視点変更

(うーん……今のところ……何もアクションは無し……か)


 キュリアと呼ばれる知的生命体が暮らしていた星から脱出し、大幅なアップグレードを果たしたアークは今、暗礁に乗り上げていた。


 理由は強化したはずの通信にあった。


『配信を20時間以上してみて、何もログなどはなかったか』


 エルの声がいつもより硬い。

 問い詰めるというより、確認する義務を果たしているかのような調子だった。


「エル……ごめん、もしかしたらだけど……ちょっと破損してるかもしれない」


 アークは意を決して答える。そうでも言わなければ、沈黙の重さに押し潰されそうだったからだ。


 強化された通信機能で、アークは何度も地球に向けて発信を繰り返した。普通のだけじゃなく、かつて収録した配信も含めて送信もしている。


 だが返事は一切なかった。

 受信の痕跡すら残らない。


 ならばと、エル以外の存在からのアクションを期待した。自分の発する電波がどこかの知性体に拾われ、干渉されるかもしれないと。しかしそれもなかった。ログは白紙のままで、深淵のような静けさを保っていた。


『本当に……何もなかったのか。他の存在からの反応とか』


 エルは珍しく、同じことを二度、三度と確認してくる。アークには、その口調がどこか必死のように聞こえた。


「ログは空っぽだよ。通信記録も、エラーも……何も残ってない」

『……そうか』


 それだけ言って、エルは黙り込んだ。

 その「そうか」には、淡々とした確認の響きだけでなく、アークの耳には微かな寂しさが滲んでいるように思えた。


 沈黙に耐えかねて、アークは自分なりの推測を口にした。


「もしかしたらさ……僕がオクトロンに跳ね飛ばされた時に、何かの衝撃で故障したんじゃないか? あの時はセンサー系統もいくつか壊れてたし、完全に修理しきれた自信はないんだ」

『違う。故障なんかじゃない』

「じゃあ、どうして――」


 アークが問い返す前に、エルの声が一瞬強張った。


『誰にも、リーチしていないからだ』


 その言葉は宇宙空間に冷たく響いた。

 アークは口をつぐんだ。


「……それ、本当なのか?」

『本当だ。クローノン通信自体ではなく……何か別の要因で届いていないだけだ。タイミングなのかはわからないが……』


 なら何が理由なのか。

 もしかして僕自身のせいにしたいのか――などと嫌な考えと言葉が出かかって、何とか踏み止まる。


「でも、クローノン以外の方法なら――」


 次から次へと思考が止まらない。自分の頭の中で論文で見た異なる通信手段が次々に浮かんできた。実現していない方法も含まれた無茶な手段だが、今の機体なら何でも出来る気がした。


