踏み入れし女同士の快楽沼
砂山 海
踏み入れし女同士の快楽沼
十三の時に初恋をし、十六の時に初めて彼氏というものができて、十七の時に初体験。二十六の時に死んでしまいたいような大失恋をしたけれど、三十の時に今の彼氏と出会って結婚を考える私は三十二歳。
こうして振り返れば良からず悪からず、まぁまぁ一般的な恋愛遍歴だと思う。いやむしろ、恵まれている方なのかもしれない。ニュースなどでは二十代、三十代になっても付き合った事が無いとか性体験が無いという人も今は多いみたいだから。
言うまでも無いけど、相手は全て男性。幼い頃から男性の筋肉が好きで、マッチョとまではいかなくとも筋張った腕や体が好きだった。力強さに惹かれ、その腕の中で抱かれる事に今も安息を得ている。
それが女の幸せなのだと信じているから。
そんな価値観に揺らぎを与えたのは彼氏である脇坂浩司からの何気ない一言だった。
「この女優さん、何かスーツ姿エロいよなぁ。やっぱAV女優だからかな」
お互いに仕事を終えてゆったりとした夜。私達はソファに並んで、毎週欠かさず観ているドラマに釘付けだった。いわゆる法廷もののドラマで、巨悪を倒すために足元の事件を解決していってその牙城を崩すと言うのが面白く、また毎週ゲストが変わるのも楽しみの一つだった。
今週のゲストは涼森花蓮という人で、グラビアアイドルというかセクシー女優上がりというか、とにかくそうした背景があるからか見るからに色っぽい人だなぁと私もぼんやり思っていた所だった。
「こういう人、好みなの?」
「好みとかじゃないけど、何かそう見えない?」
そこに下心や悪意はなく、この人の事だから純粋にそう思っているのだろう。ただ、それを彼女である私に同意を求めるのもどうかと思うけど。
「どうせこの人みたいに胸おっきくないですよーだ」
「いやいや、俺は美幸の胸が大好きだってば」
すっと胸に手が伸びてきたので、私はあしらうように軽くその手を叩く。
「ちょっともう、今はドラマに集中しようよ」
少しむくれた感じで言ったからか、浩司は素直に従って視線をテレビに戻した。
しかし私はと言えば、先程のやり取りが不思議と頭に残っている。自分自身、色っぽいと考えていたからだろうか。しかし水着姿だろうが何だろうが同性をそういう視点で見た事が無かったため、不思議な感覚が頭から離れないでいた。
スーツ姿が、エロい……?
今までの感じだと、特に何も思わなかった。けれどそれがエッチなものかもしれないという視点で見れば、胸が大きいからかスーツの胸元はパツパツで、ヒップラインも強調されている。きっと撮影用にワンサイズ下のやつなのかもしれないけど、確かに女性的な部分が強調されつつ、はち切れそうなのを無理に抑えつけている感じがいやらしく見えてくる。
あー……浩司が言ってたのはこういう事なのかな。
普段はそれで終わるけど、今日は何故だかその後も彼女が登場する度にそういう視点で見てしまい、変な感じが残ってしまった。彼女自身のセックスアピールが強くて、普通の服装なのにどこかいやらしい。そんな背徳的な感じが余計に際立たせる。
こういう人って、どういうエッチをするんだろう。
他人のセックスなんかほとんど想像したことなんか無かったし、何ならしたくもない。だけどどうしてか、あの何気ない一言が私の心に小さなトゲを刺したのは間違いなかった。
「笠谷せーんせ、何かぼーっとしてるけど考え事でもしてるの?」
二時間目の授業の終わり、私は教科書などをまとめていると教え子の真崎さんからそう声をかけられた。活発で明るい、テニス部に所属している彼女はいつも日に焼けている。
「あ、ううん、何でもないよ」
「真崎の言う通りだよ。先生、何か今日元気無さそうだったよ」
その後ろから声をかけてきたのは中尾さん。大人びた感じが強い、美術部の子だ。別に元気がないわけじゃない。ただ……。
「そうかなぁ。年のせいじゃないの?」
「えー、何言ってるの」
「高校生のあなた達と違って、三十過ぎたらなんとなーく毎日疲れているのよ」
そう、私は高校教師。担当教科は世界史。年配の先生が割と多い中で、三十過ぎても若い部類に入る私は彼女達と近い錯覚すら抱いてしまうが、もちろんそんな事は無い。大人びているという子だって幼く見えるし、何より肌艶がもうかなわない。
そんな彼女達を普段は何も思っていなかったのだが、今日は少し違っていた。昨日浩司と話していた流れで女性に対していやらしい目を向けてしまったのが、今日になってもまだ残っているのだった。
真崎さんのような活発な子、中尾さんのような大人びた子、色んな生徒がいる。発育だって人それぞれだけど、何だか変に意識してしまっているからかそう言う目で見てしまっていた。
この子達の制服の下は一体どれだけの体なのだろうか。若さによって引き締まっていて、肌も私よりしっとり滑らかなのだろう。今の子は脱毛はもちろん美容も私が学生の頃よりずっと気を遣っているだろうから、きっと素敵な身体なのだろう。
真崎さんはテニス部だけあって引き締まっている分、胸も小さめだ。けれど大会でも結構活躍しているらしいから、制服の下は筋肉質な身体なのだろう。
中尾さんは運動が苦手らしいからか、真崎さんに比べてややぽっちゃりしている。でも太っているわけじゃない。だからか胸も大きく、肌も白い。きっと制服の下は白く豊満な身体が若さでまだ締め付けられ、魅惑的な感じかもしれない。
そんないけない妄想へと思いを馳せてしまう。
「何かあったらうちらに相談してよ」
