第9話 二千年以上の時(カーラ)を越えて

1.玄黓の解読 ― クライマックス

残った謎はただひとつ、『爾雅』の 「玄黓」。


『爾雅』の並びではこうなっている:


上章=ダンタ

重光=子音連結サンヨガの意訳

玄黓 = ɢen lek

昭陽 = tl̥


『史記』の順序と異なり、ここでは 上章 → 重光 → 玄黓 が連続して並んでいる。

まるで「ダンタ音の子音連結サンヨガの玄黓、tl̥」と繋がっているかのようだ。

つまり「玄黓」とは「L音ガンガー担うものダラ

・・・私は慄然とした。


2.玄黓の意味するもの

ガンジス川ガンガー担う者ダラ

・「玄黓」=「玄(黒い)」「黒(さらに黒い)」「弋(戟)」

・そして作者は、おそらく前作の解読結果である『シヴァ真言マントラ』の制作者と同一人物


それが示すものとは――


「大いなる黒」= Mahākāla(マハーカーラ)、すなわち大黒天であり・・・ガンジス川ガンガー担う者ダラとして知られるシヴァ!

「玄黓」とはシヴァ神そのものであった!

もしかすると「黓」ですら「三叉戟」を持つシヴァ神のために創られた字なのかもしれない。



3.顕現


「気付きおったか、人の子よ。」


振り返ると、そこに黒き神が顕現していた。


おののきながらも私は叫んだ。

「二千年以上の間、われわれは『みずのえ』の『玄黓』を、水=黒の五行に従い、ただ『玄+黒』の意としか理解できませんでした。

けれど本当は――これは音の表と偶然重なったものであり、実際には『大いなる黒』とはいえ、西方の神の御名を写していたなんて……」


北東の神イーシャーナディクに対して西方の神とは!

それに二千年だと?我にとっては一瞬にすぎん。」


そう笑いながら告げて、その方は消えた。


ああ、そうだ。

あのお方の名は――


大いなる時間マハーカーラ」 Mahākāla

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