第28話 となりの悪役 SIDEミアプラキドス
「くだらない。どうして僕が謝らなきゃいけないのさ」
精霊は、人間を手助けして生きなさい。精霊界と人間界はまだ細い繋がりだけど、種族が違う存在は近すぎても遠すぎてもいけない。
人の子の授業に参加する時、そう精霊王に言われたけど、水の精霊の中でも最も魔力の強い僕が、人間の手助けをしてやるなんて癪だった。
だから少しでも面白くなると思ってハダルに悪戯した。あいつは人間の年だったら一年くらい騙され続けていたわけだけど、僕らの時間からすれば瞬きと同じだ。元々人間は僕より下の存在で、魔力だってゴミみたいなものだ。馬鹿にしたっていい存在なのに、どうして怒られなきゃいけないんだろう。
それに、今世紀の聖女は面白そうなのに、光の魔力以前に人としての心が強すぎるから話をしちゃ駄目とか、意味分かんない!
いらいらしながらアカデミーの中を飛んでいく。水晶なしに聖霊界へは帰れないけど、どうせ帰っても精霊王に怒られてしまうのだ。帰りたくない。でも、どのクラスも授業は終わってないから、廊下には誰も通っていなくて学校もつまらない。誰かに会えば、悪戯してやれるのに!
「妖精さん」
声をかけられ振り返ると、どこにでもいるような赤毛の女子生徒がこちらを見ていた。授業なのに、どうしてこんなところにいるんだろう。
「なに? 加護ならやらないよ」
ふん、とそっぽを向くと、「いかにもヒールって感じ、最適。ふふふ」なんて、勝ち誇った声で笑われた。あまりの不愉快さに、僕は思いきり睨み返す。しかし彼女はものともせず、「世界の崩壊に興味ない?」と聞いてきた。
「世界の崩壊?」
「そう。思いっきり悪いことするのよ。何か壊したりするの、あなた好きでしょう?」
女子生徒の蠱惑的な笑みに、協力してやってもいい気持ちになった。どうせ帰れないし、それまでの暇つぶしにでもなればいいや。
「なにそれ? 人間のくせに、世界を滅ぼしたいの?」
「ううん。私、無理心中するつもりはないの。厳密にいえば、私は自分の望みを叶えたいだけ」
「強欲だね。君の望みは世界が関わるんだ」
挑発交じりにそう伝えると、女子生徒はくすりと笑った。その笑顔が、さきほどとは裏腹に、化け物が舌なめずりをしているように見えて、寒気がする。
「ええ。だって結局、生き物はどう生きるかが大切なんじゃなくて、どうやって死ぬかが大切なことだから」
そして、笑みとともに紡がれた言葉に、戦慄した。
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