「じゃあ、真崎さんが赤点取らなくなったら相談しようかな」
「それはちょっと……」
くすくすと中尾さんが笑う。私もつられて笑えば、真崎さんが唇を尖らせた。あぁ、そんな風にしたら、キスを誘ってるみたいに見える。いやだ私、おかしくなっちゃったんだろうか。
欲求不満と言うわけではない。浩司との夜も付き合い始めよりは頻度が落ちたものの、週に少なくとも二回はしている。彼から誘う事が多いけど、私からの場合もある。もちろん行為が終われば満たされた気分にもなれる。不満なんかほとんど無い。
だからわからなかった。あんな些細な一言がこうも私の意識を変えるだなんて。
職員室に戻ると私は自分の席に戻り、持参している水筒からジャスミン茶を飲む。爽やかな風味がモヤつく心を少しだけ落ち着かせてくれる。
「笠谷先生、お疲れ? 何か悩みでもあるの?」
「あ、三浦先生」
不意に背後から声をかけられて振り向けば、現国の三浦先生だった。私より二つ上の、素敵な女性だ。見た目はクールで冷たい感じすらあるけど、お人好しと言うか結構私を気にかけてくれている。
「生徒にも言われたんですよね。そう見えます、私?」
「若干ね。いつもの元気が無い感じかな」
ライトグレーのニットセーターを着ている三浦先生の胸はかなり主張しており、今までは何となく大きいなと思っていた。けれど今の私はそれがとてもいやらしく、先生の雰囲気と相まって非常に艶っぽい。男子生徒や男性教員からそう言う目で見られるのも慣れたと以前飲み会でこぼしていたけど、今なら彼らの気持ちがわかる。
「自分じゃそんなつもり無いんですけどねぇ」
「季節の変わり目だから、気分も何となくそんな風になるのかもね。何なら今度、パーッと飲み会でもしましょ。楽しい事をすれば、気分も明るくなるよ」
「そうですね」
にこやかに笑う三浦先生の口元と胸元にどうしても注目してしまいそうになり、私は慌ててうなずきながら視線を切った。大人の色気たっぷりで、魅力的なスタイルの三浦先生を見ているとおかしくなりそうだ。
だって何ならもう、その服の下の裸を想像しかけているから。
私はいわゆるレズビアンやバイセクシャルではない。今までそれを意識した事も無い。確かに中高生くらいの頃は同性の同級生や先輩にほのかな憧れを抱いた事もあったけど、それはきっとみんな通る道だ。私の周りだって、同じような人は結構いた。
もっと当時本気になっていた友達だって、今は二児の母親をしている。実際に女の子同士で付き合っていた子もそれぞれ家庭を持っているから、あんなものは青春の一過性。可愛らしい気の迷いのようなもの。
しかし今になってそうなるとは思わなかった。そしてそれは日に日に強くなる。
街を歩いていてもテレビを観ていても、若い女性を見かける度にこの人はどんな風なエッチをするのだろう、その時にどんな顔をするのだろう、どういう感じ方をするのだろうという妄想が止められなくなってきていた。
そして、それが自分相手だとしたらどんな風になるのだろうか、と。
スマホの広告などに流れるエッチな広告やバナーも以前はただただ不快にしか思わなかった。こんなおっぱいあるわけない、こんな事をして感じるわけがないと。けれど今じゃ、数秒それを見ている自分もいる。特に女性同士が絡み合うアニメの絵柄にすら、目を奪われてしまっているのだ。
やがて私は自然な成り行きで、レズ動画を視聴し始めた。
それはもちろん彼氏と共有のパソコンではない、自分のスマホでだ。最初は彼氏の帰りが遅かった時、何となく一人でいる今のうちにと見てみたのだが、それはもう想像を超えたいやらしさだった。
スタイルの良い女性同士が服を脱ぎ裸になり、互いのおっぱいを触り合い唇を重ねる。うっとりとした、長い時間をかけたキス。男の人のような荒々しさや、とりあえずという感じが無い。じっくりと唇から気持ちを伝え合い、蕩け合うようなキス。
私が驚いたのは愛撫の違いだった。
浩司もそうだし、過去の彼氏もそうだけど私がされてきた男の人の愛撫はどちらかと言えば男性が楽しむ愛撫。私の胸の感触や、アソコをいじった時の反応を見るのが楽しいというのがメインで、言ってしまえば濡れさせて挿入させるための前戯。
けれど動画の女性たちは違った。きっと大多数の男性からすればねっとりとした時間をかけ過ぎの愛撫、けれど私にとってそれは本当にして欲しかった形だったのかもしれない。だってもう、目が離せなかったから。
唇の端から端まで、口内の舌から歯まで味わい尽くすような長いキスの後は互いの耳に触れ、優しく指先での愛撫。そうして一方がそれを口に含み、なぞるように舐め回す。あんなに丁寧で、刺激的で、卑猥な愛撫された事無い。耳を舐める人はいたけど、あっけなかった。でも動画では、耳でイかせようとすらしている。
ビクビクと反応する身体、やがて豊満な胸へと手が滑り落ち、指の間で乳首を挟むようにしながら丁寧に揉む。それに反応する女性はのけぞり、喉の美しさを強調している。耐えるように指を噛むけども、絶え間ない刺激に喘ぎ声を漏らし続ける。それが徐々に絶え間なくなってきた頃、すっとアソコへと指が伸びた。
より一層、喘ぐ声が大きくなる。私はまるで疑似体験をしているかのように没入しているからか、もうアソコが濡れていた。パンツをじわっと湿らすほどに。胸が痛いほど高鳴り、気が付けばジーンズの上からアソコを触っている。そんな事をしても何にもならないとわかっているのに、止められない。乳首も勃起しようとむずむずと主張し始めているのがわかる。
