陸を創りました。神はできた世界の基礎を見て、これはたいそういいとお思いになられて、よし、とおっしゃいました。

 次に神さまは、陸に草原や森をお創りになりました。たわわに実る木の実や、たいそう美しい花々や、食べることのできる種などをお創りになりました。神様はそれを見て、これはたいそういいものだとお思いになり、またよし、とおっしゃいました。

 次に神さまは、太陽や月や星を創って、大空に打ちました。これで、世界に風が吹き、光が差し、昼と夜や季節のうつろいが起こるようになりました。神さまは、これはまたいいとお思いになり、よし、とおっしゃいました。

 さて次に神様は、水の中を泳ぐ魚と、空を飛ぶ鳥を創り、世界に放ちました。水に珠玉のような命が躍り、空に美しい命の声がひしめきました。神さまはまた、これもいいぞ、とお思いになり、よし、とおっしゃいました。

 次に神さまは、獣をお創りになり、大地に放ちました。草原や森の中に、不思議な動物がうごめき、おもしろい声で鳴くようになりました。神さまは楽しくなり、またこれもいいぞ、とお思いになり、よし、とおっしゃいました。

 さて、最後に神さまは、人間を創ろうとお考えになりました。今までで一番いいものにしようと思って、いろいろと考え、まず男を創って、それにアダムと名付けました。アダムは、賢い少年でした。いたずらっ子で、好奇心大せいで、時々馬鹿みたいにふざけるのが、楽しくってしょうがないような子供でした。神さまは、おもしろいものができたと思って喜ばれ、よし、とおっしゃいました。

 次に神さまは、アダムが独りぼっちではかわいそうなので、妻となる女を創ってやろうとお考えになりました。そして、眠っているアダムのわき腹から、ろっ骨を一本取り、それに、ミントの魔法をかけて、女を創りました。女には、イヴと名前をつけました。


 エデンの動物たちをからかって遊んでいるうちに、疲れ果てて眠っていたアダムは、ふと何かを感じて目を覚ましました。すると、すぐそばに、長い髪をした、それはきれいな女がいるのです。アダムはびっくりしました。

「わたしは、イヴというの」と言って笑う女を見て、アダムは、初めて会うのに、今まであったどんな動物たちよりも、自分に近いと感じました。美しいイヴを見て、アダムは言いました。

「なんでだろう。きみはぼく自身のような気がする」

 するとイヴは笑って言ったのです。

「きっとそうなのよ。わたしもあなたが、わたし自身のような気がする」

このようにして、神の守る美しいエデンの園で、アダムとイヴは出会ったのです。




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