第6話〈勝気〉
彼は和室の引き戸から少しばかり顔を出した。そして瞬時に左右を確認し、キッチンにも廊下の突き当たりにも奴はいないことを確信した。
これで奴は、向こう側には入れまい…!確実に追い込んでいるはずだ…。今に見てろ…、絶対に見つけ出してやる…!
少し錆び付いてきていたトロフィーが、ほんの一瞬、輝きを取り戻したように見えた。ここにきて芽生えてきた強気が、それからの行動に拍車をかけた。洗面所、浴室、トイレ、次々に可能性を潰していく。奴が居なければいないほど、彼の脳内では、奴が次の場所に居る可能性は高まっていたのだろうか、それとも
ガチャッ…!
・・・
そこに奴の、姿は無かった。
いない…!?ならどこに…?あと他に、人が入れるところなんて…。
ってことは…。奴の存在は…。
一瞬でも、安堵しかけた身体に負荷をかけたのは、思いついてしまった1つの可能性だった。
違う…、その考え方が間違っているんだ…!
彼には唯一、無意識のうちに候補から消してしまっていたスペースがあった。
物で埋め尽くされ、到底人ひとり入れまいと思っていた物置…!そここそ、奴からして隠れるのに
彼は急いで物置へ向かった。
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