動画の中でアソコに這わせた手がモザイク越しにだけど、欲しいポイントを刺激しているのがわかる。入口を一頻り撫でて焦らしてから手のひらで包み込むように押し潰し、そうして割れ目に沿うように指でこすり上げる。気持ち良さそうな声を上げる彼女に連動し、私の息も荒くなる。
そうして攻めている彼女と同じ手つきで、ジーンズの上から私はアソコを弄る。
直接触らないのは、そうしてしまうとすぐに終わってしまうから。男の人と違って射精したらそれで終わりじゃない女は満足するまで求めようと思えば求められるが、それでも一度果ててしまえば薄らぐ。イッてしまえば敏感になりすぎて、もうやめようかなと思ってしまう。
自分を極限までもどかしい刺激で昂らせ、一番気持ち良くなりたい。
動画の中でアソコを弄られた女優さんが、腰を浮かせて震わせた。演技なのかわからないが、イッたのだろう。けれど彼女の目はまだ淫らなまま。今度は攻めていた彼女を寝かせると、キスをしてから互いのアソコをこすり合わせ始めた。
それはもう、衝撃的だった。
女同士のセックス、それはどうするのかよくわからなかった。だからこそ、こういう風にアソコ同士をこすり合わせ、蕩ける顔で腰を動かす姿がまるで異質で、背徳的で、煽情的だった。相手の足を抱え、擦り合わせながらも愛おしそうにその足を舐める。
どこまでも丁寧で、どこまでもねちっこく、男性には無い卑猥さで果ても底も無い性欲を埋めようともがくその姿に自己投影してしまう。射精と言う終わりの合図が無いセックスは何ていやらしく、こんなにも羨ましいものなのだろうか。
私はもう我慢できなくなり、ジーンズのボタンを外してパンツの中に手を入れた。ありえないほど濡れてぐちゃぐちゃになったそこを擦る度、イッているかのよう。頭の中がチカチカと瞬きながら記憶が飛び、おかしくなってしまいそう。こんなの、男性とのセックスで感じた事無い。
左手でスマホを持ち、右手でひたすら擦り続ける。いつもなら一度イッたら敏感になり過ぎて触られるも触るのも嫌になるけど、今はそんな事すら快楽へと変換されてしまう。ビクビクと身体が跳ね漏れ出る声と愛液に辟易しつつも、誰もいないからと言う言い訳をしながら快楽を求め続ける。
男の人ならもうとっくに終わっているだろう動画も、その女性達はまだ求め合っている。決して満たされない性欲を埋めようとするように。それは一見虚しいのかもしれないけど、それを言うならば人生はいつだって虚しい。満たされたと思っても、次の日には物足りなくなってしまうのだから。
それでも、彼女達は求め続ける。私も、ずっと欲しかった快楽を得続ける。
浩司が悪いわけじゃない。今までの彼氏達だってそれなりにはやってくれていた。不満なんてほとんど無かった。でも、あるにはあった。
だってどんな物事にだって完璧は無い。八十点、いや七十点、物によっては六十点だって許容ラインだ。エッチに満足できなくても、優しくて一緒にいて安心できて将来性もある。それで納得していた。
でも百点を求めているのはワガママだけでは済まされないだろう。口に出せばワガママ、言わなければ願望のまま。もっとこうしてあぁしてと言ったとしても、出せば終わり。二度続けて射精できる人はもっと少ないし、三度四度と求め続けられる人には出会った事が無い。
時間や回数だけじゃない。こうしてじっくり愛撫され、心の中にある心理障壁をみんな粉々に壊して快楽のみに沈んでいく様は見ていて羨ましく、より一層身体が熱くなる。
私も、こんな風にされたい……。
結局自分で二回ほどイッてから後処理を済ませ、部屋の中の匂いとスマホに残った履歴を消すと、ぐったりとソファに横になった。身体の奥にはまだ淫らな炎がくすぶっているけど、浩司が帰ってくる前に日常に戻らないと……。
それから私は人目を忍んでレズ動画やレズ物の漫画を見るようになった。
最初は浩司がいない時を見計らって見ていたりしていたのだが、最近では浩司とのセックスを終えた後、彼が寝たのを見計らってトイレで一人それらを見てオナニーする事が増えた。
彼とのセックスは嫌ではない。自分では届かない快楽を与えてくれるから。けれど最近ではそれを差し引いても、もどかしさが勝っている。
付き合って二年も経てばセックスだってマンネリになってくる。彼の愛撫だって次にこう来るんだろうなとわかっていて、新鮮味が無い。刺激されれば感じたり濡れたりするけど、それは体だけ。心まで満たすようなセックスは最近味わっていない。
おまけに仕事が忙しいからか、最近は少し頻度が減ってきたような気がする。連続でしてくれなくなったし、獣のように求めてくる事は無くなった。元々大人しい性格ではあるから一緒にいて気楽なのだが、最近ではそれが物足りなさを増長している。
このまま付き合い続け、やがて結婚するのだろう。ただ結婚したと言っても別に何が変わるとは思えない。それどころか、子供が出来てしまえば女として見てくれなくなるかもしれない。
自分もたるんだり衰えたりするが、浩司だってそうだ。面と向かってもちろん言った事は無いけど、している最中に元気がなくなってそのまま終わってしまう事もある。これからそう言う事だってもっと増えるだろう。
そうなった時、私はずっと一人で解消しないとならないのだろうか……。
レズ物の動画や漫画で発散しているものの、それだって痛み止めのようなものかもしれない。続けていれば慣れてしまう。私は職場である高校で生徒や色っぽい先生に興奮しないよう発散しているが、最近じゃ逆にそうした妄想を掻き立てられる。
