缶コーヒーが自販機にいるとき

一筆書き推敲無し太郎

第1話

私は缶コーヒー

昔から愛されるメーカーの金字塔

最近の缶コーヒー業界は群雄割拠だ

1段に12本の目白押しで1位にならなきゃならない 私のいるところではないけれど噂では3段まるごと缶コーヒーで埋め尽くされてる所もあるとか 恐ろしい


お客さんだ

当然、私を選ぶよね 私は美味しくて改良を何回も施された缶コーヒーだもの ちょっとその分、値段がほかより高いけど

でも美味しい缶コーヒーはここにいるよ お客さん 缶コーヒーいかが? 私は自信満々に待ってる ほらつめた〜い缶コーヒーも、あたたか〜い缶コーヒーも、ここにあるよ 私はこれだけで鼻が高くなる

ピッ

あっ私じゃない… 私よりも目につきやすい位置のCMで最近有名な缶コーヒーが選ばれた 私の方が美味しいのに しょうがない ふっ こんな過渡期の缶コーヒーは長続きしないよ 絶対そうだ 私は水滴を拭くように 背筋を伸ばして 私はここにいるよって伝えるのが仕事

団体客だ

この場合は1人は私を選ぶ そうしたら連鎖的に私を選ぶ傾向がある 結構ニヤニヤしちゃう また私は私がここにいることをアピールするために ネクタイを締めるように待つ

ピッ

やった!私だ、つめた〜い私だ どうぞ!美味しいよ!アルミ缶だから分別しっかりしてね! そんな面持ちで床にたたきつけられる なんで自販機はこの仕様なんだろうか 床に落とされるの 結構辛い仕事だ でも この調子なら!私はまた団体客に選ばれるだろう!誇らしいな私!つめた〜い私!!

「俺もそれにするわ あー俺も〜」

そんな団体客のお声が聞こえます!

私は喜び勇んで小銭入れに投入されるお金よりも大きな声でバンザイ! バンザイ!

団体客が話している

「あ?売切れじゃねぇか1本しか買えなかったわ はぁ〜?昼時に補充間に合ってねぇとか勘弁すんじゃねぇよ どうする? あーもう安いのでいいよ あーそれCMで見たわ うん人数分な」

どうしようどうしようどうしよう

私足りなかったらしいよ… 売上でCMのアイツには負けられないのに アイツは得意気なんだろうか 悔しい悔しい悔しい

補充の方!早く来て!ホラ!お客さんが悲しんでるよ!何より私が!!今昼時!これからどっさり私買われるはずなのに!

私は缶コーヒー 売切れには敵わない 私は美味しいのに 私はここにいるのに


私のセールス文句を聞きたいならまた補充されてからおいでね うん 私はここにいるから

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缶コーヒーが自販機にいるとき 一筆書き推敲無し太郎 @botw_totk

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