歌人廃業

歌わざるカナリアなどは裏山に捨てられるべし歌人廃業


錆びつきし感性ゆえに幾歳か歌を忘れしカナリアとなる


カナリアもわれも歌わずいつからか陽だまりを恋う晩年なれば


歌わざる歌人となりて久しくもとある思いにうなずきながら


気が付けば二十余年も過ぎしまま鏡の中の老人は誰?


うず高く積まれし言葉それのみにいまのわれには抗いもなし


わけもなく怒りを常に抱きつつ問わず語らずただ黙すのみ


日常の会話の中のひと言に傷つきもせず感動もなく


忘れいし歌のこころを取り戻す術はあるかと自らに問う


歌を詠む時の心得いまさらに問わずもがなの放蕩の果て


無言にていまここにある存在は昔のままのわれにてあるか?


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