夕暮れ町の夕暮レディオ

桜月 貴

第1話

「今年も始まりました夕暮れ町の夕暮ゆうぐレディオ。パーソナリティは皆さんお馴染みの私、夕日がお送りいたしまぁす!」

町のあちこちからノイズ混じりの明るい女性の声が聞こえだす。

夏の夕方18時の日曜日、今年も夕暮れ町ではお馴染みのラジオ番組が始まった。


奈津野美果なつの みかは都会での暮らしに疲れ果て8年ぶりに実家のある夕暮れ町に帰ってきた。

田舎が嫌になって大学の入学を機に都会に出たのだが、結局のところ忙しいよりも自分はゆっくりした生活が好きなのかもしれないと実感しこの町に戻ることにした。


久しぶりに帰った地元は多少の変化はあっても、いつも行っていた駄菓子屋も掘り出し物が多かった本屋もいまだに営業していてなんだか嬉しい気持ちになった。

童心に帰って駄菓子を買い近くの小学生の頃よく遊んでいた公園で食べることにした。

誰もいない事を確認して、ブランコに座り買ってきた駄菓子を食べる。

この公園には2階建ての家ぐらいの高さの展望台がありそこから町を一望できるらしいが、高いところが苦手だった奈津野は上ったことが無かった。

(今なら大丈夫)

そう思い初めて展望台の階段を上る。


上につくと爽やかな涼しい風が吹き抜けた。


目の前に広がった町並みは夕日に照らされてノスタルジーに溢れ、どこからか子供達の楽しげな声が聞こえる。

みんなこんな景色を見ていたのかと昔の友達に想いを馳せると色々な思い出が蘇ってきた。


(そういえばここでこんなことがあったよな)


奈津野は昔好きだった子からあだ名で

”夏みかん”と呼ばれていたのを思い出した。

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