【第1章完結】TS魔法少女になった最強ヤンキー高校生、怪人退治で東京無双 〜鋼鉄の拳×魔法少女=チート確定。喧嘩無敗の俺が銀髪美少女に、それでも戦いはやめられない〜

松田裕介

第1章 はじまりの“最強”魔法少女編

第1話 夕暮れの挑戦者──VS不良15人

 夕日が校舎の向こうに沈みかけている頃、山本勇気は一人、校門を出ようとしていた。身長185センチの筋骨隆々とした体躯に、鋭い眼光を宿した瞳。制服のブレザーは彼の発達した胸筋と肩幅によってパンパンに張り詰めている。歩くたびに地面が微かに震えるような重厚な足音を響かせながら、彼は今日もまた一日を終えようとしていた。


「や、山本さん」


 振り返ると、そこには見慣れた顔があった。同じクラスの田中だ。眼鏡をかけた小柄な少年で、いつも勇気に憧れの眼差しを向けている。


「何だ、田中。今日も俺についてくるつもりか?」


 勇気の口調は粗暴だが、田中に対する敵意はない。むしろ、この小さな男に対して妙な親近感を抱いていた。


「い、いえ!そんなつもりじゃ……ただ、今日は気をつけた方がいいかもしれません」


 田中は震え声で言った。


「朝から、黒豹会の連中が山本さんのことを話してるのを聞いたんです」


 黒豹会。この地域で最も凶悪とされる不良グループの名前を聞いて、勇気の口元がわずかに上がった。


「ほう、黒豹会がねぇ……」


勇気は首をゴキゴキと鳴らした。


「面白ぇじゃねぇか。俺もあいつらと決着つけたいと思ってたところだ」

「でも、山本さん!あいつら武器を持ってるって噂が……」

「武器?」


勇気は大きく笑った。


「ハハハ!そんなもんで俺が倒せると思ってんのか?甘ぇよ、甘すぎる」


 そう言いながら、勇気は拳を握りしめた。その瞬間、空気がピシリと張り詰めたような音がした。彼の握力は常人の比ではない。握った拳からは、まるで鋼鉄がきしむような音が漏れていた。


「田中、お前は先に帰れ。今日は俺一人で十分だ」

「で、でも……」

「心配すんな」


勇気は田中の肩に手を置いた。


「俺が負けるわけねぇだろ」


 その自信に満ちた表情を見て、田中は頷くしかなかった。彼は知っている。山本勇気がこれまで負けたことがないことを。どんな相手であろうと、どんな困難であろうと、必ず乗り越えてきたことを。

 田中が去った後、勇気は一人で商店街の方へ向かった。この時間になると、人通りもまばらになる。彼の足音だけが静寂を破っていた。

 そして、それは突然始まった。


「山本勇気!」


 声が響いた瞬間、勇気は振り返る間もなく、背後から鉄パイプが振り下ろされた。しかし、その鉄パイプは勇気の後頭部に当たった瞬間、まるで岩にでも当たったかのような鈍い音を立てて止まった。


