第36話 個人情報
「彼女について知っていることは?」
弾正のデータには身体的特徴のみが記載されているだけだった。そのため、実生活の秋津の様子を検証することになった。
「そうですね。私も一人でいることが多いですけど、彼女は私よりも一人でいますね。どことなく、触れてはいけない、そうガラスのような雰囲気ですね。以前、花壇の所でニッコリとほほ笑んで独り言を言っているのを見えました。周りは気味悪がっていましたが、私の目には花の精と話しているように見えました」
「う~ん。男子連中が言ってたのは、暗くて薄気味悪いって言ってたよ。顔はまあまあなのにって」
「まったく男子ってそればっかりね」
「だから、他の男子だっつうの。確かに長木が言ったように、一人で抱え込んじまうように見えたかな俺には」
「私みたいに何か現場を見たことあるの?」
「いやないけどよ、なんとなく」
説得力の欠片もないが、一人でいて誰にも頼らないという感があるのは否めなかった。
「では、彼女の携帯電話の番号やメールのアドレスは…」
「知りません」
「俺も」
「そうか」
しかし、個人データには自宅の電話番号があった。弾正がかけてみた。風紀委員と言えば何か仰々しくなるが、生徒会ですと言えば行事関連の協力の打診で怪しまれずに済むという形で話を勧めようとしたが、本人不在であった。それどころか、
「あの子、最近ずっと夜中に家を抜け出しているみたいなんです」
という保護者の情報が得られた。今、保護者と言ったのには理由がある。秋津には両親がいない。父親の妹夫妻が預かっていたのである。
「状況証拠が揃いつつありますね」
「でも、物証や現場を抑えない限り断定するのは……」
「確かにそうですね」
弾正も長木も困ってしまう。
「そうなりゃ現場抑えるしかないわな」
「そうだけど、どうやって見つけるのよ」
門野の事も無げな言いに、長木は少しいらっとする。そんなに簡単に見つけられるのならだれも苦労はしない。あれだけ地図に点を打ったり、結んだりしても何のことかは分からなかったわけだし、容疑者は容疑者でしかないから帰宅を待ち伏せして確保するわけにもいかない。さらに交友関係の浅さから連絡の取りようもない。そんなことを長木は門野に言った。が、門野は長木の思考を小難しいことと一蹴した。
「だってよ、それならあいつらに頼めばと思って」
門野が射した先には窓の外に漂う葉っぱが。
「協力部隊なんだし」
白蛇の命を受けた、目と口の着いた葉。上空からの偵察が可能。しかも一枚二枚どころではない。
「そうしましょう!」
門野の妙案に乗っかり、弾正が代表をして葉っぱに願いを乞うた。葉っぱは他の葉にも連絡を取り(どうやって取っているのかは白蛇への連絡同様不明だったが)、風に吹かれて行ってしまった。
「さて、では連絡待ち。その間に秋津さんを見つけた後の対処を考えておきましょう」
門野たちは善後策について協議した。
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