第20話 気になるしめ縄
弾正忠明はピクリとも動いていなかった。風紀委員会室の委員長席。その机上には昨晩押収してきたしめ縄がある。肩肘をつき、顎に手を乗せて、弾正はそれを見つめていたのである。しめ縄は結び目でない所で切れていた。鋸で何度も引いて切ったような繊維のただれはなく、鋭利な刃物の一太刀でスパッと裁断されたような面だった。
日本刀で切った。しかし、誰にも見られない所で? しかもそれならすでに落ちていなければならない。が落ちたのは昨晩。
チェーンソー。音がうるさいから住民に聞こえる。
ナイフ。こんな断面にならない。
人間の仕業でない? しかし、しめ縄には特殊な術が掛けられていて、並みの《異人》なら触れることさえできなかったはず。だとしたら霊力の高い《異人》。しかし、だとしたら、何のメリットがあって。愉快犯的な行動。そんなことを霊力の高い《異人》がするだろうか。そのような存在はそんな意味不明なことはしない。するとしたら必ず意味のあることだ。だとしたらそれは何だ。
弾正の頭の中には様々な仮説と論理が右往左往していた。が、どれも説得力に欠く。
――ということは見逃していることがある
姿勢を崩し、起立する。一つ背伸びをした。
――あるいは、まだこの件は終わっていないということか
腕をダラリと下ろすと、ため息ともつかない息を吐いた。
「ま、様子見ですかね」
と言ってしめ縄を片付けた時だ、ドアが叩かれる音がしたのは。
「どうぞ」
入室の許可を与える。ドアが開き現れたのは門野たちだった。
「おや? どうなさったんですか」
門野と長木の後ろにいる生徒に関心が向く。
「いきなり連れてくるのもどうかと思ったんですけど……」
「まあ、とりあえず入って席についてください」
三人が席に腰を下ろすまで、弾正は麦茶の用意をしようとした。が、さすがにこう何度というのも気が引けるし、もはやここは基地のようなもの。長木がそれの準備を買って出た。
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