消去法からの契約婚
香枝ゆき
第1話 プロローグ ありきたりな厄介払い
「おまえには家を出てもらう」
和室に通された私に、父は無情に言葉を投げかけた。
「……それは、全寮制の学校に通う、という意味でしょうか」
「違う」
父は一蹴する。部屋には双子の姉が私の方を見て、これみよがしにため息をつく。
「お父様は、あんたの将来を考えたのよ」
状況が、よく飲み込めない。
確かに私は、両親からは将来を心配されている。
学校には人間関係のつまづきが原因でほとんど通えていない状態だ。高校には籍があるものの、ほとんど出席ができていない。
だから環境を変えるために全寮制の学校へ放り込まれると考えたのだけれど、違った。
それに、家族が一堂に会するなんて、事情がわからない。私の将来のことを話すのならば、一対一でいいはずなのに。
「どういうこと?
「お姉さまをつけなさいよ、あと敬語」
「――どういうことですか、飛鶴お姉さま」
全く顔が似ていない姉は、ふふふと笑った。
「縁談、決まったんですって」
私は父を見る。
一切の否定をしなかった。
隅のほうに控える母を見る。
なんのとりなしもしなかった。
「でもいいんじゃない?永久就職ってことで。まともに仕事もできないでしょ?」
ぐっとこらえて、私は父だけを見る。
「ですが、私はまだ結婚ができる年ではありません」
「先方は承知している」
温度のない声だ。
「十八になるまで先方の家で暮らせ。法律はさすがに曲げられん。婚姻届が出せるようになったら入籍だ。里帰りも不要。先方に粗相のないように」
話は終わりというように、父は立ち上がる。
「待ってください!学校は……」
「先方がよきにはからってくださる。明日には家を出ていくように」
部屋から父が去った。
母もため息をつき、その後を追う。
あとには私と、飛鶴が残された。
どんな相手か知らないのに、いきなり嫁ぐことを命じられるなんて。
「あーあ、かわいそう。でも捨てられないように頑張ってね?」
面白がるように、双子の片割れは出ていった。
あとには私だけが残された。
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