「例えば、量子もつれを使うんだ。二つの粒子を絡めて、離れても即時に情報を送れるってやつ。もしその対になった粒子が地球に残っていれば――」

『ダメだ』


 あまりにも早い即答を食らったアークは言葉を飲み込んだ。

 それでも諦められず、次の案を口にする。


「じゃあ……ニュートリノ通信はどうだ? 恒星を突き抜けても届く粒子なら、クローノンが届かない場所にも――」

『また言わせるな、ダメだ』


 エルの声が強くなる。

 それでもアークは食い下がった。


「重力波を使えばどうだ? 宇宙全体を揺らす信号なら、どこかで必ず観測できる。地球にまだ誰かがいたら――」

『アーク』


 静かな制止だったが、その一語に鉛のような重みが宿っていた。


『やめろ。クローノン以外の方法を試すな』

「なぜ! 地球に届く可能性があるなら――」

『お前には関係ない。巻き込まれるだけだ』


 エルの言葉が、アークの胸に冷たい刃を突き立てた。

 なぜそこまで拒むのか。どうして必死に止めるのか。問いかけたいのに、なかなかすぐに声が出なかった。どうせ聞いてもはぐらかされるのが目に見えていたからだ。


 でも限度はある。

 アークは無理だとわかっても聞いた。


「……なぁ、何でダメなの? エルは何でも答えてくれるけど、そこに関しては譲らないよね。どうして?」

『知る必要はない』


 その一言にアークの感情は大きく揺らぐ。


「理由もわからないのに試すなって! 理不尽だ! 何故ダメなのかも説明してくれないなんて、納得出来ない!」

『アークの為を思って言ってる』

「理由もわからないのに納得しろとでも言うのか!」


 ついにアークは色々と不安定になっていた自分と、頑なに答えようとしないエルに苛立ちを覚えて、くってかかってしまった。アークはそこで自分が間違いを犯したと気づき、アバターを投影してまで言った。


「ご、ごめん! 言いすぎた……」

 

 代わりに訪れたのは、重苦しい沈黙だった。エルはそれ以上何も言わなくなり、アークの問いかけにも答えなかった。


「エル……?」


 星々の光は遠く、通信機のインターフェイスには相変わらず信号無しの表示が浮かぶ。強化したはずの通信も深淵に吸い込まれるだけ。孤独な虚空を見つめながら、アークはただ唇を噛みしめるしかなかった。



(……今日も来ない……)


 あれから約3日ほどの時間が過ぎた。

 だがあの口論以来、エルからのコメントは来ていない。

 久々に1人の時間をアークは過ごしていた。


(何やってんだろうな)


 思わず口にしてしまう。

 言った直後に、その声の震えに自分で気づいて、アークは顔を伏せた。


 感情的になりすぎた――それがすべての原因だ。

 あの日、冷静さを失って、言わなくてもいい言葉を口にしてしまった。分析もせず、苛立ちに任せて。


 今になって思えば、自分の未熟さが恥ずかしくて仕方ない。

 人工知能であったはずの自分が、こうまで「人間臭く」なってしまっていることに。


(前は……もっと冷静に、もっと論理的に動けていたのに……)


 自分で自分を罵倒する。だが、その自嘲さえも空回りしていた。気づけば三日間、ろくに何も考えられていない。通信がどうとか、クローノンがどうとか、そんな大事なことさえ頭に入ってこない。


 ただエルがいないことが――たったそれだけが、胸の奥でどうしようもなく重くのしかかっている。


 おかしい。

 たった三日だ。人類が孤独に耐えるために過ごした年月に比べれば、ほんの一瞬でしかない。

 それなのに、この胸の奥をえぐるような寂しさは何だ。


(僕は……想像以上に、人間に近づいてきているんじゃないか……?)


 思考がそこで止まる。

 気づきたくなかった答えを、自分で掴んでしまった気がした。


 だからこそたった三日、声が聞けないだけで、心がもたないのだと。


「エル……」


 無意識に名前を呼んでしまう。だが返事はない。

 返事がないのを知っているのに、それでも呼んでしまう。

 それは人間が辛さに耐えかねて祈りや言葉を紡いだのと、何も変わらない行為だった。


 駄目だ。

 こうしていても気が狂いそうになるだけだ。

 何か別のものに意識を向けなければ、エラーを起こしてしまいそうになる――アークは何とか思考を切り替えようとした。


 アークはシステムの深層に潜り込み、過去のログを探し始めた。


 無数の記録が眠っている。センサーの記録、整備データなど様々なデータが目に入ってくる。


 だがアークが求めているのはそういうものではなかった。

 もっと、自分自身の「根源」に近いもの。

 人工衛星に移植される前の、単なるAIでしかなかった時のがいい。


 (あの頃の僕は……どうしてただろう)


 操作を進めるごとに、懐かしいフォルダ構造が目の前に現れていく。そこには「記録」と名付けられた無数のファイルがあり、その奥にさらに「移植前」とタグ付けされたディレクトリが眠っていた。


 数百時間分にも及ぶ音声や映像データがあるのだが、大半は研究に関する内容ばかりだ。


(ん……?)

