赤紙と折り紙とタイムスリップ

一筆書き推敲無し太郎

第1話

僕は折り紙が好きだ。色とりどりの紙で織り成す完成系を想像しながら…。なんて、いつも紙飛行機を作っちゃう。

飛ばすのが好きだし。たまにおかぁちゃんに当てちゃって怒られちゃうけど。

えへへ、僕まだ5歳だもん。

今日は赤色の紙飛行機を飛ばそう。太陽が沈む時間に溶けてなくなりそうな紙飛行機。赤と真っ白。折って、折って、自分の得意な紙飛行機ができた。

飛ばそう。「おかぁちゃん、出かけてくる!」 なんて、おかぁちゃんは働いてる時間だけど。

玄関を出た。

? 人の往来がいつもより少ない。まだ16時だよ? まぁいっか!

赤色の紙飛行機は燦々と輝いてる勢い込めて飛ばすんだ!いつものように。

そうしたら。

怒り狂ってる人がいる。知らないおじさんだ。「コラーー!赤紙折って飛ばすヤツがおるか!」

? 折り紙って紙を折るから折り紙って言うんじゃないの?

知らない人に話しかけられるのは良くないとおかぁちゃんの言葉を思い出した。

逃げよう。太陽は逃げないから。紙飛行機の輝く場所はここだけじゃない。

僕が走り出すと人にぶつかってしまった。

「イテッ ごめんさい。」 僕は紙飛行機をおまじない代わりに泣かないもん。

そうしたら。

「つかまえた。坊やのウチに案内しなさい。その紙は坊や宛てじゃない。不適合だからね。」

?大人はよく分からないことを言ってる。難しい言葉使ったって僕には分からないのに。

続けざまに「坊やの兄や父の紙だろう?こんな大事な紙を…」

? 僕のだよ。いつもの折り紙セットから出したもん。

よく分からないんだけど。怒らせてしまった。顔がイライラしているのがよく分かる。なにかいけないことをしてしまったのかな。

「お、おかぁちゃんは今仕事だけど18時には帰ってくるよ。」

「そうかそうか。ウチに連れて行ってくれるんだな?」

こくりと頷き、ウチここだよと玄関を指す。まだ紙飛行機投げてないのにな。

「それでは、坊やにはその紙飛行機を返してもらおうか。」

なんで? 僕のだい! 反抗する間もなく大人は僕の紙飛行機を取り上げた。

「やっぱり坊やの家族の名前が書かれている。坊やの紙じゃないのに寄りによってコレで遊ぶなんて。この家は処分が必要だな。」

僕は大人の人をよく見ることにした。

この服は郵便さんの格好? でもなんか違う。

大きな銃を背中に持ってる。この人なんの人だろう… 聞いてみよ。

「あの、あなたは僕んちの誰かの知り合いなんですか?」

ニヤッと笑った。大人の悪いこと考えてる顔だ。

「ああ。そうだね。赤紙で遊んだ坊や。君にも処分が下る。しかしその前に挨拶はしようか。君のご家族は赤紙を無視したようだ。これは違反行為だよ。ほんとは今すぐ坊やの脳天を撃ってやりたい所だが親に意見聴取してからにしよう。」

しょぶんって言葉をさっきから言ってる。

僕にはわからない。また聞こう。

「ねぇ、それって僕の紙だと思うよ。おじさん、なにか勘違いしてるんじゃないの?さっき僕が折った紙は折り紙っていうんだよ。」

「うるせぇガキだな。なんも知らないのか。赤紙の価値を。」

「だから、赤紙じゃなくて折り紙って言うの。」

「いいか!? これは国に選ばれた証なんだ。お前なんてガキが手にしているということは赤紙を拒否したってことだ。それがどんな意味を持つのは、ガキにゃわからんか。ハッハッハ」

? たしかにわからない。

「ったく。立って待ってるのも警戒されるか。おい坊や玄関をあけろ。」

僕は言われるがままにおかぁちゃんの帰りを待つなら部屋で座ってようかなと思った。

玄関をあけた。

アレッ、ここどこ? 本で読んだことある。

これ囲炉裏だ。僕んちじゃないのかな。玄関に戻る。玄関は僕んちだ。似ているのかな。

「坊や、なにを慌てているのかな。ようやく事態の深刻さに気づいたかな?」

ちがう。鍵があうってことは僕んちだ。

サーっと背筋に血の気が引いた。

僕んちで僕んちじゃない。

ここだけじゃない。多分この大人の人も何かが違う。恐る恐る聞いてみる。

「ね、ねえっ。おじさんはなんの人なの?ここ、僕んちなんだけど僕んちじゃないと思うの。紙飛行機飛ばそうと思って玄関をでただけなの。」

「?変なガキだな。戦時下に喚くガキは幾らでも居るが。精神がイカれちまった口か?いいか坊主。今はアメリカと戦争してんだ。お前の家の失態に付き合ってやってるんだ。少しは大人しくしとれ!」

どうなってるんだ?僕は…おかぁちゃん……うわああ……


夢中で玄関を出た。

あれっあのおじさん居ない。人の往来が元通りになってる。

赤色の紙飛行機だけない。

僕のだったのにおじさんに取られちゃったからだ。

玄関に戻って戸をあけた。

おじさんが居ない。囲炉裏もない。

赤色の紙飛行機もない。

僕には何が起きたかわからない。

でも赤色の紙飛行機が怖くなっちゃった。次は黄色にしようかな。

おかぁちゃんに赤色の折り紙を全部捨ててもらおう。

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