【架空自己啓発本】『基本×継続=最強説』~地元騎士団解雇からGランクスタート、才能なし必殺技なしの俺が基本トレーニングの継続だけで冒険者ギルドMVP4回受賞&殿堂入りSランクまで駆け上がった方法~

水森つかさ

はじめに

はじめに ~騎士団をクビになった落ちこぼれが、なぜ年間MVP4回を取れたのか

「ジハツ、お前はもう来なくていい」


騎士団長の言葉が、石畳に響いた。俺の冒険者人生は、最悪の形で始まった。


剣術は三流。魔法は使えない。体力測定では最下位。同期の中で唯一、基礎訓練すら満足に完了できなかった。仲間たちの視線が痛かった。「あいつ、なんでここにいるんだ?」


騎士団をクビになった夜、酒場で一人飲んでいると、同期のライガーが声をかけてきた。彼は後に冒険者に転職することになる。


「ジハツ、悪いけどよ。お前、騎士にも冒険者にも向いてないよ」


ライガーは悪い奴じゃない。むしろ親切心で言ってくれたのだろう。しかし、その言葉が俺の胸に突き刺さった。


「そうだな……才能がない奴は、何をやってもダメなんだ」俺はそう言って彼と別れた。


家に帰ると、母親が心配そうに尋ねた。


「どうだった?」


「クビになった。冒険者をしようと思う」


長い沈黙の後、母親は言った。


「もう普通の仕事を探しなさい。冒険者なんて、才能のある人だけの世界よ」


母だけでなく、友人たちも同じ答えだった。

全員が正しかった。俺には才能がなかった。



しかし、20年後の俺は、冒険者ギルド史上最速でSランクに到達し、年間MVP4回受賞(777年、780年、783年、786年)、迷宮制覇記録47箇所、連続任務成功記録288回という前人未到の記録を樹立していた。


俺を心配してくれた母親は?今では俺の成功を誇らしげに語っている。


何が変わったのか?


答えは驚くほどシンプルだ。俺は特別な才能を身につけたわけでも、伝説の武器を手に入れたわけでもない。ただ一つのことを学んだだけだ。



それだけだった。しかし、この「それだけ」を理解している人間は、驚くほど少ない。



君は今、この瞬間も何かに悩んでいるはずだ。なぜあいつの方が評価されるのか。なぜ俺だけ結果が出ないのか。なぜ運だけで成功する奴がいるのか。


その答えがここにある。


俺がGランクからSランクまで駆け上がった20年間で発見した、才能に頼らない唯一の成功法則。それは決して複雑なものじゃない。むしろ、シンプルすぎて多くの人間が見過ごしてしまうものだ。


6年目、転機が訪れた。老練な元Aランク冒険者ゴ・インキョーと組んだとき、彼は言った。


「ジハツよ、お前は間違っている。強くなりたいなら、華麗な技を追い求めるな。基本の一撃を、誰よりも確実に当てることを考えろ」


その瞬間、俺の頭の中で何かが弾けた。


「相手より先に攻撃を当てる」


戦いの本質は、これだけだったのだ。魔法の威力も、剣技の華麗さも、全て二の次。まずは確実に、相手より早く攻撃を当てる。それができれば勝つ。できなければ負ける。


俺はその日から、この単純な原則に全てを賭けた。感情的な判断を捨て、論理だけを信じた。苦手分野の克服ではなく、得意分野の強化に集中した。完璧を目指すのではなく、そこそこの完成度で確実に実行し、サイクルを回し続けた。


結果は数字が証明している。Dランク昇格まで2年、Cランクまで4年、そしてBランクへ。初の大型任務では、基本動作のみでドラゴンを倒すことができた。業界が注目し始めたのはその時だった。


そこから先は、まさに快進撃だった。一気にSランクまで駆け上がり、従来の常識を覆す記録を次々と樹立した。


しかし、俺が本当に伝えたいのは、記録や称号の話ではない。


20年間で俺が学んだ最も重要なこと。それは、毎日の小さな改善が年単位で見れば必ず大きな差となって現れるということだ。才能の有無ではなく、正しい努力の継続が全てを決める。


この本には、俺個人の考える「正しい努力」の具体的な方法論を述べたつもりだ。論理的で、再現可能で、そして誰にでも実践できると思われる手法を厳選するように努めた。

俺自身、Sクラスになったとはいえ欠点だらけの冒険者だ。その冒険者が書いた本である。確実に、その理屈は穴だらけだろう。そこは暖かく見守ってくれるとありがたい。



最後に、一つだけ警告しておく。


この本に書かれていることは、地味だ。派手な必殺技も、一発逆転の秘策もない。毎日の小さな改善と、継続的な基本トレーニングだけだ。


それでも続けられるか?


決断するのは君だ。


才能に頼った一発逆転を夢見るか。基本の積み重ねで確実な成功を掴むか。人生に答えが無いように、どちらが良いとは断言できない。


ただ、俺は後者を選んだ。そして、それは俺にとって正解だった。

これから、その俺個人の経験を、あくまで、淡々と話していくだけだ。


本書が君の生活に良い効果をもたらすことができれば、とてもうれしい。

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