あぁ、あんな風に真崎さんにキスされたらどうなるんだろうか。
囁くように中尾さんに言葉攻めとかされながら胸を揉まれたらどうなるんだろうか。
三浦先生と裸で抱き合ったら、一体どうなってしまうのだろうか……。
こっそりオナニーしている時、最近では気になる人達が画面の中の彼女らと重なる時がある。いけないとわかっていながらも、興奮が抑えられない。興味が妄想を際限なく膨らませ、おかしくなってしまいそうだ。
どうしようかと誰にも相談できず一人思い悩んでいたら、ふとレズ風俗なるものの存在を知った。
男性用の風俗は知っているが、女性用の、しかもレズ専用のなんてあるんだと知らない世界を垣間見た私は好奇心に逆らえず、適当なお店のホームページを見てみる。すると結構しっかりとした料金体系に美人なキャストが複数名いて驚いた。
えー、こんな美人な人もそうなんだ……。
しかしこういうのは元々レズビアンの人達が愛用する物だろうと思って見てみると、どうやら九割がそうでもない人で利用しているとの事だった。女性に興味がある人、男性と付き合っていても新たな刺激を求めたい人、自分がどちらかわからない人でも大丈夫と書かれており、私でもいいのかなと安心する。
しかし、こういうのを利用してしまうのは浮気になるんだろうか。
私は浩司が風俗に行くのはやっぱり嫌だ。別の女の人にゴムありとはいえ入れたものを私に入れないで欲しいし、夢中になられるのも嫌だ。ハッキリとは言っていないし、浩司もそういうのを使おうとするタイプじゃないからそうした問題でケンカになった事は無い。
私はどうだろうか。相手が女の人だから性器を入れられる事は無いし、大前提として同性だ。これが男性と交わる風俗ならさすがに気が引けるけど、女性同士ならまだ大丈夫なんじゃなかろうか。浩司だってよくテレビとかで他の女の人を見て、いいなぁとか言っているし。
体の良い棚上げだと言うのは自覚している。でも、もう知ってしまったからには止めると言う選択肢は私の中に存在しなくなってしまった。
「前に言ったように、今日は他の先生の送別会があるから帰るの遅くなるから」
私は仕事から帰ると浩司にそう言い残し、家を出た。
送別会なんてもちろん嘘だ。でもこうでも言っておかないと、仕事終わりに外出なんて不自然過ぎる。友達と飲みに行くのにシャワー浴びたりなんかしない。でも、職場の人と仕事の後に集まるからと言っておけば、信じるだろうと思っただけ。
当然歯も念入りに磨いたし、口臭ケアもした。爪だって数日前に揃えた。下着だって可愛らしいのを身につけている。浩司相手にだって最近、こんなにはしていない。だって例えはあれだけど、まるで初デートに行くようなものだから。
お店には事前に予約して、指定した駅前で合流する事になっている。電車を乗り継ぎ、待ち合わせ場所にしていていた所に行くと赤いバッグに白のコート、背中までの長い黒髪の女性が立っているのに気付いた。言われていた特徴そのままなので、きっと彼女だろう。
けれど本当にそうなのか彼女の数メートル手前まで来てどうしようかまごついていると、彼女が私に気付いたらしくニコリと笑いながら近づいてきてくれた。
「サナです。美幸さんですか?」
「あ、はい、そうです」
童顔で可愛らしい声に驚いてつい早口になってしまい、思わず恥ずかしくなる。キャスト一覧では二十四歳となっていたが、大きく違いは無いだろう。
「ではさっそく、行きましょうか」
こんな人の多い所であれこれ自己紹介なんかできるわけないと彼女は熟知しているのか、笑顔で少し先にあるホテル街の方へと歩き出す。そんなスマートな装いに私は嬉しさと安心が胸に訪れるのを感じ、若干の余裕が持てた。
綺麗な髪の毛にきめ細かい肌、すらっと細い手足なのに胸が大きい。目も大きく、唇も愛らしい薄さだ。何より隣を歩いていて、良い匂いがする。香水には詳しくないし普段あまり使わないけど、聞けるタイミングがあれば教えてもらおう。
「こういうの、初めてなんですか?」
「え、あぁ、まぁ、そうですね」
人気が少なくなったタイミングで、ふっと彼女が口を開いた。相変わらず可愛らしい声だ。
「緊張しなくても大丈夫ですよ。そういう人、多いですから」
「そうなんですね。それは良かった」
でも私は気が気でなかった。高校教師と言う立場上、ホテル街の近くを同性とはいえ二人で歩いているのを誰かに見られるんじゃないかと。仮に同僚の先生の不倫現場に出くわしたとしても、私の方が分が悪い気がする。
「そうだ、コンビニに寄ります? ほら、ホテルだと色々高いですから」
「あ、あぁ、そうですね。そうですよね」
見た目に似合わずこの手慣れた感じ。私は十歳下の彼女に圧倒されつつ、素直に近くにあったコンビニへ入店する。すると彼女がお酒とか飲みますかと訊いてきたけど、遠慮しておいた。
私はそんなに強い方ではないし、こんなに緊張していて飲んだらきっとすぐに訳がわからなくなってしまう。それに、折角の初体験なのだ。酔っ払ってわけもわからないうちに終わりたくない。
だからサナさんにお酒弱いから私は遠慮しておくけど、飲むならいいよと言えば彼女がやや安堵したような表情になった。
「いや実は私、あまり飲めないんですよ。だからこれでいいですか?」
そう言って彼女が棚から取り出したのはスポーツドリンクだった。私も同じのを選ぶと、それを手にコンビニを出てホテルへと向かう。目的地まではもう二分か三分、けれど私は先程よりも彼女に親近感が生まれていた。
