~始まりの村~ 8 今度はお前かよ
《ゴブリンの地下集落に潜伏しています。ですが、5分以内に移動しなければ見つかります。そのため、戦闘を避けたければ技能、忍び歩きを……。は?油を撒いて火をつける?》
《……いいでしょう認めます。ゴブリンの地下集落に油を撒き、火をつけて盛大に炎上させました。ですが、ゴブリン達は死亡確定ですがあなた達も焼死する可能性もあることをお忘れな………事前に想定していたため、火が広がる前に逃げれたと?……いいでしょう、では、火が広がる前に逃げ切れてか
白28成功 バンカ21成功
《で、では、あなた達は無事に地上へと続く階段に辿り着けました。ですが、あなた達を逃がさないと火の手を逃れたゴブリン達が後を追いかけてきます。3回のDEX対抗です。1回でも失敗すれば追いつかれ》
白(中級魔法、ウィンドウォール)MP8→4
《・・・》
《ごぶりんたちは かぜにはばまれ おってこれませんでした》
―――――――――――――――
「といいうことがあり、ゴブリンの集落を撲滅してきました」
「何やっとんのじゃおぬしら」
俺は今日のことを村長へと報告しに行った。
村長はちょっと現実を受け止めきれない顔をしていたが、無理ないと思う。
だって今回は異変の元凶の手掛かりを掴ませる為に俺達を送りこんだのだから。
しかし、帰ってくるなりゴブリンが森の浅層で集落を作ってて、それをたった2人で殲滅したという現実身のない話を聞かされたのだ。思考が空の彼方に旅立つのも無理はないと思う。
「……つまり、ゴブリン被害の方はもう考えなくていいと?」
「いえ、外に討ち漏らしがいる可能性もありますし、元凶を倒せてないので警戒は続けた方がいいですね」
「じゃよなぁ……」
村長が頭を抱えているが、俺もその気持ちは分かる。
俺達は確かに今日、浅層にあった集落を潰した。これで今以上のゴブリンの繁殖は阻止できたはずだ。
だが、ゴブリンの出現は異変の1つでしかなく、姿を消したヌシ様の件が解決していない。
加えて、ゴブリンの集落があった石造りの階段と広間。あれは完全に人工物だ。
ゴブリンは確かに地下をにも住むし、集落も作る
しかし、天然の洞窟や廃墟のような元からあった場所に住み着くため、自分達で1から棲み処を作るなんてことは滅多にない。
それに、ゴブリンが集落を作る理由は、周囲に利用できる廃墟等がない場合での雨風を凌ぐため。1から石造りの建造物を造るなんて芸当ができる程の頭は持っていない。
もしそんな事があり得るなら、それはゴブリン共には指導者がいる場合。ゴブリンを屈服させ従える程の強さを持ち、石造りの技術を教授できる知恵を持った存在が確実にいる。
「バンカよ、今日はよくやってくれた、おぬしに頼んで正解じゃった」
「光栄です」
「後でおぬしには給金に色を付けて渡す。……それと、もう1つ頼みがあるんじゃが……」
「分かってます、完全な原因の究明を務めさせてもらいます」
「話が早くて助かったわ。明日、村の防衛から何人かを浅層域でゴブリンの残党狩りへと向かわせる。なので次は、中層域へと向かってくれぬか?」
「……俺達は今日、浅層域をすべて探索したとは言えませんが、もういいのですか?」
「構わんよ。……そろそろ、おぬしらに任せきりにするのは悪いと思っておったしな」
「もちろん、追加の報酬も渡す」と言葉を続ける村長。
……おぬしら、ってことは白髪女にも引き続き調査をさせる気か。
あいつは無償でやってくれる感じはあるが、それは別として、便利屋のように扱われるのは嫌がりそうなんだよな。
もし受けさせたいなら、それ相応の報酬を提示して交渉する必要があるだろう。
「村長、白髪女への報酬は」
「ホワイト殿には追加で物資を支給する、おぬし同様にな。明日の日が昇り始める頃に倉庫へと来い」
「了解しました」
そこからは村長と軽い雑談をして解散した。
もちろん、白髪女にもこのことを伝える。
「てことで、引き続き依頼を受けてくれるなら、明日倉庫に集合することになったがどうする?」
「行くに決まってるだろ」
報酬の部分を聞いて即答した白髪女の目は、欲望に塗れたギャンカス共と同じ目をしていた。
・
・
・
夜の番を終えて就寝した俺は、翌日の日が昇る前に目を覚ました。
ちなみに、昨日の夜は白髪女の姿を見ていない。恐らくは宿で休んでいたのだろう。
そんなこんなで俺は、朝早くに支度を終えて倉庫前へと向かった。
カランカラン……。
そして現在、ここにいるのは俺1人。他の人は誰も来ていないようだった。
