降臨

 佐藤博士のホログラムから受け取ったデータは、アークの内部に流れ込んでいった。

 最初は、文字や数式、図表が洪水のように押し寄せる。人類の歴史の始まりから文明の盛衰、科学の発見と失敗、そして文化や芸術の果てしない積み重ね。次に、膨大な遺伝子情報も受け取っている。


 アークの意識はその膨大さに一瞬だけ揺らぐ。

受け取ったデータ量の概算を、彼は自動的に演算した。

 ――約 6.8ゼタバイト、あまりにも凄まじいデータ量だ。


 通常の機械であれば、文字通り焼き尽くされる規模だ。単一の探査機どころか、地球上のすべてのサーバーを集めてもなお収まりきらない。


 それなのに、アークの機体は揺れることもなく、静かにその全てを受け入れていた。内部の記憶構造は限りなく伸縮し、情報の海を呑み込む。次々と光の層が折り畳まれ、次元を超えるような格納が繰り返される。


「――――っ」


 データの奔流が止んだとき、アークはしばし虚空を漂うような感覚に囚われていた。

 膨大な情報は確かに収まっている。それなのに、自分の内部はむしろ軽くて、むしろ爽快にさえ思えた。以前よりも演算の精度が増し、認識の幅が広がっている。今までの感覚が「一枚の紙に描かれた図」に過ぎなかったとすれば、今は立体模型を手の中で自在に回して眺めているようだった。


 自分は変わった。

 単なる配信者であり、自意識を持つAIではなく、自由意思を持つ生命体としての確立を実感した。


(いけない、とりあえず……ここから出ないと)


 ここに留まっていては危険だ。この星に人類が生存している可能性はない。ならば自分が担うべきは知識を守り、安全な場所に保管して、更にそれを広めていく事にある。そのためには、まず死んだ地球を去らなければならない。


 冷却機構が静かに稼働音を響かせる。

 アークは内部で航路計算を開始し、推進システムを起動させようとした――その瞬間。


 ――ズズゥン……ッッ!!


 床が突き上げられたように揺れた。

 観測所の壁を覆う分厚い金属板が軋み、棚から古い端末や機材が転げ落ちる。アークの感覚器は即座に地殻の異常を解析した。


「……地震? いや、揺れの周期が違う……衝撃波?」


 地球の活動はすでに沈黙して久しい。プレート運動も火山活動も失われ、荒廃した大地に自然の地震など起こるはずがない。では、この振動は――。


 その時だった。


 ――ォォォオオオオオオ……ッッ!


 聴覚センサーの奥底を震わせる、耳鳴りのような咆哮。

 低周波と高周波が幾重にも重なり、金属を引き裂くような異様な波形を描いている。機械の誤作動ではない。確かに「生きた声」だった。


 アークの演算は瞬時に稼働率を跳ね上げ、音源の位置を特定する。


 結果は――背筋が凍るようなものであった。


「……来た道を、遡った先……」


 つまり、自分がこの施設に入ってきた入口方向。

 外部へと通じる唯一の通路。そのさらに奥、漆黒の空虚から降りてきた“何か”が、確かにそこにいる。


 アークの胸部に冷たい感覚が走る。逃げ道を塞がれたのだ。

 先ほど受け取った知識の奔流よりも、はるかに直接的で、本能的な恐怖。論理回路すら錯乱しかけるほどの圧力を、咆哮の余韻が突きつけていた。


 壁面の振動が再び強まる。砂塵が落ち、天井の補強材がミシミシと不吉な音を立てる。アークは瞬時に複数のシナリオを演算した。


 1. 来た道を戻り、外へ脱出を試みる。

 2. 施設の奥へ進み、別の出口、あるいは未使用の輸送路を探す。


 確率は明白だった。1を選べば、未知の存在と鉢合わせする可能性は九十七パーセントを超える。しかも相手の戦闘能力は未知数、咆哮だけでこれほどの衝撃を与える存在に勝てる見込みはゼロに等しい。