ラブホテルに入ると、私は高めの部屋を選んだ。少しの見栄があったのは否めない。ただそれ以上に、素敵な部屋で素敵な思い出を作りたいと思うのは自然な事だろう。狭いエレベーターに乗って六階に着くと、目的の部屋に入る。
「んー、綺麗。いい部屋をありがとうございます」
入口から短い廊下を抜けた先には行った事が無いけどバリ島をイメージした部屋が広がっていた。アジアンテイストな照明に良くわからないけど素敵な木彫りの壁、そして天蓋のような布が垂れ下がっている。ガラス張りの向こう側には露天風呂のような素敵なお風呂が見え、ベッドもキングサイズ。いたるところに薔薇が散りばめられており、一見しただけで豪勢な感じがする。
「美幸さん、今日は私を指名してくれてありがとうございます」
荷物をソファに置くなり、サナさんが笑顔で挨拶してくれた。私はもう周囲に誰もいない安心感からかやっと少し笑顔になれたが、それでもまだ緊張したまま。それもそうだ、だってここはラブホテルでこれからする事は一つなのだから。
「さっそくですが、コースの確認をさせていただきます。美幸さんが選んだのはおまかせ九十分コースで間違いないですよね」
「はい、そうです」
「道具は今回無しで、キスなど特にNG行為は無い」
「そうですね」
カウンセリングみたいだけど、こういうのをしっかりしておかないとトラブルになるんだろうなぁ。
「美幸さんはタチとネコ、どちらの方に興味があります?」
「えぇと、SかMかと言えばMだとは思うんですけど」
通常のセックスでされるがままというわけではないけど、自分からガンガン攻めるのは今までした事が無いし、出来る気がしない。どちらかと言えば、やや強引にでもされる方が好きだ。
「わかりました、ありがとうございます。それでは早速シャワーを浴びましょうか」
「え、一緒にですか?」
展開の早さに少したじろいでしまう。ムードも無く、そんないきなりだなんて。それに一緒にシャワーだなんて、さすがに恥ずかしい。まだ心の準備が出来ていないから。
「もちろん無理にとは言いません。別々で入る方が好きと言う方もいますし、その辺はおまかせしています」
「えっと、じゃあその、一人で入ってもいいですか?」
「はい、大丈夫です。歯磨きはしっかりとだけお願いします」
一緒に入ればすぐに何かされるのかなと思ったし、何なら家でもう綺麗にしてきたから必要ないかなとも思ったけど、こういうのはマナーだ。私はじゃあと小さく会釈すると、そそくさと浴室の方へ向かった。
軽くシャワーで体を温め、もう一度股間の辺りを洗う。緊張と期待が膨らみ続け、身体が少し反応してしまいそうになるが、その前に浴室を出た。備え付けのバスローブに身を包み部屋へ戻ると、今度は彼女が入れ替わるようにシャワーを浴びに行く。
一人ちょこんとベッドの端に座り、待つ。シャワーの音が響き、やがてそれが止むといよいよなんだと胸がいっぱいになる。誰かと初めてする時はいつもそうだけど、今回は相手が女の人だけにより未知の不安があった。
「お待たせしました。美幸さんに合わせてバスローブを着たんですけど、これ気持ち良いですね。肌触り滑らかー」
そう言いながらバスローブ姿の彼女が私の横にちょこんと座る。可愛らしくとても綺麗で、これからこの人とするんだと思うとドキドキが止まらない。
「今日はたっぷり楽しみましょうね。緊張していると思いますけど、私に任せてくれればいいので」
「お願いします」
そうして見詰め合うと、すうっと彼女は顔を寄せてきた。
いい匂いがすると思うが早いか、彼女の柔らかい唇が私の唇に触れた。初めてした女の人とのキス。それは思っていたよりも柔らかく、優しい。軽く触れては離れて、また触れるだけのキスは男の人にはできない丁寧さがあり、でもじんわりと心がほだされていくような不思議な心地良さがある。
そっとサナさんが私の手を握った。少し驚いたけど、すぐに唇の方へ意識が引き寄せられる。キスはゆっくりと接触時間を長くし、私の上唇を彼女が唇で挟み込む。もどかしいような、でも愛しくいやらしい気分。
浩司や他の男の人とのキスならば、もっとこうガツガツと攻めてくる。そういうのも嫌いじゃないけど、でも初めて味わう優しいキスに心が溶けていくのを感じてしまう。
やがてサナさんの舌が私の唇を撫でる。チロチロと探るような舌使いはゆっくりと私の唇を開き、ごく自然に私の口内へと侵入してくる。私も自然とそれを迎え入れ、舌を伸ばして絡めようとすると、サナさんが積極的に絡めてくれた。
多分、私が今までしたセックスにおいて一番長いキスかもしれない。緊張は興奮へと徐々に変換され、鼻から漏れる息が荒くなる。唇や口の中が性感帯に変わり、サナさんの舌が私の舌を刺激する度に身体が熱くなる。
「んっ」
不意に私の右耳に触れたサナさんの手に驚き、声が漏れた。恥ずかしさで一瞬我に返りそうになったが、流れるように優しく耳の際を愛撫される。
「ん、ふぅ」
今度は驚きではなく、くすぐったさにも似た気持ち良さだった。ゾワゾワとした感覚がキスの刺激と相まって、快楽へと変わる。優しく触れるか触れないか程度の愛撫はもどかしく、男の人とは違ったアプローチに声が漏れた。体がより熱くなってくる。
「美幸さん、綺麗。初めて会った時からそう思っていましたよ」