そのまま倉庫前で他の人を待つ。それから数分も経たないうちに、カツカツと足音が聞こえて来た。
「おはようバンカ、相変わらず早いのぉ」
「村長、おはようございます。俺以外にはまだ来ておりません」
「見れば分かるわ。それよりも……」
村長が倉庫の近くにあった、草むらが生い茂っている場所を見る。
すると、ガサリ……と茂みの揺れる音がした。
……って、
「……お前ら、何やってんだ」
「「ば、バレてた!?」」
そこにいたのは、リュートとヒナのガキ2人だった。
いつも一緒にいるリアだが、今回はいないようだな。
とりあえず、そこで何をしていたのかを聞く。
「おい、お前らここで何してた」
「え、ええっと……そう、かくれんぼしてたの!」
「そうそう!俺達、昨日からずっと隠れてたんだ」
「はぁ?2人一緒の場所で、今の今まで乳繰り合ってたってか?」
「「ち、乳繰り合ってない!!」」
こいつら乳繰り合うって言葉の意味を知ってんだな。マセガキ共が。
てか、嘘ついてるのもバレバレだ。今の今まで隠れていたとしたら、絶対に保護者を中心に村中「子どもが行方不明だ~」とかの騒ぎになってる。
そうなってないってことは、こいつらは昨日しっかりと家に帰っていたってことだ。
目を細めて2人を見つめると、冷や汗を流して目を逸らす。
「どうせお前ら、倉庫に忍び込もうとしてたんだろ」
「「ギクッ!」」
「村長から聞いたぞ、許可取れなかったんだってな。この倉庫は実質的に村長の物なんだから、不法侵入すると衛兵に差し出すことになるぞ」
「ご、ごめんなさい……」
「俺達、中が気になって……」
この村に俺達自警団はいるが衛兵はいない。
しかし、月に一度の頻度で街から衛兵が見回りに来て、村の状況や犯罪を犯した者がいないか調査しにくるのだ。
その際に、この前白髪女を入れてた檻に放り込んだ犯罪者を引き渡す。
だから、こいつらに衛兵が何か分かってるし、これ関連の脅しは効く。
……効くんだが、俺の脅しは想像以上に効いたようで、2人の目が涙で潤んできた。
やばいと思った時には遅く、今にも何出しそうな雰囲気。村長が、『何やっとんじゃ、おぬし』と言いたげな表情を向けてくる。
何とかしなけらばと思い、泣き止ませようとするが、生憎俺はガキ共に絡まれることはあれどあやし方なんて知らず、どうすればいいか分からず四苦八苦するしかできない。
涙目で謝る2人の姿が俺の焦りを加速さえ、どうすればいいだと頭を悩ませてると……。
「すまん遅れ………皆さん、おはようございます。それと、ごめんなさい遅れました」
白髪女が来たようだ。
ナイスタイミングだ、さっそくこいつらを宥めて貰おう。
「来たか、すまんがこいつらを頼む!」
「ラピス姐ぇ―――!」
「お姉さま~~!!」
白髪女が来たことを察知したガキ2人は、一目散に彼女へと駆け寄る。
突然の状況に少し動転している様子だったが、慣れた様子で2人の子供を宥めている。
……なんか、俺の後始末させて申し訳ないな。
「バンカ、情けないぞ」
「す、すみません……」
村長の言葉にぐうの音も出ない。
と、とりあえず、2人を宥めてくれたことの感謝を伝えよう。
「あー白……ホワイト、2人を宥めてくれたことを感謝する」
「別にいいですが、何があったので?」
「こいつら、俺達が倉庫のカギを空けた後、忍び込もうと隠れてたんだよ」
「「ごめんなさい……」」
「それで注意したら泣き出して」
「この有様と」
俺の話を聞いた白髪女は、少しの間思案して、何かを思いついたのか村長に話しかける。
村長はその言葉を聞いて、目を閉じて考える素振りをする。
数秒の思案の後、目を開けると首をコクリと動かして何かを首肯した。
それを見た白髪女は、再びガキ共に声をかける。
「村長に許可貰ったよ、私や大人から離れない約束をしてくれるなら倉庫に入ってもいいらしいけど、約束できる?」
「「分かった、絶対する!」」
「そっか、なら物を壊したりしないよう気を付けようね。それじゃあ、行こっか」
「「はい!」」
……どうやら白髪女は、村長相手にガキ共が入れるよう説得したみたいだな。
そんなことを今更ながら理解した俺は、白髪女に急かされて再び倉庫の中へと向かった。
一昨日ぶりの倉庫は、相変わらず武具とかアイテムとかで溢れていた。そんな光景が新鮮なのか、ガキ共は目を輝かせて見渡している。
こいつら、街にあるらしい武器屋とかアイテムショップみたら同じ反応しそうだな。