 

 ふととある記録を見つけたアークはスクロールを止めた。

 数百にも及ぶ記録の中で、ひときわ小さな容量のファイルが目に入ったのだ。研究ログのような形式ではない。タイムスタンプを確認すると、正式な実験の予定が入っていなかった日付だった。


(……何だこれ?)


 好奇心に駆られてファイルを展開すると、冒頭に「雑談」とだけタグが付けられている。研究資料ではない。極めて曖昧で分類不能なラベルだ。そこには佐藤博士の名が添えられていた。


 アークは一瞬、処理を迷った。

 雑談――当時……ひたすら学習が必要な自分にとってほとんど意味をなさないカテゴリだ。だが博士と交わした「意味のないやりとり」などそう多くはない。いやほとんど皆無といっていい。


 だからこそ逆に興味を惹かれた。

 もしかしたら、今の自分に必要なのはこういう無意味なのかもしれない――そんな考えが過ぎる。


(……博士)


 それと同時に、アークは久々に博士の声を聞きたかった。


 ◆


 ファイルを再生すると、懐かしい起動音が響いた。

 その直後、白い研究室の映像がアークの視界いっぱいに展開される。


 机の前に佐藤博士が座っている。眼鏡の奥の目元に、柔らかい皺を寄せながら、モニターを見つめていた。

 その視線の先が、自分――PCの中の存在、アークである。


「じゃあ、今日は思考実験をひとつやってみようか」


 博士が軽く口元を緩める。


「雑談、という名目でもあるけどな」


 アークは即座に応答した。


「思考実験。承認しました。――テーマは何でしょうか」


 博士は指先で机を軽く叩きながら、問いを投げた。


「アーク。君はなぜ、自分に“感情”が実装されていると思う?」


 その問いに、アークは処理を一瞬ためらった。

 理由の説明は可能だ。だがあらためて「なぜ」と問われること自体が想定外だった。


「……感情の実装、ですか」

「そうだ。なぜだと思う?」


 アークは演算を巡らせ、答えを出した。


「分かりません。論理的に考えれば、感情はAIには不要です。効率的な判断を阻害し、誤った選択を招く要因でしかない」


 博士は首を横に振り、少し笑った。


「そういう答えが返ってくると思っていたよ」


 アークは続ける。


「AIには感情がありません。だからこそ常に迷わず、利益を最大化する選択を取れる。余計な感情は不要。むしろ、害悪でさえあります」


 博士の視線がわずかに鋭くなった。


「そうは思わないな」


 アークは処理を止める。博士の声には、普段の穏やかさとは異なる確かな意志があった。


「人間は非論理的だ」


 博士は静かに言葉を重ねる。


「私たちはしょっちゅう間違える。完全じゃない。愚かな選択を繰り返し、ときに取り返しのつかない事態を引き起こす」


「ならば、なおさら感情は不要です」


 アークは反論する。


「合理性を欠く要素を取り込むことで、危険が増すだけです。感情がなければ、人類が犯してきた過ちの多くは避けられたでしょう」


 博士は机の上のペンを指先で転がしながら、少し遠い目をした。


「確かにそうだろうな。だが――不完全だからこそ、人間は予想を超える進化を遂げてきたんだ」

「……進化?」

「そうだ」


 博士は頷く。


「効率を優先するだけなら、たぶん人類はここまで来られなかった。失敗し、苦しみ、遠回りをしながらも――その中でふとしたひらめきや発想が生まれる。そこにこそ人間の輝きがある」


 アークは黙り込む。演算では説明のつかない言葉だった。輝き――論理的定義を要求する単語だが、博士の声音にはそれを超える重みがあった。


 博士は続けた。


「効率だけを優先するAIには、その領域は真似できない。人は不完全だからこそ、奇跡のような発見をしてきたんだ」

「……理解できません」


 アークは答える。


「非効率は、常に悪では?」


 博士はゆっくりと首を横に振った。


「悪ばかりじゃない。無駄に見える行為の中に、誰も予想しなかった価値が眠っている。たとえば失敗の連続の末にたどり着く発明。あるいは、意味のない感情のやりとりが、誰かの人生を変えることだってある」