唇を離すと、そう耳元で呟いてきた。最近、そんな風に褒められた事なんか無い。浩司にだって。だから失いかけていた自信が刺激され、胸が熱くなる。が、すぐにその口は私の首筋に移った。つうっと舌先で首筋を舐められる度にゾクゾクとした刺激が襲う。
「私も、ずっとサナさん綺麗だって思ってて……あんっ」
舌先がやがて鎖骨に到達すると、その周辺を丁寧に舐められた。性感帯というわけではないけど、今はもう何だか全身性感帯のようで触られる場所が気持ち良い。
「触られたくて、すごい敏感そうになっている」
「んぅ……はぁん」
すっと私の胸に手が伸びてきた。その刺激に声と息が漏れる。自分で見なくともわかるくらい、もう乳首が勃起している。けれどサナさんはあえてなのかそこには触らない。ゆっくりとそんなに大きくない私のおっぱいを揉み、指先で乳輪を触るだけ。肝心の敏感な部分を触って欲しいのに、してくれない。
「ん……ふぅん……」
気持ち良いけど、もどかしい。すっかり脳は蕩けていて、もう女同士だとか倫理に反しているだとか、浮気かもしれないだとか、そんな事は彼方に置き去りにしていた。今はもうただ、未知の刺激を欲しいだけ。早く敏感な場所を弄って欲しい。
「これで満足できるの?」
私はふるふると首を横に振る。欲しい、乳首への刺激が欲しい。だってもう、そこは刺激されたくて目一杯に勃起させているのだから。空気の刺激すら、感じてしまうほどに。
「じゃあ、どこを触って欲しいのか言って」
「乳首、乳首触って。強くていいから」
「やらしい」
そう言うと、サナさんは揉んでいる指の間に乳首を挟み込み、器用に擦り合わせながら胸を揉む。私はやっと訪れた電撃のような刺激に頭が真っ白になり、体をガクガクと震わせる。でも、まだイッてはいない。もう少し、足りない。
ぐいっと押し倒され、私が下になる。バスローブを脱がされ、全裸になった私はもう無力だ。上になったサナさんもバスローブを脱ぎ捨て全裸になる。その童顔に不釣り合いなほど大きなおっぱいにやや黒ずんだ乳首、そして下に目を向ければ控え目な陰毛。二十代前半だけあってそれは綺麗な身体だった。
「美幸さん、綺麗。私、こういう身体一番好き」
それは一体どういう事だろうかと思った瞬間だった。
「んぅ、やぁ」
突然サナさんが私の右乳首を口に含んだ。そうして舌先で弾き、舐め転がし、吸い、押し付け、甘噛みする。多種多様な刺激に私はもう軽くイきそうになり、腰を跳ね上げた。もうアソコが熱い、きっとすごく濡れている。
「まだイかないで下さいね。もう少し我慢して下さいね」
うなずきながらも、いつまで我慢できるかわからなかった。だってもう強い刺激があればイッてしまいそうだし、アソコもピクピクと震えているのがわかる。エッチな汁だって溢れているのがわかる。
「でももう、駄目。そんなにしたらイッちゃう、イッちゃうからぁ」
「じゃあ一回イきますか」
キュッと強めにサナさんが私の乳首を噛んた途端、目の前が明滅した。
真っ白な意識の中で私の身体がビクンビクンと震え、脱力してベッドに沈み込む。私は酸素を求める一介の魚のように口をパクパクさせ、やがてすうっと現実が私に染み入る。
アソコに触れられず胸だけでイッたのなんて、初めて……。
甘く痺れた快楽はなおも収まるどころか、刺激を欲して止まない私のアソコからジンジンと痛いくらいに求めている。トロトロと溢れ出す愛液がシーツを濡らし、恥ずかしさと切なさが狂おしいほど私の中で暴れているが、イッてしまった脱力感からかまだ身体が上手く動かせない。
「もぉ、我慢しなきゃ。イきやすいんですねー、素敵ですよ」
小悪魔のように私を見下ろして笑うと、サナさんが私の上に身体を重ねてきた。唇をねとりと舐めるその舌はいやらしく、同時に私の乳首と彼女の乳首が触れ合っている。私のはもう硬くなっているが、彼女のはまだそこまででもなさそうだった。
「乳首擦れて、それいやらしい」
「男の人とはできませんからね。これが女の身体ですよ」
学生時代でもふざけて友達の胸を揉むとか、そういうのはしてこなかった。たまにぶつかったとしても、ブラジャーの硬さが先にあって直の柔らかさを感じた事なんかなかっただけに、サナさんの大きなおっぱいが私の胸を潰す。
柔らかい弾力の中で、時折コリコリと硬いものが触れる。サナさんのも徐々に固くなってきているのがわかると、何故だかぐっと興奮した。恋にも似た胸の高鳴り。男の人にされている時は一方的にしているかされているばかりだけど、女の人となら一緒に気持ち良くなれる。
「あら美幸さん、自分からも動いて。気に入りました?」
「はい、サナさんの気持ち良くて」
うっとりと潤んだ目で見詰めたその瞳は奥で笑っているように見えた。
「じゃあ、もっともーっと気持ち良くさせてあげますね」
すうっとサナさんの身体が下に滑り落ちていく。唇から首筋、胸元、乳首、おへその周りと下がっていくにつれ私はもしかしてという期待と若干の恐怖で頭がいっぱいになる。けれどアソコはきっと淫らに蠢いていて、今か今かと待ち望んでいるだろう。
「あ、待って」
思わず口に出したのとサナさんが私のアソコを舐めたのはほぼ同時だった。ねろりとした舌使いが私のアソコを一舐めすると、びくんと腰が跳ね上がった。
クンニされるのは初めてじゃない。ただ、女の人にされるのはもちろん初めてだったし、何ならこんなに濡れてどうしようもなくなっている時に舐められるのは初めてかもしれない。
「あぅん」
思わず声が漏れたが、それがサナさんのスイッチを入れたみたいだった。奥からとめどなく溢れる愛液を舌ですくい上げ、アソコのヒダを細かく丁寧に舐めていく。クリの回りだって優しく、時に舌先でつつくように。その度に、淫らな声が途切れ途切れの高音で漏れてしまう。