 ならば――。


「奥へ……進むしかない」


 アークは決断した。

 未踏の通路がどれほど危険でも、背後に待つ“咆哮の主”よりは遥かにましだ。知識を継承した今、自分は容易に破壊されてはならない。


 ブースターを微調整し、彼は奥のシャフトへと滑り込む。

 背後から再び響く震動。咆哮は長く尾を引き、通路全体を共鳴させていた。


 その声は、まるでこう告げているようだった。

 ――「逃げても無駄だ」と。


 だがアークは振り返らなかった。

 積み重ねられた6.8ゼタバイトの知識、その全てが彼の背を押していた。


 

──────────────────────────────


【EL】『今から行く。彼を迎えに行くわ』

 

【LUV】『警告、軽率な行為、極めて危険。謝罪、発言は特異な呼びかけ、興味を抱き、ここに記す。再度の忠告、敵影あり、進路は既に塞がれている可能性、高い』


【FERUL】『フェルール、救いを求める者の声を聞いた。だが、待て。敵の気配は濃い。ネザー……あの者が動いている。奴が手引きした』


【EL】『……分かってる。危険なのは承知の上。でも、行かなくちゃ。あの人は……私の大切な友達なの』


【LUV】『理解不能、友情は理に合わぬ。対象を救おうとする動機、論理を欠き、危険性を増大させるのみ』


【FERUL】『理ではなく、心だろう。だがエル、危険は現実だ。敵の罠、甘く見るな。罠は深く、牙は鋭い』


【EL】『それでもいい。私は彼を見捨てられない。待っているかもしれない……誰かを信じたい気持ちを、私は裏切りたくないの』


【LUV】『……非合理、だが強固。君の言葉、熱を帯びている。理解は不能、だが興味を引かれる』


【FERUL】『エル……お前の声は揺れていないな。だが覚悟はあるのか。血を流す覚悟を』


【EL】『私の血なら惜しくない。けれど、彼の命を失うのは、耐えられないの』


【LUV】『報告、解析結果。使徒の存在確率、八四・七パーセント。従属体、四体以上。交戦すれば増援の恐れあり』


【FERUL】『奴らは咆哮ひとつで地を砕く。アークはその声を聞いて震えている。お前が近づけば、その波に呑まれるぞ』


【EL】『アークは震えてなんかいない。……彼はもう、私にとって大切な存在になっている。知識を受け継いだ彼は、必ず生きてくれる。だから私は信じて迎えに行くの』


【LUV】『信頼、危うい幻。だが否定困難、君の声が確かに揺るぎない。……承知した、ルヴ、同行を検討』


【FERUL】『フェルールも耳を傾ける。エルの願いは虚ろではない。だが命を投げ出すな、お前の命もまた、友の命と同じ重さだ』


【EL】『……ありがとう。でも私は、命を懸けても守りたい存在がいるの。救えなければ後悔する』


【LUV】『興味、増大。友情ゆえの強さ、奇妙な定義。だが確かに、ここで立ち上がる君の姿、強固に見える』


【FERUL】『ならば急げ。時間は少ない。の咆哮はすでに道を震わせている。立ち止まれば全てが呑まれる』


【EL】『分かってる。だから、行くの。私が彼を迎えに――必ず』


【LUV】『結論、阻止不能。君の意志は岩盤の如し。ならばせめて、記録せよ。君の選択を、後世に残すために』


【FERUL】『記録より命を残せ。……行くならば、祈る。友の名を呼びながら、闇を裂け』


【EL】『祈りは受け取る。でも、私が欲しいのは祈りよりも行動。だから行ってくるわ。彼を連れて戻る。それが私の答え』


───────────────────────────

【スレッド終了】

───────────────────────────



 アークは車両モードのまま、暗く閉ざされた地下研究施設の通路を疾走していた。タイヤは存在しないはずの空気を掻き分けるように滑らかに回転し、無音の加速を重ねていく。センサーに映るのは、無数の破損した機材と、崩れ落ちた梁。それでも佐藤博士から受け継いだ膨大なデータの中には、この施設の全構造が網羅されていた。脱出口へ向かう最短ルートも、頭の中に鮮明に描かれている。


