第3話 たとえ、完璧じゃなくても
放課後の教室。窓の外では、運動部の人たちの掛け声が響いている。
しかし教室の片隅では、あかねが一人机に向かい、真剣な表情でノートを開いていた。
「委員会の資料に、宿題に……」
そして、その資料や宿題の下には小さな原稿用紙があった。
その原稿用紙には、彼女の趣味でもある小説の断片が綴られていた。
――世界の終わりに、一人だけ残された少女は、誰かをずっと待ち続けていた
ほんの数行を書いたところで、あかねは鉛筆を止めて溜め息をつく。
「……ダメだな、また中途半端だ……」
完璧にやりたい。
でも全部を抱え込んで、気づけば疲れ果ててしまう。
その夜、ベッドで途中まで書いた小説の原稿用紙を抱えたまま眠り込んでしまった。
翌日。
「昨日、あかね学校に来なかったね。具合でも悪かったのかな…?大丈夫かな……?」
ひよりたちは心配そうに話していた。
そして、あかねの家を訪れる。
出迎えた彼女は、熱のせいで顔が赤くなっていた。
「……ごめん、またみんなに迷惑をかけちゃった…!」
とあかねの弱々しい声。
「……全然、迷惑なんかじゃないよ!たぶん、あかねが一人でいろいろ抱え込んで、無理をしちゃったから、疲れが溜まっていたんだよ、きっと!」
ひよりは即座に否定した。
「あかねが一人で頑張るのもいい。だけど、たまには私たちのことも頼ってよね!だって、一人じゃない。みんながいるんだから!」
すずかは果物を差し出し、カレンは笑顔で言う。
「それにさ、あかねの書きかけの小説、ちょっとだけ見ちゃった。結構面白かったよ?」
「ちょ、カレン……!」
顔を真っ赤にするあかね。
だが、あかねの心の奥では、不思議と温かさが広がっていた。
「……みんな、ありがとう」
窓の外では、夏の夕暮れが街を包み込んでいく。
たとえ、完璧じゃなくても、支えてくれる仲間がいる。だから一人じゃない。
そんなことが、あかねにとって何よりの力になっていた。
(あかねが作った小説の断片)
――少女はふと気づいた。
彼女は一人じゃない。
誰かが、手を差し伸べてくれていたのだ。
あかねのノートに綴られた言葉は、まるで今の自分(あかね)自身の心を映しているようだった。
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