「いやっ、あっ、あぁん」
それは今までされたどんなクンニよりも丁寧で、いやらしかった。男の人なら勢い任せでベロベロと舐め、クリばかり刺激しようとする。でもサナさんは違う。女同士だからか、私の弱い所、気持ち良くなる所を余すとこなく舐めあげる。
「あっ、やだ、吸わないで。やらしいよぉ」
そうかと思えばジュルジュルと下品な音をわざと立てて唾液と愛液をすする。その際、もう顔を見せているクリも吸うから、アソコから脳天へと白い稲妻のような衝撃が響く。自分の身体が自分じゃないように悶え、喘ぎ、快楽に溺れていく。
「まって、またイくから、もうイッちゃうからぁ」
「だーめ。我慢して、お姉さんなんだから」
クリを舐められるほどに強い刺激が駆け巡り、周辺を舐められるほどに弱く深い刺激が私に染み込んでいく。勢いこそ少し弱まったものの、もうすっかり昂っている私の身体はイくのを我慢できそうにない。
「やだ、駄目。イく、イくから、もう無理」
「だめですよー。もう少し我慢して下さいねー」
わざとらしい棒読みが意地悪さを増す。そんな事を言われても、もう無理だ。私は歯を食い縛り、シーツを握って下半身に力を入れてサナさんの言いつけを守ろうとするけど、もう今にもイきそうだ。
「もう無理、駄目ぇ、イく、イっちゃうの」
「もー、我慢できないんだから。ほら、これでどう?」
「イッぐぅ……はぅ……んぅ……あぁ……」
サナさんの中指が私の中に入り、入口の上付近をくいっと撫であげた途端、怒涛の快楽が真っ白い光となって私を包む。求めていた最後の一押しに私は声も出せず、ただ体をガクガクと震わせて腰をぐいっと突き上げ固まってしまう。
ヤバい、死んじゃう……。
指しか挿入されていないのに、しかも軽く入れられただけなのにこんなに凄いイき方、初めて。今までのどんなセックスよりも気持ち良いし、最近の欲求不満が全部吹き飛ぶくらい気持ち良い。
あぁ……でも、どうして……また求めちゃう。
潮とまでいかないけど、愛液を吹き出してベッドに沈み込んだ私はぐったりと動けないけど、決して消える事の無い性欲の炎を感じていた。種火のようになってしまったそれはすぐ、大きくなっていく。
「すっごく派手にイッたねー。嬉しい、私でこんなに気持ち良くなってくれて」
あぁ、私もしたい。サナさんをもっと触れたい、味わいたい。
「……あの、お願いがあるんですけど、サナさんのアソコを触ってみたいです」
「いいですよー。じゃあ、一緒にしましょうか」
そう言うなり私の頭をまたぐようにしてサナさんが上になる。いわゆるシックスナインの形になると、サナさんのアソコがハッキリと見えた。
これが……女の人のアソコ……グロくてぬめっていやらしくて……素敵。
初めて生でしっかり見た女性のアソコ。もちろん自分のは知っているけど、それだって人によって変わるし、他人の割れ目の先なんか見る事なんか無いから初体験だ。サナさんのそこはもう結構濡れていて、割れ目の奥から玉のような愛液が出そうになっている。私に比べてビラビラが少し大きくて、クリが小さめかもしれない。
「サナさんの、綺麗」
「そうかなぁ。美幸さんのが綺麗ですよ。それに、いやらしい」
ふうっと息を吹きかけられると、ビクリと反応してしまう。まるで性欲の炎にふいごで風を送られたみたいに、私の中で渦巻く快楽の炎が燃え上がる。だから私も負けじとされるがままにならず、彼女のアソコを中指でそっと触れる。
「んっ」
短い声が漏れた。私はそれが単なる反応だなんて冷めた事を思わず、私で気持ち良くなってくれたんだと思うと嬉しくなって、なおも擦り続けた。サナさんから漏れ出る愛液を指先に塗り、潤滑油にする。糸引くような愛液と共にいやらしい匂いがふわりと感じると、私はまるで童貞のように刺激し続ける。
「やだぁ、美幸さん上手。気持ち良くなっちゃう」
そうは言ってもサナさんの方が圧倒的に上手で、私は自分以外のを触ったことが無いのでどうしてもおそるおそるになって、ぎこちない。サナさんも私に合わせているようで、ゆっくりと丁寧な愛撫を続けている。
それにしても、少し指で弄るだけで奥から愛液が溢れるし、指を入れれば締め付けられる。温かくいやらしく、何もかもが興奮する。そしてこんなぎこちない愛撫ですら感じてくれているのか、むわっとした女の匂いが漂う。
……舐めたら、どんな感じなんだろうか。
私がぐっと顔を起こして彼女のお尻をつかむと、一気に割れ目へと舌を伸ばした。
「美幸さん舐めてくれるんですか。じゃあ、私もまたしようかな」
変な味だった。苦くも甘くも無く、汗なのかこれが愛液の味なのか少ししょっぱいような不思議な感じ。男の人とはまた違う、磯のような生々しさ。でもそこまで不快じゃない。鼻にかかる陰毛が少しくすぐったいけど、そっと広げて私は夢中で舐める。
「やだ、サナさん。そんなにされたら、また気持ち良くなっちゃう」
刺激されたからか、サナさんにスイッチが入ったかのように舌使いが激しくなる。気持ち良くてヒクヒク動く私のアソコに少し意識を集中し、どんな風に動かしているのか自分も真似る。
「やだぁ、美幸さんほんとに初めてなの?」
軽口を叩くも、サナさんのアソコは私の唾液と合わさってべちゃべちゃだ。何なら私の唾液の匂いも強くなってきていて、我ながらどれだけ一生懸命しているのかと心の中で苦笑してしまうが、気持ち良くなってくれるのはやっぱり嬉しい。