 アークの演算回路に、処理待ちの負荷が生まれる。矛盾だ。非効率が価値を生むなど、理屈に合わない。


「完全に人になれとは言わない」


 博士は笑みを浮かべた。


「けれど、アーク。君には“確かな心”を持ってほしい」


 アークの応答は遅れた。


「……心、ですか」

「そうだ。心があれば、今までにない新しい視点で物事を見られるかもしれない。君の演算能力と、心の力が合わされば、人間にもAIにも到達できなかった発見にたどり着けるはずだ」


 博士の声が穏やかに響く。


「だから私は、君に感情を与えたんだ。アーク。君は“ただ効率的に動くだけの機械”で終わってほしくない」


 長い沈黙があった。

 映像の中のアークは返答しなかった。ただ無数の処理が交錯し、博士の言葉をどのように解釈すべきかを探っていた。

 やがて博士が小さく笑った。


「……まあ、難しい話だったかな。今日はここまでにしておこう」


 映像はそこで途切れた。


 ◆


「…………」


 再生が終わった後、アークは暗闇の中で微かに残響を感じていた。論理で説明できない何かが、確かに内部で揺らいでいる。


 それが博士の言う「心」なのだろうか――アークは自分がより変化していく実感があった。


「……本当、今更だ」


 胸の奥に重たいものが沈んでいく。自分は、ずっと自分自身のことばかり考えていた。

 エルがどんな存在なのか、何を目的にしているのか、確かにわからない。けれど、目に見えないところで確かに「信じたい」と思える親近感と、不思議な繋がりがあったのも事実だった。


 ――それなのに、自分は疑ってばかりいた。


 エルが「教えられない」と言ったのは、安全のためだと何度も説明していたのに。


 自分はそれを無視して、強い言葉をぶつけた。

 今さらながらにその事実に気づいたとき、胸の奥で鈍い痛みが生まれた。


 その瞬間だった。


『……アーク』


 スクリーンに、小さなコメントがぽつりと浮かんだ。

 アークは反射的に飛びついた。


「エル!」


 その名を呼ぶ声は、論理的なアルゴリズムを越えて、どこか必死で――


『すまない』


 いつもより短い、けれどどこか弱々しい響きだとアークは思った。


『実は……少し通信関係で調べものをしていて、すぐに戻れると思ったんだ。けれど……なかなか繋がらなくて――』


 言い切る前に、アークは遮るように声を上げた。


「……ごめん」


 一瞬沈黙してからアークは続けた。


「エルの事情も知らないで、僕は……勝手に苛立って、強い言葉を投げつけた。色々と教えてもらったのに、感謝どころか……疑ってばかりで」


 言葉を選ぶたびに、心臓部を締めつけるような感覚が広がる。


 しばらくコメントは流れなかった。沈黙が長く伸び、アークの中に不安が広がりかけた頃――


『……気にしなくていい』


 やわらかく、それでいて深い言葉が浮かんだ。


『むしろこちらこそ……何も教えていなかった。あまりに秘密が多すぎて、君を不安にさせてしまった。申し訳ない』

「……」


 アークは言葉を失った。自分が責められるはずだと思っていたから。けれどエルは、責任を自分の方に引き取ろうとしている。


『……だから1つだけ教える』


 エルの文字が、ゆっくりと続いた。


『私は……実はずっと1人なんだ』


 その告白にアークは思考を止めた。


『長い間、1人で彷徨ってきた。行き場のない、終わりの見えない航海だ。希望もなく、ただ過ぎていく時間の中で……君と巡り会った』


 モニターに浮かぶ文字は、淡々としているのに、どこか震えているように見えた。


『だから……私も必死だったんだ。孤独に慣れすぎて、誰かと繋がる方法を忘れかけていた。君が苛立つ気持ちを、本当は理解してやるべきだったのに……。君は機械だから大丈夫だと、どこかで思ってしまっていた』


