第5話 農業の開始

 鞍馬にしごかれていたりするが、彼は物知りであり、俺が転生者であることも知っているし、何より年齢を気にすることなく喋ることができるので、色々な相談をしていた。


 その1つがガチャによって排出された農作物を育てたいというものだった。


「ふむ、作物を増やすか」


「ああ、正しい育て方をすれば今育てている作物の収穫量も増えると思うが……それをするにも最低限の量が必要だから、信頼できる人に預けて育ててほしいんだけど……」


「うむ、まだ3歳児の竹千代様では耳を貸してくれる家臣も居ないか……そう言う時こそガチャから排出された者を使うべきではないか」


「どれが良いとかあるかな?」


「とりあえずどんなカードがあるか言っていってくれ」


 俺は鞍馬にカードの名前と効果を言っていってみる。


「ふむ、そうすると女神であるオオゲツヒメと妖怪の管狐なんてどうだろうか」


「オオゲツヒメって口から作物を吐き出す女神じゃなかったか?」


「そう言う伝承もあるが農業の神としての側面を持つ。ガチャ排出で限りある作物を確実に増やすとなると彼女が適任だろう。そして彼女の労力として人間に化けた管狐を与えるのが良いだろう。管狐は自然に増える伝承を持っていて72体まで数を増やす。それに管狐は従順な事でも有名だ。主人が蔑ろにしない限り忠義を尽くすから竹千代以外でも主人と決めれば忠義を尽くすだろう」


「なるほど……あとは土地の問題か」


「なに、今は戦国の世。探せば捨てられた村も転がってよう。そこに彼女達を住まわせれば良いだろう」


「上手くいくかな?」


「それは運次第だろうが……まぁ私に任せろ」







 鞍馬が空を飛び回って管理の行き届いてない廃村を見つけると、その土地を鞍馬の一族の者で開拓しても良いか俺の父である広忠に願い出た。


 その土地は松平家の領地であったが、戦続きで誰も住んでおらず管理を事実上放棄していた土地だったので、広忠は気前よく鞍馬にその土地を与えた。


 その数日後に俺は鞍馬に抱きかかえられて、廃村に移動し、オオゲツヒメと管狐を召喚した。


「オオゲツヒメこと多月です。竹千代様、よろしく頼みます」


「主殿! 管狐です! よろしくお願いします!」


「はい、よろしくね2人共」


 俺は2人にここの土地を耕して、ガチャで排出した作物を育てて欲しい事を頼むと


「すみませんが、うちと管狐の坊っちゃんだけだと耕すのに凄い時間がかかるとおもんます。なので怪力の鬼関係の妖怪か力自慢の英雄を召喚してはくれませんか?」


「それはご尤もだな」


 俺は悩んだ末、力自慢の英雄達は皆武士だったりして農作業をしてくれるか不安だったので、ここは人助けの伝承を持つ鬼を召喚することにした。


「んん、オラを呼んだのはお前か?」


 現れたのは三吉鬼と言う秋田に伝わる妖怪で、酒を振る舞えば、その代わりに働いてくれて、人間と共存した逸話がある妖怪である。


 酔っ払いのおっちゃんが出てくると思ったが、大きな体をした女性であった。


「三吉って女性なのか」


 俺が質問すると三吉鬼は性別は特に無いから今回は女性として顕現したんだろうと説明された。


「えっと竹千代だっけ、力自慢なのは変わり無いから安心しな。ただ働く時は酒を用意してくれよ。酒が力の源なんだ」


 俺は少々考えた後に、SRで出た清め酒と言うアイテムを出して渡してみることに。


 説明文には邪気を祓う強めの酒と書かれているだけであり、特に効果があるわけでも無い。


 結構な数ダブついていたので酒瓶を1本渡してみた。


「おお、上物の酒だな。こりゃ力が湧いてくるぜ」


「定期的に酒を届けるから多月の言う通りに田畑をたがやしてはくれないか」


「おうよ。任せろ」


「多月も田畑の管理任せるから作物の種を増やすことを重点的に頼む。それ多く収穫できたらその分は自由に使っても良いから」


「わかりんした」


「管狐も多月の言うことを聞いてね」


「主殿わかりました!」


 俺はとりあえずなるべく早く増やして欲しい米、小麦、大豆、薩摩芋、じゃがいも、長芋、里芋、かぼちゃ、玉ねぎ、人参、キャベツ、とうもろこしの栽培をお願いするのだった。







 この年の出来事として足利義輝様が将軍に就任したらしい。


 年齢は10歳と幼少将軍である。


 まぁ俺も3歳児(数え年だと4歳)なので何も言えないが……。


 それ以外は鞍馬にしごかれる以外は普通の日常を過ごしていく。


 ちなみに文字の読み書きはある程度マスターした。


 文字の学習をしている際に記憶力向上のカードを使っていた効果か、それとも特性の覚え上手が効いたのか……とにかく日常生活に問題が無い程度にはもう読み書きができる。


 なので筋肉痛の治療をしている間に書物を読み漁って知識を付けるが、技術書系はほぼ役に立たない。


 民間療法さることながら、霊的な記述がゴロゴロ転がっている。


 まぁそれも面白いとは思うが……。


 役立つのだと歴史系の書物は為になる。


 まぁ基本三河に居るので三河関連の戦についてや、源平合戦の戦いについてなんかも存在する。


 あとは鎌倉時代や室町時代(今の時代)の書物だったり、薬草についてとかか。


 漢方系は効果があるのかな? 


 史実の家康は調薬を特技としていたと読んだことがあったが……。


 まぁこの時代だとろくに薬は見込めないから食事療法で治した方が効果があるだろう。


 ガチャのRに料理の知識なんて物が出てくるし、使うと数種類の料理の知識を覚えることができるので、忘れないうちに紙に書き写すこともする。


 現状できることがそれしか無いので粛々とそれを続けているが、家臣達からの評判は上々とのこと。


「竹千代様は幼いながらに武士として鍛錬をしておる」


「武芸だけでなく教養を身につけようと書物を読むことも事欠かないらしい」


「きっと立派な殿様になってくださるだろう」


 勝手に期待するのは良いが、期待を裏切り解釈違いを起こすと殺してくるのが三河武士クオリティ。


 三河武士の頂点に立つには大将として敏腕を振るい続けなければならないだろう。


 親父は気弱そうに見えるが、よくこの重圧に耐えられるな。


「さてと、筋肉痛の痛みも引いてきたから、また鞍馬にしごいてもらおうかな」


 俺は木刀を手に持つと鞍馬に聞きながら素振りを始めるのであった。


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