予言 -replay-
Lyet / ライエット
Chapter 1 グラジオラス・ヴェイラー
Ep.1 はじまり
༽
眠い目をこすりながら俺はスマホのアラームを止めた。もう朝か。
今日は休みだっけと一瞬淡い期待が浮かんできたが、スマホの画面を見て落胆した。昨日は月曜日じゃないか。気が早いにも程があるだろう。俺は自分に呆れた。
手早く私服に着替え、レトルトカレーとお茶だけの食事を済ませて、リュックサックに教科書全部とペンを詰め込んで家を出た。
今日はいつも以上にリュックサックが重い気がする。これは時間割など見ず闇雲に教科書を放り込んだせいか、それとも背中に常に張り付いている憂鬱な気持ちなのかは分からない。そんなことは頭から放り出し、歩くのに集中した。
俺の名前はグラジオラス・ヴェイラー。クラスの奴らからはグラディと呼ばれている。俺は元々人見知りなのもあり友達が少なかったが、誰からも助けを借りない俺ってかっこいいなどと自分のことを正当化し続けてしまったせいで、この高校生活のスタートダッシュで盛大に失敗してしまった。
昔のことを考えるのはよそう。ただでさえ孤独なのに、そんなことを再認識してしまうと余計惨めになるではないか。
そんなことを考えているうちに、徒歩10分でつく学校に到着した。
「よう、グラディ、相変わらず来るの遅いな」
これが毎日憂鬱な原因その2、いじめだ。
休み時間にスマホばっかり弄り、スマホを忘れたときは寝たふりをするような人間だから、いじめの格好の的になるのは避けられない。自業自得だ。
「悪いけど、今日の宿題やってくれないか?友達だろ」
いやらしい笑みと目の前の大量のプリントをみて良い気になる人間などいるはずない。しぶしぶプリントを受け取り、机の中に放り込む。
「わかってると思うが、3限目までに終わらせとけよ。ま、お前暇だしどうにかなるか。じゃあな」
俺は深くため息をつき、これから始まる最悪の一日に思いを巡らせた。
長い一日の終わりを告げるチャイムが鳴り、みんなは即座に教室を飛び出した。
どうせ家に帰ってもやることがないから、ゆっくり帰ろう。
そんな気分で校門を出た。この後に起きることなど全く想像もつかなかった。
通学路を歩いていると、妙な路地を発見した。見た感じはどこにでもあるような路地だが、空気?臭い?何かがおかしい気がする。
なんだ、ここは。うまく説明できないが、俺の中の"邪悪な何か"が反応している。「進め」と何十回も唱えている。そんな気がした。
どうせなら入ってみるか……?家に帰っても何もすることもない。でも、なんだか妙な雰囲気が……
頭の中の冷静な自分が叫んだ。「怪しいと思っているんなら、その声に従え!」
しかし、どうしても気になる。この感情を抑えるのは到底不可能だ。かくして俺は、人生最悪の決断を下した。
「クソッ、どうにでもなれ」
俺は意を決して路地裏の向こうへ走り出した。
...その路地は地獄へとつながっていた。
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