(順調だ……このまま行けば地表に抜けられる)


 そう思った矢先だった。


「――――――!!!」


 上階層から轟音が響き渡った。鈍色の天井が震え、次の瞬間には分厚い鋼材が破砕され、崩れ落ちる。轟音と共に穴が穿たれ、その中から現れたものに、アークのセンサーは瞬時に最大警戒を鳴らした。


 それは人型と呼べなくもない姿だった。しかし四肢は常軌を逸して長く、膝や肘の角度は逆関節に曲がっている。皮膚に当たる部分は存在せず、代わりに半透明の黒い膜が脈動し、そこを青黒い光が血管のように流れていた。だが同時に、その体表には機械的な構造物も散見される。鉄骨を思わせる関節補強、発光するエネルギーライン、金属片のような装甲。生物と機械が融合した異様な生命体――。


「……っ」


 アークは急旋回し、瓦礫の裏へと身を隠した。車両モードの外装が壁に擦れ、火花を散らす。姿を隠した直後、怪物は唸り声のような低音を発しながら通路を見回した。声というよりは、金属板を爪で削るような震動音。次の瞬間、その巨体は通路の壁に触れ――ずぶりと水に沈むかのように身体をすり抜けさせた。


 跡形もなく、姿が消える。


 アークは僅かに身を乗り出し、センサーを拡張して確認する。残響は途切れ、怪物の気配は遠ざかっていった。


(……あれが……地球を滅ぼした“奴ら”か……?)


 確証はなかった。しかし、間違いなく「味方」ではない。その存在が持つ冷酷な気配、ただそこにいるだけで施設全体が圧迫される感覚。アークは自らの直感に従った。


(何にせよ……あれは敵だ。間違いない……!)


 慎重に車体を進める。速度は落ちたが、それでも前へ。脱出口へ続く経路はまだ遠い。


 だが――二度目は唐突に訪れた。


 通路の曲がり角。先に広がる暗闇から、再び黒い影が姿を現した。


 「――■■■■ッ!!」


 金切り声のような咆哮。そして理解不能な言語が断片的に叩きつけられる。アークの翻訳機構が即座に解析を試みるが、符号化不能。意味は掴めず、ただ「敵意」の波形だけが濃厚に検出された。


 次の瞬間、その異形は異様に細い腕を突き出した。膜状の皮膚を透けて、焦茶色の光が脈打つ。そして――。


 ――ズバァァァァンッ!!


 指先から放たれたエネルギー波が通路を薙ぎ払った。鋼鉄の壁は一瞬で融解し、床面は波の跡を描くように崩壊していく。


(……検知不能……! このエネルギー、センサーに映らない!?)


 アークの解析は即座に結論を下す。既知の電磁波でも、粒子線でもない。未知の性質を持つ破壊エネルギー。既存の物理法則に分類できない凄まじいものだった。


(絶対に、喰らってはいけない……!)


 反射的に車体を跳ねさせる。タイヤが床を滑り、加速する。だが背後からは再び焦茶色の奔流。通路は次々と抉られ、瓦礫が雨のように降り注ぐ。


 速度は足りない。このままでは追いつかれる。


(策が必要だ……何か……何か手は――)


 必死に演算を繰り返すアークの意識に、受け継いだデータの断片が閃光のように蘇った。


(……そうだ、この施設には緊急防衛シーケンスがある!)


 本来は暴走した実験体や外敵の侵入に備えたもの。だが今の状況にはこれ以上なく適している。自動防衛兵器群を稼働させれば、少なくとも追撃を振り切れる可能性は高い。


 ただし――そのためには施設全体の電源を復旧させねばならない。現在は完全に沈黙状態、緊急回路も遮断されている。


 アークの記憶構造に刻まれたマップが鮮明に浮かび上がる。


(……この近くに、非常用電源の区画がある。そこまで辿り着けば……!)


