異世界から強制帰還させられたらゾンビパニック化した世界になっていた・・・ここってホントに元いた世界??
HaiTo
プロローグ 帰還者
「は???・・・何を言ってるんだ?」
『ですから!!あなたを元の世界へお送り致します。世界を救ってくれて本当にありがとう、カイリ。』
「ですから???おい!!!『ですから。』って何だよ!!!!!」
俺が怒声を上げるが突然目の前に現れた女神は、全く気にする素振りも無く特殊な魔方陣を俺の目の前に展開していた。
「お、おい!!ちょっ・・
『それではーーーーーー!!!!』
・・ょっと、待っ!?!?」
**
異世界に転移してから5年・・・。
この5年は短いようでとても長かったように感じる。
俺は・・・やっとの思いで邪神を倒し『アルトシア』という名の世界を救った。
邪神を倒した後、俺はさっさとゲートの魔法を使って王国に戻りたかったのだが、お決まりのように邪神教の信徒が攫っていたという王国の姫が禍々しい神殿の最奥の部屋に軟禁されていた事を思い出した。。
うーん・・・姫を救い出すことは別にいいんだが・・・面倒なのは俺が使える『ゲート』という魔法は、行きたい場所に(・・とは言え、一度行った事がある場所にだけだが・・)一瞬で移動することが出来る便利な魔法なんだけど・・・何故か俺以外は通れないという『おひとり様用』の転移魔法だった事だ。
はぁ。。。ポ○イのオリー○といい、マ○オのピー○姫といい、なんでそんなに簡単に攫われるかな・・・・。
しかし愚痴を言っても解決しないのと、結局知らない振りをして1人で王国に戻っても『なぜ姫を助け出してくれなかったのだ!!』と王に怒られてしまうだろうと思った俺は、囚われの姫を無事救い出し、その後、姫を気遣いながら一か月近くかけて漸く王国を守る城壁の前に辿り着いた・・・・・なのに・・・そうだというのにだ!
門を守っている兵士に声をかけようとしたその瞬間、俺をアルトシアに呼び出した女神が突如姿を現し『強制的』に俺を元いた世界へと送り返しやがった。
俺は何とかその愚行を止めるべく必死に手を伸ばしたのだが・・・その手は女神には届かず・・気付けば虚しく宙を彷徨っていた。
そして・・・背中に感じるのは冷たく固い床の感触だった。
**
突然の転移に目をパチパチさせていると・・
「おわっ!?」
いきなり視界がグニャリと歪む感覚に襲われて驚いた・・・・が、その原因はかけている度の強いメガネである事にすぐに気づいた。
メガネを外して無造作に投げ捨ててやったが、驚いた拍子に上半身を起こしていたので改めて周囲を見渡してみると、、、、鉄製の籠に入ったバスケットボールやバレーボール、跳び箱にマット、そして折りたたまれた卓球台が目に入り独特な臭いが鼻を突いた。
うん、元の世界だ。
「くそっ!!あの野郎!!!」
俺は女神の勝手な行為に怒りが込み上がると思わず拳を床に叩きつけてしまった。
ドコォッ!!
「あ・・・。」
しまった・・・タイル敷の床が陥没している。そこまで力を込めたつもりはなかったのだが・・・・
『あ!!!あなたの能力はそのままに、年齢だけ元に戻しておきますので。』
陥没した床を眺めながら送還直前に女神が言った言葉を思い出した俺は、恐る恐る手を前に差し出していつも通り・・・
「・・・ステータスオープン・・・・。」
ステータス画面を開いてみた。
すると・・
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氏名:碧海 海里(あおみ かいり)
称号:異界の勇者・救世主・帰還者・高校生
種別:人間(日本人)
年齢:16
性別:男
LV:342
HP:56248661/86248661
MP:66427989/96427989
力 :9975
体 力:10912
素早さ:8814
攻撃力:15821
守備力:14633
魔 力:18105
魔 法:火・水・氷・土・雷・風・回復・時空
スキル:LV無限・創造・鑑定・収納
状 態:疲労・精神疲労
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確かに開いたステータス画面の文字の羅列にため息を吐いた。
「ホントに出たし・・・・それにしても帰還者だと?ふざけやがって・・・ってか、キツイんだけど。」
強制送還しておいてどういう了見だ・・・と、また女神への怒りが沸いてきたが、それ以上に異世界で散々鍛えた体には窮屈な学ランの方が気になってしまった。
制服をよく見てみると前ボタンが律儀に全部閉められている。
「ったく・・真面目かよ・・。」
俺はその状態にため息を吐きながら以前の自分にツッコミを入れ、全てのボタンを片手で乱暴に外した。ボタンが何個かどこかに飛んでいったが、腕回りはまだ少しキツイけどさっきよりはだいぶラクになった気がする。
元々異世界に転移する前の俺は、前髪は眉毛が隠れるほど長く、地味な度の強いメガネをかけ、痩せ細っていた『陰キャ』だった。向こうでは『カイリ』とステータス画面に表示されていた名前が本名に戻っていたので、陽キャたちから『ウミウミ(海という字が並んでいるから)』と呼ばれて馬鹿にされていたのを思い出し・・
「はぁ・・・そういやここに閉じ込められていたんだっけっか。」
さらに転移前に陽キャ達に騙されてここ(体育館倉庫)に閉じ込められ、『死にかけたところを女神に救われた。』・・・という嫌な事を思い出してしまった。
「まぁ・・命を救われたから許してやるか・・・。」
だが、強制送還されたとはいえ彼女に命を救われた事は確かだった。高窓から入って来る月明かりに目を向けその事を思い返しながらそう呟いた後、ステータス画面にもあったように長旅で疲労困憊だった俺は、
「っつーか・・メンタルも疲れていたんだな・・・。
丁度いい・ここで休も・・・ぉ・・。」
跳び箱の隣にある厚み30cmほどの体操用マットに飛び込むと、ゴロゴロと寝転がっては大の字になり、すぐに襲われた睡魔に逆らう事無く独特なカビ臭い空気を吸い込んで・・・ゆっくりと瞼を閉じた。
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