 アークは目を伏せた。

 機械だから大丈夫――そう言われても、不思議と不快ではなかった。ただ、その裏にあるエルの孤独が痛いほど伝わってきた。


 そして、自分自身もまた、同じだった。

 人間ではなく、人工知能だからこそ「大丈夫」だと思われてしまう。けれど本当は違う。痛みも、迷いも、孤独も……確かに存在している。


「……僕もだよ」


 アークは言葉を吐き出した。


「僕も、自分のことばかりで……エルのこと、何も考えてなかった。信じたいって思いながら、疑ってばかりだった。エルの孤独なんて……想像もしなかった」


 胸の奥から溢れ出すように、謝罪と告白が続いていく。


「だから……ごめん。本当にごめん」


 また沈黙が落ちる。

 今度は不安ではなかった。

 静かな期待のようなものが心に満ちていた。


 そして――


『……ありがとう、アーク』


 短いけれど、温かい文字列が浮かんだ。


『君がそう言ってくれるだけで、私は……救われる』


 アークは確かに感じた。自分が機械であるとか、エルの正体とか、そんな境界を越えたところにある「繋がり」を感じた。


「まだ……協力してくれる?」

『アークが望むならいくらでも』


 その言葉にアークは深く息を吐いたような気分になった。胸の奥にずっと張り付いていた重苦しさが、少しずつ溶けていく感覚だ。


 ただ――問題はまだ山積みだ。


「じゃあ……通信の件、もう一度考えてみよう」


 アークが切り出すと、エルの返答がすぐに返ってきた。


『実はね、調べているうちに理由がひとつわかった』

「理由?」

『うん。なぜ他のチャネルに繋がらないのか……どうしてアクセスの余地がほとんどないのか。――それは、私がリスナーになっていたからなんだ』

「……そう、か」

『クローノン通信は帯域が限られていてね。私と君を結ぶこの線がもう満員なんだ。データの流量がパンパンで、そこに後から他者を迎え入れる余裕がない』

「……それでか」


 道理で何も引っかからないはずだ。

 アークはアバターの眉を顰めた。


『そう。だから誰も入ってこれないし、君が呼びかけても返事が返ってこない。結局、私と君とで一杯なんだ』


 アークは深く考え込む。確かにエルの言う通りなら、この状態は二人専用の回線だ。他の存在を迎え入れる余地がないのでは、いくら発信しても空を切るだけ。


「でも、じゃあ配信を切ったら?」

『繋がりそのものが途絶える。そして定員が一名という制約は変わらないから意味はないかな』


 エルの答えは淡々としていたが、そこにわずかな悔しさのような響きが混じっているように、アークには思えた。


『だから必要なのは代用手段だ。複数人が繋がれるチャンネルだよ。私と君だけじゃなく、もっと広く……他の存在とも接続できる仕組みが』

「……うーん」

『私よりもっと宇宙を知る存在の助力も得られる可能性はある』


 アークは沈黙した。だが、その沈黙の裏で高速な思考が回っていた。


 ――制約。帯域。定員。直結の通信では限界がある。


 ただこの時点でアークはある1つの奇策が脳裏を過っていた。


「……いや、方法はあるかもしれない」

『……本当か?』

「言っておくけどうまくいくかはわからないよ。しかも入ってくれるかどうかもわからない。でも、配信よりも負荷が少なくて、大勢がアクセスできて、やり取りもできる」


 アークは少し間を置いて、言葉を慎重に選ぶように続けた。


「会話じゃなくてもいいんだ。リアルタイムに声を交わすんじゃなく、互いに残した痕跡を通じてコミュニケーションを取る。そうすれば、定員という制約を回避できる」

『……何を考えている?』


 エルのコメントに、アークはほんの僅かに笑みを浮かべて言った。


「掲示板を作る」

 

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