転生したら迷宮そのものでした

可じゃん

第1話 リリース日

 俺の名前は三島健みしまたけし、高校二年生だ。

まあ、世間一般的に陰キャと呼ばれる部類ではあるものの、他人の目を気にせず自分の趣味に没頭できてて何不自由のない生活を送れていると思っている。

そしてその、趣味のことだが、それはゲーム作りだ。

実は、小学生のころから父親のPCに触れており、その影響でゲームにはまり、そのまま作ることにもはまってしまったのだ。

今では趣味の範疇を超えて、自作ゲームを配信・販売もしていたする。

なんて自己紹介はさておき、今日はその大事なゲームのリリース日。

この後チャイムが鳴ったら下校して、予告時間通りに配信するだけだ。


キーンコーンカーンコーン


「さようなら」


クラス中に別れの挨拶が響く。

クラスメイト達は一緒に帰ろうだの、帰ったら何しようだの話し合っているが、俺にはそんな友達も時間もない。


(今回のゲームには相当力を入れたんだ!!舞台は剣と魔法の王道ファンタジー。広告にも技術面にも相当時間と金をかけた。絶対に売れるぞ!!いや売れてくれ頼む!!!)


なんてことを考えながら、らんらんと廊下を進む。

ゲームの内容はこうだ。

プレイヤーは自分だけのダンジョンを作り、押し入ってくる侵入者たちを撃退するというものだ。

メインコンテンツのほかにもオンライン対戦で野良プレイヤーのダンジョンを攻略できたり、独自性を生むために、乱数システムと自作AIによるオリジナルスキル・イベントの習得・発生も加えてある。

はっきり言って過去最高傑作だ。

多くはないが、長年俺を支えてくれて来たファンたちも待っていてくれてる。

だから、なにごともなく、家に帰ってゲームを公開したかったのだが──。


死んだ。


え、急に?!と思うかもしれないが、それはこっちのセリフだ。

理由はシンプルで、階段を転げ落ちたからだ。

浮かれて、足元をよく見ていなかったとだけ言い訳をしておこう。

まあ、死んだとは言ってもまだ意識は残っている。

本能的にもう助からないと理解しているから、死んだと表現したのだ。


(あーあ。なんでこうなるかな。)


死の瀬戸際に、俺は自分の作ったゲーム皆に公開したかったなと思った。

むしろ悔いはそれしかない。

俺の生きがいであったゲーム作り、その最後の工程を終えれずにこの世を去ることになるなんて......。


(みんなに.....見せたかった...な.....)


この言葉を最後に、俺の意識は深く深く沈んでいったのだった。

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