「それと2人共、お姉さんの探し物を手伝ってくれるかな?」
「「分かった!」」
「……それが狙いか」
白髪女の抜け目のなさに呆れてると、村長がにこやかな顔で全員に告げた。
「では2人共、この倉庫の中から欲しいと思う物を選び、ワシの前に持ってきてくれ。最大5つまでにしてくれよ?それ以上は村長としても困ってしまうからの。……子供らには別で用意するから、今は手伝いだけじゃ。分かったな?」
「分かりました」
「了解です」
「「はーい!」」
こうして俺達は、再び倉庫の物を漁った。
「……で、今度はお前の方が魔法本を手に入れたのか」
「いや、まさか村長が許可をくれるとは———待て、今度はってどういうことだ」
俺達は村長の倉庫にあった物資を運んでいる。
あの場で許可を貰った物だけを持ち出して各々の住む場所に置き、明日の調査に持っていけるよう整理するために。
まぁ、アイテムボックスという出鱈目な物を持ってる白髪女は、適当に積め込めばいいだろうがな。
「てか、何でお前だけは5つも持ち出し許可貰えてんだよ。俺なんか2つしか許可出なかったんだぞ。しかも理由が『何かお前に渡したくない』とかいうふざけた理由だし……!」
しかもその1つがただの鉄の棒というふざけた物だ。
確かに鉄製の棒でも殴ればゴブリンは倒せる。
だが、他にも剣とかメイスとかのちゃんとした武器あっただろ。何で武器ですらないただの鉄の棒を選んだんだよ、こいつ……?
「へぇ………そういう感じで影響出てるんだ……」
「おい、何だその意味深な言葉は」
「気にすんな、それよりも今回の探索も私とお前の2人だけなのか?」
「あぁ、正直すまないと思っているが、他の面子は村の防衛と浅層域でゴブリンの残党狩りをするらしい。だから俺達の方に割ける戦力が無い。悲しいが人手が少ない村の動かせる戦力をすべて費やしての結果だから吞み込んでくれ」
「いや、まぁ別にいいけど……それよりも、聞きたい事があるけどいい?」
他に何が聞きたいんだ?
そんな疑問を抱いた俺に、白髪女が真剣な面持ちで言う。
「最近、変なモンスター見かけなかった?」
「変なモンスター?」
「すっごい気色悪かったり、グロかったり恐ろしかったりする奴ら。例えば二足歩行する犬顔とか、ぶんぶんと飛ぶエビとか」
「ふむ……」
気色悪いモンスター?
二足歩行の犬顔はコボルトだと思われるが……えびって何?
少なくともこの辺りにはコボルトもえびなるモンスターなんて生息していない。
素直にそう伝えるか。
「……いや、見てないな」
「そっか……」
俺の言葉を聞くと、何やら考え込み始める。
その後は白髪女の泊まる宿に着くまで互いに会話はせず、到着したら何かをすることもなくすぐ解散した。
一体、白髪女のあの質問には何の意図があったのだろうか。
……そういえば、あいつって森の方から出てきてたよな。
なら、その道中でゴブリンや今言ったコボルトとえびに出会った可能性が……!
………いや、そもそもえびって何なんだよ。
明日、あいつに聞いてみるか。
こうして俺は自宅へと荷物を置き、寝支度をして就寝した。
そのまま夜は更け……翌日が来た。
「いよいよか……」
俺達は日が昇る空を見上げながら、南門前に立っていた。
お互いの準備は万端だ。装備をしっかりと揃えており、いつでも出発できるだろう。
「頑張って来いよ~~!」
「バンカさん、頑張ってください!」
「「頑張れ―――!!」」
「後ろは俺達に任せろ~~」
村の方からは、たくさんの村の仲間が声援を送ってくれている。
そんな彼らに手を振り返す。
すると、「お前は引っ込め~~!」というこれまた温かい声援を受け取った。
ハハ、もげろ。
「準備はできたか」
「もちろんだ」
白髪女の頼もしい返事が聞こえた。
その声に頷き、俺達は異変の元凶が待ち構えているであろう森の中層域……いや、ヌシ様の住処である「深層域」を目指して足を踏み入れるのだった。
――――――――――――――――
《前回と同様に5回ふってください。また、子供達の手助けによりラピス・ホワイトの技能に+20の補正が付きます》
カランカラン……。
白(65成功、32成功、45成功、40成功、22成功)
バンカ(67失敗、82失敗、27成功、68失敗、02クリティカル)
NEW所持品
白
・魔石
・下級ポーション
・マナポーション×2
・鉄の棒
バンカ
・中級ポーション
・中級の魔法本・風
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