「……え?」


 襲撃者の男は困惑した。確実に当たったはずなのに、山本勇気はピクリとも動かない。それどころか、ゆっくりと振り返り、冷たい眼差しでこちらを見据えている。


「おい、今のが黒豹会の挨拶か?」


勇気の声は低く、威圧的だった。


「随分と礼儀がなってねぇな」

「う、うわあああ!」


 男は再び鉄パイプを振り回したが、今度は勇気がそれを右手で受け止めた。金属の棒が彼の掌に当たった瞬間、パイプの方が歪んだ。


「なっ……!」

「俺の番だ」


 勇気は鉄パイプを握りしめた。すると、まるで紙を丸めるかのように、パイプがぐしゃりと潰れていく。男は恐怖で声も出せずにいた。


「ひ、ひいい……」


 その時、四方八方から黒豹会のメンバーたちが現れた。総勢15人。全員が何らかの武器を手にしている。バット、チェーン、ナイフ、そして中には鋼管まで持った者もいた。


「山本勇気!今日こそお前の時代を終わらせてやる!」


 リーダーらしき男が叫んだ。彼だけは離れた場所にいて、高級車のボンネットに腰を掛けている。明らかに指揮官として戦いを見物するつもりだった。


「15対1か……」


勇気は周囲を見回した。


「少し物足りねぇが、まぁいいか」

「なめるな!全員で一気にかかれ!」


 リーダーの号令と共に、15人の男たちが一斉に勇気に襲いかかった。バットが頭上から、チェーンが横から、ナイフが腹部を狙って飛んでくる。

 しかし、勇気は微動だにしなかった。

 バットが彼の頭に当たる。しかし、バットの方が折れた。チェーンが彼の胸を打つ。しかし、チェーンがちぎれた。ナイフが彼の腹部を刺す。しかし、刃が曲がった。


「な、何だこいつ……人間じゃねぇ!」


 男たちは恐怖に震えていた。どんな武器を使っても、山本勇気には傷一つつけることができない。それどころか、武器の方が次々と破壊されていく。


「俺の番だな」


 勇気はゆっくりと右足を上げた。そして、地面を踏み鳴らした。

 ドンッ!

 その一瞬で、半径5メートルの地面にひびが入った。男たちはバランスを崩し、次々と倒れていく。


「こ、こんなことができる人間がいるのか……」


 勇気は不敵に笑った。


「俺が人間かどうかなんて、どうでもいいだろ。大事なのは、お前らが俺に勝負を挑んだってことだ」


 勇気は最も近くにいた男の胸ぐらを掴んだ。そして、片手で軽々と持ち上げる。男の体重は70キロはあったが、勇気にとっては羽毛のように軽い。


「うわあああ!」


 勇気は男を軽く投げ飛ばした。男は10メートル先の電柱に激突し、そのまま気絶した。


「次」


 勇気の声に、残りの男たちは戦慄した。しかし、逃げることはできない。山本勇気から逃げた者は、この街では生きていけないからだ。

 二人目の男がチェーンを振り回しながら突進してきた。勇気はそのチェーンを素手で掴むと、逆に男を引き寄せた。そして、軽く拳を男の腹部に当てる。


「ぐはっ!」


 男は白目を剥いて倒れた。勇気の拳圧だけで、内臓にダメージを与えられたのだ。


「弱ぇな、お前ら」


勇気は首を振った。


「こんなんで俺に勝てると思ってたのか?」


 三人目、四人目と、男たちは次々と勇気の前に倒れていく。バットで殴られても、ナイフで刺されても、勇気は全く動じない。それどころか、攻撃を受けるたびに、彼の筋肉はより一層盛り上がっているように見えた。


「化け物だ……こいつは化け物だ!」


 一人の男が叫んだが、勇気の表情は変わらない。彼にとって、これは日常の一部に過ぎないのだ。


「化け物?」


勇気は男の前に歩み寄った。


「化け物だの人間じゃないだの好き勝手言いやがって。俺はただの高校生だぜ」


 そう言って、勇気は男の持っていた鋼管を素手で掴んだ。そして、ゆっくりと握りしめる。金属が軋む音が響き、やがて鋼管は粉々に砕けた。


「ただし、ちょっと力が強いだけだ」


 15人の男たちのうち、まだ立っているのは5人だけだった。残りは全員、勇気の圧倒的な力の前に屈していた。しかし、勇気自身には傷一つついていない。制服も、髪型も、最初とまったく変わっていない。


