最終章

わが父の逝きし歳まであと四年いともしがなき生命と知れば


生まれ来る時も知らねば死にゆけるのちの世もまた知らざるごとく


運命さためとは哀しきものぞ生れ来て身の利かざるを嘆きいたれど


父というライバルひそかにも闘志にも似たもの抱きし頃も…


いかにして幕を引くべき人生も何を基準に終わりとするや


わが友の幾人かすでに世を去りて旅立ちの日はわれにも来ると


繰り返し押し寄せてくる波のごとくわが人生の悔いのいくつか


己が身の生きざまひとつ顧みれど得もせぬ悔いも残れる


最終章の近づけば幕は静かに引かれざるべし


友らみな逝きて残りしわれひとり生きてこの世の地獄を見るか


同時代を生きて来ればなおさらに残されし者の心の残響


手の届く範囲にある死と対峙してその日その日を暮らしいたれば


手の届く範囲にある死と手の届く範囲の外のまだ見ぬものと

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短歌 最終章 佐藤万象 banshow.s @furusatoha

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