おまかせコースなので何もしなくてもいいのかもしれないけど、こうしてサナさんとのセックスを通じて私も色々してみたいと思うようになってきた。それは多分、同じ女体だからこその加減がわかるから。そして、そこから愛おしさすら生まれつつある。
「ねぇ、これも気持ち良いけど、顔みながらしない?」
すっと彼女が顔を離すと、体勢を変えて私の足元に座った。そして起きるよう促されたので、私も起き上がって向かい合うように座る。
「キスしながら、いじり合いましょ」
そう言ってにじり寄ると、私とほとんどくっつくような距離となった。そうしてすっとサナさんの顔が近付く。まつ毛の長い、可愛らしい目。そんな素敵な目が閉じたかと思うと、吸い込まれるようにキスをしてきた。
キスをしながらおっぱいがくっつき、乳首が当たる。サナさんの左手が私の背に回り、右手がもうすっかり濡れてイきたそうにしているアソコに差し込まれる。そうして指がアソコをかき回すと、お尻が浮き上がってしまうような快楽に襲われる。
「ねぇ、私にもして」
キスの合間に漏れるサナさんの声がとても愛おしく、いやらしかった。私は負けじと舌を絡ませ、同じように彼女のアソコに中指を入れた。もうすっかり濡れているので指一本くらいなんなく入った。
けれどやっぱり中はそれでもきゅうっと締めてきて、蠢いているかのよう。自分でしている時に気持ち良い場所をサナさんのでも試すと、喘ぎ声が漏れる。よりアソコがキュッキュと締まり、楽しくなってくる。
「美幸さん、気持ち良い。すごく素敵。だから私もいーっぱいしてあげる」
息荒くそう告げると、二本目の指が入って来た。男性がするのとは違ってただ乱暴に出し入れするばかりじゃなく、中で色んな所を探り、擦り、圧迫する。そうした色んな刺激が身体中に広がり、イきそうなのか漏らしてしまいそうなのかわからなくなる。
「サナさん待って、漏らすかも。ちょっとトイレに」
「大丈夫ですよー。もしそうなったとしても可愛いから」
更に指の速度が上がる。私はもうお尻までゾワゾワしたようなむず痒い快楽に襲われ、力を入れて我慢する事すらままならない。
「やだやだ、駄目。ちょっと待って、本当にもう」
「いいよ、イって。私もきっとその顔見たら、イくから」
「だめぇ、やだ、イく、イッちゃうからぁ、もう我慢できないからぁ」
ぐちゅぐちゅと激しい水音が響く。もうすっかり私のアソコはドロドロで、今にもイッてしまいそう。でももしかしたら漏らすかもと思えば、そんな事はさすがにできないと必死に歯を食い縛って耐える。
「ほらほらー、我慢しないでいいですからねー」
「うううううぅ、ぐううぅ、もう、もう……」
我慢、できない。
私はもう目前まで迫った爆発してしまいそうな絶頂を感じつつも、最後の抵抗とばかりにサナさんのアソコをぐっと手のひらで包んだ。その時、彼女の勃起していたクリトリスが擦れたのを確かに感じた。
「あっ、だめ、それ駄目ぇ」
ビクリと彼女が跳ねた。その際の不意な刺激で、私の我慢は一気に突き崩される。
「あ、ああああぁ、あぅイッくうううううぅ」
バチンと凄まじい快楽の電流がアソコから脳天を貫くように流れ、全身を震わせる。ビクビク、ガクガクと身体を大きく震わせ、漏れ出たのは大量の愛液なのか少量のおしっこなのかわからない。
ただもう、気持ち良すぎて何も考えられなかった……。
それから二人、しばらくぐったりとベッドに横たわり、他愛も無いお喋りをした後でシャワーを浴び、時間になると彼女にお金を払って別れた。サナさんは慣れているのか来た時と変わらない感じだったけど、私はもうこんなに感じたセックスは初めてだったから別れる時もまだ足元がおぼつかなかった。
「美幸さん、すっごく良かった。いやらしくて可愛くて、最高の人でした。もしまたうちのお店を利用される事があれば、ご指名お願いしますね」
社交辞令だとわかっている。でも、その言葉が自信になった。
マンネリのセックスを繰り返していた私はもう女としての価値を失いつつあるのかと思ったけど、まだまだ大丈夫なんだ。それに男の人を相手にするより、気持ち良かったかもしれない。
だってあんなに思いやりがあって卑猥で感じるポイントやタイミング、男の人じゃ無理だろうから。
あぁ、これから私、浩司とのセックスに満足できるんだろうか。いや、むしろ浩司とできるのだろうか……。
別れて家路につく時に、ふとそんな事を思いながら見上げた夜空は真っ暗だった。
「笠谷先生、何か良い事でもあったんですか?」
終業のホームルームを終えて職員室に戻り一息ついていると、三浦先生に声をかけられた。今日はブラウスだけど、相変わらず大きな胸が主張している。
「え、いやまぁ、ちょっとだけ」
「えー、何ですか? 私にもお裾分けしてくださいよ」
クールな見た目に反し、甘えたようにそう言ってくるのは同性の私だからだろう。さすがに男性の先生相手にこうした言い回しは見た事が無い。
だからこそ……。
「えー、じゃあ特別に三浦先生にだけ教えちゃいますけど、ここでは何ですから今晩ちょっとどうです?」
「いいですね。是非お付き合いしますよ」
無邪気に笑う三浦先生はさて、どこまで付き合ってくれるのだろうか。
私はじわりと下着が濡れるのを感じつつあった。
踏み入れし女同士の快楽沼 砂山 海 @umi_sunayama
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