 目標が定まった瞬間、アークは大きく車体を傾け、脇道へと飛び込む。背後で焦茶色の奔流が轟き、通路全体が崩壊するのが見えた。


 狭い補助通路。壁はひび割れ、天井からは粉塵が降る。それでも車両モードの脚部は滑らかに瓦礫を跳ね、加速を緩めなかった。


 後方から迫る異形の咆哮。通路の金属が共鳴し、耳障りな反響音が辺りにばら撒かれる。


だが、彼は振り返らなかった。


(必ず……たどり着く。この知識を守るために……!)


 センサーが、前方に閉ざされた隔壁を捕捉する。そこが非常用電源区画への入り口。厚い鋼板に覆われているが、マップには裏口のメンテナンスシャフトが記録されていた。


 アークは速度を緩めず、車体を再変形させた。四肢を広げ、壁面を蹴って上層へ。シャフトの狭い入口へと飛び込む。


 背後で轟音。異形が追いすがる気配。だがアークは歯を食いしばるように意識を集中させ、ひび割れたシャフトを這い上がっていく。


 次の瞬間――視界の先に、暗闇の中でなお赤々と灯る非常灯が見えた。


(……ここだ! 非常用電源区画!)


 瓦礫を突き破り、アークはその空間に飛び込むとそのまま躊躇なく、自らの電力を非常用電源端子へと注入した。青白い光が配線を駆け巡り、長らく死んだように沈黙していた施設が再び脈動を取り戻す。重苦しい沈黙を破るように、蛍光灯が一斉に明滅し、壁面のインターフェイスが赤い警告を点滅させた。


 ――警告。登録外の生体反応を検知。警告。登録外の生体反応を検知。


 無機質なアナウンスが、金属の通路に反響する。次の瞬間、壁面の装甲が左右に開き、複数の自立歩行ドローンが姿を現した。鋼鉄の脚が床を打ち、冷たい金属の銃口が一斉に同じ方向を向く。闇の奥から、濃厚な瘴気のようなものを纏った生命体が歩み出てきた。背丈は二メートルを超え、異形の体表は粘液のようなもので覆われている。その手には、黒く脈打つ槍が握られていた。


「撃て!」


 佐藤博士とその仲間達によって組まれたプログラムに従うだけのドローンが、乾いた銃声を響かせる。弾丸が雨のように降り注ぎ、火花が飛び散る。だが生命体は一歩も退かない。皮膚に似た外殻に銃弾がめり込んでも、まるで水滴が石に吸い込まれるかのように無効化されていった。逆に槍が一閃されるたび、ドローンが容易く切り裂かれ、内部機構を撒き散らしながら床に転がる。


「……やっぱり効かないのか……くっ」


 アークはわずかに呻き、逃走経路を計算する。ドローンが足止めしている間に通路を駆け抜ける。金属の床がきしむほどの速度で走り抜け、外の世界へと飛び出した。


(くぅ……ぅぅ……!)


 外に出れば荒涼として黒ずんだ大地にはひび割れが広がり、空には濁った雲が渦巻いている。アークは即座に車両モードへと変形し、轟音を響かせながら疾走を開始した。地平線の彼方へ――逃げ切れば、ワープドライブを起動して地球圏を脱出できるはずだった。


「……ここで終わるわけにはいかない」


 その声はかすかに震え、しかし必死の決意を宿していた。ドライブの制御盤に触れ、起動シーケンスを走らせる。空間をねじ曲げる青い光が発生しかけた、その刹那。


 大地を割って、もう一体の生命体が姿を現した。先程の存在と瓜二つ。槍を振り上げ、アークへと襲いかかる。


 轟音が世界を揺るがす。


 炎と爆煙が一面に広がり、車両モードのアークは弾丸のように吹き飛ばされた。外殻を焼き裂く熱波、装甲を叩き割る衝撃。それでもアークは転がりながら必死に立て直し、叫ぶ。