「おい、リーダー」


勇気は車に座ったままの男を見上げた。


「いつまでそこで見てるつもりだ?」


 リーダーの男は冷や汗を流していた。部下たちが次々と倒されていく様子を見て、山本勇気という男の恐ろしさを改めて思い知らされていた。


「く、くそ……まだだ!まだ終わりじゃない!」


 リーダーは車から降りると、トランクから何かを取り出した。それは金属バットではなく、鉄の棒に鋭利な刃物を取り付けた即席の槍だった。


「これでどうだ!」


 リーダーは槍を構えて勇気に向かってきた。その切っ先は確実に勇気の心臓を狙っている。

 しかし、勇気は動かなかった。槍の刃が彼の胸に突き刺さる。


「やったか!?」


 だが、次の瞬間、リーダーの顔は恐怖で歪んだ。槍の刃は勇気の胸筋で止まっていたのだ。皮膚さえ破れていない。


「あのな」


勇気は槍を掴んだ。


「人を刺すときは、もっと気合を入れろよ」


 そう言って、勇気は槍をへし折った。金属の棒が、まるで割り箸のように真っ二つになる。


「ひ、ひいい……」

「今度は俺の番だ」


 勇気はリーダーの襟首を掴んだ。そして、片手で持ち上げる。リーダーは宙に浮いた状態で、もがくことしかできない。


「お、お願いします……許してください……」

「許す?」


勇気は首を傾げた。


「お前らが俺に許しを請うのか?面白ぇな」


 勇気はリーダーを軽く投げ飛ばした。男は地面に転がり、必死に起き上がろうとする。


「でもな」


勇気は男に歩み寄った。


「俺に勝負を挑んだ以上、最後まで付き合ってもらうぜ」


 その時、リーダーは最後の切り札を出した。ポケットから小さなリモコンのようなものを取り出す。


「ち、近づくんじゃねえ!これを押せば、俺の身体に仕掛けた爆弾が……」


 しかし、その言葉が終わる前に、勇気の拳がリモコンを粉砕していた。リーダーの手ごと、リモコンが跡形もなく砕け散った。


「うわああああ!手が、手がああ!」

「嘘つくんじゃねぇよ」


勇気の声は氷のように冷たかった。


「部下に喧嘩やらせて踏ん反り返っているお前に、そんな度胸あるわけねぇだろ」


 勇気は正しかった。リーダーは最後の虚勢を張っただけで、実際には何の仕掛けもしていなかった。


「さて」


勇気は車を見上げた。


「最後にこいつを片付けるか」


 車は高級なセダンで、重量は2トンはある。しかし、勇気にとってそれは問題ではなかった。

 勇気は車の前に立つと、両手をボンネットの下に入れた。そして、ゆっくりと持ち上げ始める。


「な、何を……」


 車が浮いた。2トンの鉄の塊が、一人の高校生によって地面から持ち上げられた。勇気の筋肉が盛り上がり、血管が浮き出る。しかし、彼の表情は冷静だった。


「これが俺の力だ」


 勇気は車を頭上まで持ち上げた。そして、そのまま地面に叩きつけた。

 ドガアアアン!

 轟音と共に、車は完全に潰れた。鉄がねじ曲がり、ガラスが砕け散る。エンジンから黒い煙が上がり、車はもはや車の形をしていなかった。


「うわあああああ!」


 リーダーをはじめ、まだ意識のあった男たちは皆、恐怖で震えていた。人間が車を持ち上げて叩きつける。そんな光景を目の当たりにして、正気を保っていられる者はいない。


「終わりだ」


勇気は手についた埃を払った。


「今度俺に勝負を挑むときは、もう少しマシな準備をしてこい」


 勇気は踵を返すと、その場を去ろうとした。しかし、振り返って一言付け加えた。


「あ、そうそう。今度は一人で来い。数で勝負しようなんて考えは甘ぇぞ」


 そう言い残して、山本勇気は夕暮れの街に消えていった。残されたのは、潰れた車と、うめき声を上げる男たちだけだった。


 *****


 その夜、山本勇気は自分のアパートに帰っていた。両親は海外出張で不在。広くはない部屋だが、彼にとっては十分だった。

 鏡の前に立つと、そこには筋骨隆々とした体が映っている。今日の戦いでも、傷一つついていない。これが彼の日常だった。


「今日も面白くなかったな」


勇気は呟いた。


「もう少し歯ごたえのある相手はいないのか?」


 彼はどんな相手と戦っても負けることがなかった。中学時代には既に、地元の暴走族のヘッドを素手で倒していた。高校に入ってからも、その強さは衰えることがない。

 しかし、勇気が求めているのは単なる暴力ではなかった。彼が求めているのは、真の強者との戦いだった。自分の全力を出し切れる相手との、命をかけた戦いだった。

 ベッドに横になりながら、勇気は天井を見つめていた。明日もまた、同じような日が続くのだろうか。彼に挑戦する者は現れるだろうが、きっと今日と同じように、あっさりと決着がついてしまうのだろう。


「つまらねぇな……」


 そんな彼の呟きが、夜の静寂に響いた。山本勇気という名前は、この街では伝説となっていた。しかし、本人にとって、それは退屈な日常でしかなかった。

 彼はまだ知らない。本当の強敵が、もうすぐ現れることを。そして、それが彼の人生を大きく変えることになることを。

 だが、それはまた別の話である。

 今夜もまた、鋼鉄の肉体を持つ高校生は、静かな眠りについた。明日もまた、誰かが彼に挑戦してくるだろう。そして、その結果も決まっている。

 山本勇気は負けない。それが、この街の絶対的な法則だった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



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