~始まりの村~ 5 クリティカル
カランカラン……。
畑の件をギャンブル中毒者共に任せた俺は、白髪女を連れて村長の持つ倉庫へと向かった。
ちなみに、さっきうっかりと心の呼び名が口に出たため、以降は遠慮をやめて白髪女と呼んでいた。
ヒナが「ラピスお姉様の髪はパールハワイトなの!」とキャンキャン吠えかかってきたが、白髮なのは変わりないだろ……。それとも、女性にとってはそういう見分けも重要なのかね。俺がモテない一因はそこにあるのかもしれない。
「ここが目的地の倉庫?」
「そうだ、緊急時のために村長が集めた武具などを保管してる倉庫だ。暴れてたり黙って物を持ってったりすんなよ?」
「・・・」
「おい、何故黙る」
白髪女の反応に若干の不安を覚えた俺は、倉庫の扉に向かい……あることに気が付いて手を止める。
そんな俺を訝しげに見る白髪女を無視して、目線を下の方へと向ける。
「……なんでお前らがいんだよ」
「だって、こんな機会じゃないと入れないじゃんか」
「そーだそーだ!」
「ご、ごめんなさい……。でも、少し興味があって…」
「リアまで…⋯」
ガキ共がいつも通り好奇心のまま動いてやがる。
だが、お前らは入れられんからな。俺と白髪女の立ち入り許可は貰ってるが、もちろんこいつらの許可はとってない。
部外者を入れれて怒られんの俺なんだぞ。今回も絶対に連れてかん。
「駄目だ、村長の許可が無ければ入れられん。そんなに入りたいなら許可貰ってこい、許可を」
「「分かった!」」
ガキ共は元気よく返事してどこかへ走っていった。
ヒナがリアの手を繋いで向かったから、これで俺と白髪女だけになる。さっそく入るか。
村長から預かった鍵で扉を開き、倉庫へと立ち入る。
……白髪女の奴、鍵を開けてた俺の手を凝視してたな。不穏な感じがする。やはりこの女は警戒しなければ。
白髪女の動きに注意を払いながら、倉庫の中へと進んで行く。
中には様々な種類の道具や武具が並べられており、それらが埃を被っていた。しかし、それでもここの物品達は現役と変わらない活躍ができるだろうと予想がつく。
この村の村長は若い頃、冒険者として大成していたらしい。その頃の趣味が様々な魔道具及び武器防具の収集だ。そんな村長のコレクションがこれらの物品であり、目の前の光景は村長の冒険者人生の結晶そのものだ。
ちなみに、そんな村長が何故この村で村長をやってるのかというと、村長の嫁さんに一目惚れして婿入りしたから。その時の村長の年齢が35歳で、嫁さんの年齢が15歳。
……今思うと、20歳差での結婚ってヤバイな。(注:この世界基準での話)
「ねぇ、ここにある物っていくつ持ってっていいの」
「持てる範囲でならいくらでもだ。……お前、魔法のカバンとか持ってないよな?」
「モッテナイヨ」
「そうか、それなら———いや待て、なんか言い方変じゃなかったか?」
「そんなことない」
「……と、とにかく!全部持っていくなよ。常識の範囲内で、持って行っても動きが阻害されない程度に自分の強化に繋がる程度にしろよ!」
「はいはい、仕方ないな……」
こいつ、魔法のカバン持ってたのかよ!
魔法のカバンとは、冒険者や商人ならば欲してやまない外見以上に物を入れられるカバンだ。それを持っているか持っていないかによって、その人物が今後大成するかを判断できる程に優れた魔道具。
村長も持ってたらしいが、冒険者引退した時に同じパーティの後輩に渡したから今は無い。
そんな貴重な物をこいつが……。こいつ、本当に何者だ?
「じゃ、目星振って」
「は?」
「いや、だからお前も目星振って……そうだった、今の無し」
「そ、そうか……」
たまに変なこと言うな、こいつ。
目星ってなんだ?魔法とかそういうものなのか?
さっきから分からないことばかりだが、今はとにかく自分の分を探すか。
カランカラン……。
……またこの音だ。
さっきから鳴ってるこの音はマジでなんなんだ?
そういえばこの音は、白髪女が近くにいる時だけ聞こえている気がする。
それに、この音にも聞き覚えがあるんだよな……どこで聞いたんだっけ。
………あっ、確かあの時……。
『ううぇ~い、俺の1人勝ち~!』
『くっそ、また負けた…!?』
『お前は弱いなぁ~?』
『うっせえ!次こそは勝つ!』
あのギャンカス共が賭け事をしていて、カランカラン……とダイスを転がす音がして………。ってことは!
カランカラン……。
「この音って、ダイスを転がした音!」
ガラッ
「え」
上を向くと、積み重なっていた木箱が不安定に傾き揺れており、たった今バランスを崩して落ちて来た。
俺の頭目掛けて……。
「あだばっ!?」
くっそ、想像以上に痛い。作業中に別のこと考えるべきじゃなかったか。……って、木箱の中身に傷とかついてないよな?
今の落下で中身に傷が無いかを確かめる。
カランカラン……。
すると、その内の1つに立派な皮鎧が納まっていた。
俺が着ても問題ないサイズだ。しかも、傷もほとんど無いし頑丈そうだ。
他の木箱の中身も確かめて、傷も破損もないことを確認してから、当の皮鎧が入っている木箱以外を元の場所に戻す。
皮鎧が入った木箱は別の場所に避けておこう。後で村長にどういう品なのか確認するために。
その後探したのだが、俺に合いそうなアイテムや武器は見つからず、最終的には偶然手に入れたこの皮鎧だけになりそうだ。
「そっちは何か見つかったか?」
「見つかったけど、これって本当に貰っていいんだよな?」
「ああ、お前への報酬の一部みたいなものらしいからな」
「……一部ってことは、まだ貰えると思ってもいいんだよな、そうだよなぁ?」
「お、おう、村長もそう言ってたし、働き次第ではさらに追加で貰えるかもしれないぞ。だからそんなに睨むな」
ギロリと俺を睨んでいた白髪女だったが、村長が言っていたのだと伝えると、一応納得したのか気を取り直していた。
そうして望みの装備を手に入れた俺達は、選んだ武具達を持って村長の元へと報告しに向かった。
―――――――――――――――
《倉庫に到着きました。ここでは目星を5回振ってください。成功した数だけ希望した物が貰えます》
《……そういう魔術本はありません。魔法の本は……クリティカルが出たら考えます。その変わりに、ファンブルが出たら1回分減ります》
《重火器はありません、魔法銃も普及してません》
《駄々こねないでください。早く振りやがれください》
《では、判定します》
白(目星17成功、02クリティカル、15成功、19成功、53成功)
バンカ(46失敗、96ファンブル、09成功、63失敗)
《・・・》
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