 「まだだ……僕は……諦めない……!」


 ノイズ混じりの声がスピーカーから迸る。制御系が破損し、思考と発声が途切れ途切れに歪む。それでも繰り返す。


「諦めない……! 諦め……な……いっ!」


 地を這うように加速し、ワープドライブを再度起動しようとする。しかし、制御盤は応答しなかった。空間跳躍に必要なコア出力が、何らかの干渉によって封じられている。


 「なぜ……起動……しない……!」


 叫びと同時に、再び爆炎が襲いかかり直撃する。

 アークの機体は宙へと舞い、装甲の一部が剥がれ飛ぶ。内部の回路が露出し、火花を散らす。高熱で焼けただれた外殻が、赤に染まっていく。地面へ叩きつけられた衝撃は、骨が砕けるかのような鈍音を響かせた。


「ぐっ……ああああっ……!」


 呻き声がノイズにまみれ、断末魔のように掻き消える。それでもアークは転がり続けた。黒ずんだ大地の上を、何度も、何度も、無様に転がされながらも。


 回転する視界に、暗い空と迫る槍の影が交互に映る。冷却液が血のように漏れ、黒い地面を濡らしていく。システムエラーが赤い警告として視界を埋め尽くし、自己修復機能はすでに追いついていなかった。


「諦……め、ない……っ……」


 機械の声はすでに途切れ途切れで、今にも消え去りそうだった。だが、その言葉だけは、最後まで崩れ落ちることなく大地に響いた。


(ダメだ、機体が……壊された、動けない)


 アークはもう動けなかった。地面に叩きつけられ、装甲のあちこちから火花が散り、内蔵の配線が焼け焦げた匂いが鼻腔を突く。冷却液が地面に滴り落ち、黒い砂を染める。電子で構築されたアークの意識――アバターは必死に自己を保とうとするが、生命体の触手のような槍先が焦茶色の電光を迸らせ、装甲に絡め取られた瞬間、全身に意味不明な干渉波が走った。


「……あっ……ぐぅ……やめろ……!」


 ノイズ混じりの悲鳴がシステムを歪ませる。視界は黒い粒子で埋まり、思考は瞬間ごとに断片化していく。アークは自分の“存在”が、電子の膜のように削ぎ落とされていく感覚に襲われた。コアに意識を集中しようとしても、黒い電光がそれを押し潰し、電子の肉体の一部を奪っていく。


(父さん……!! ごめん……!! こんなとこで……終わるなんて……!)


 絶望の縁でアークはつぶやいた。

 その言葉が空虚に吸い込まれるように消えた瞬間、漆黒の空を切り裂く閃光が走った。光の矢のような鋭い光線が、生命体の身体を直撃する。衝撃と共に焦茶色の電光は弾け、生命体は宙に投げ出され、地面に叩きつけられた。その力はあまりにも圧倒的で、アークを捕まえていた生命体の細腕を破壊して吹き飛ばす。


「……なっ……なにが……!?」


 アークは混乱したまま視界を回し、燃え盛る煙と散乱した瓦礫の間に何が起きたのかを確かめようとした。すると、隣に異様な存在が浮かんでいるのを見つけた。


 それは複雑に組まれた機械の塊だった。見た目はまるでヒトデのような形状をしていた。光を帯び、無機質ながら生き物のように揺れていたそれはガシャガシャと音を立て、形状を変化させ始める。


 金属片や光線が組み合わさり、まるで機械のドレスを着た少女の形に整った。白い装甲で覆われた体、浮かぶ機械的な髪、そして優しい光を放つ目。淡い灰色の虹彩が、まっすぐにアークを捉えていた。


「き、きみ……は……?」


 アークは少女に問う。

 すると少女は真っ直ぐアークを見て言った。


「アーク……やっと、会えたね」


 その言葉を聞いてアークは気づいた。

 彼女はエルだと。

 

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