第七章 出口
第42話 病室
門野・長木・秋津は病院に搬送されたものの、案件が案件だけに、負傷が単なる外傷のみではないため、卜部が病院に呼び出されることになり、そこで清めの儀式が恭しく執り行われた後、治療が進められた。意識を失っている三が人別々の個室になったのは、弾正から連絡を受けた市長が勅命に匹敵する指示したためである。その弾正は三人に比べれば負傷度が小さいため、清めの儀式参加後、点滴を打って終了となった。弾正が卜部から聞いたところに寄れば、長木は間もなく目が覚めるだろう。しかし、門野と秋津に関しては何とも言えない。下手をすれば数か月この状態が続くかもしれないとのことだった。
予想通り、長木は数時間後に目を覚ました。自身でも思いのほか身体が重くない。ベッドの傍らにいた卜部が準備してくれたパワーストーンのブレスレットを手首、足首に揃える。
「やっぱり落ち着きます」
そう言うと、卜部もうれしそうに微笑んだ。
長木に付けられていた点滴も終了し、彼女は弾正とともに、まだ目覚めぬ二人の病室へ向かった。覚醒を聞きつけた弾正が長木の病室を訪ねた際、一人で回ると言ったのだが、長木が共に回ると言って頑と引かないため、弾正としては仕方なく同行させた。それはそうである。委員長としてはメンバーの身の安全を確保しなければならない。組織発足早々にこうしたでかい戦いが連続して起こった。身体に負担がないということはありえなかった。ならば、収束を見た今は安静にしておく必要があると。しかし、一方で長木の気持ちも察せられた。同学年、いや同級生が起こした件だ。他人事のように見過ごすことはできまい。しかも幼少から《異人》を見るという力を有していた二人なのだ。なおさら放っておくことはできないのだと。
その秋津の病室。簡素な個室は枕元にしっとりとした花が活けられていた。呼吸器をつけてはいるものの、その音はまるで静かである。あの激情がまるで嘘のように。
「大人しそうな子なのに」
長木は同級生にそんなことを言った。
「だからこそかもしれませんね」
「え?」
「大人しいからこそ、抱え込んでしまった。ま、それだけじゃないですけどね」
「そうですね」
語られた過去、そして直面した人間の醜い部分を彼女はうまく処理することができなかった。
「でも……なんて言うのかな、彼女は間違っていたと私は思いますけど、悪くはないと思います。こんなこと言うと、メンバーとして不適切かもしれませんけど」
「いや、そんなことは。僕の口からは言えませんが、メンバーが外でどう話していたのかなんて報告書に描く必要もありませんしね。それに……」
「それに?」
「門野君も同じように考えていたと思いますよ」
同行していた卜部がまだ意識は戻りそうにないこと。また別の儀式を行ってみることを告げると、二人は門野の病室へ向かった。
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