メタルマスター Full speed or nothing!
後藤ハチ
【Bonus Track / prologue】
ガチャ
――この物語はギターに挫折した少女が「最高にイカれたメンバー達と」
あぁん?
ちょっと黙ってなさい。
お静かに。
こほぉん。
――最高にイカれたメンバー達と日本の音楽シーンに殴り込みをかけるお話しであるーー
ほんとにこれでいくのか?
わたくし達にはぴったりですわ。
あゆ!上出来よ!
あぁ~せんぱ~~い。
おいまだ録音してるぞ?
おおっと。
ガチャ
私、小丸あゆむは何をやってもダメな人間だ。
勉強ダメ、スポーツダメ。何かを始めてみようにも継続力もなければ忍耐力もなく三日続けば御の字で続かない。
結局、現実逃避するように部屋の掃除をする始末。やる気があるのは最初だけ。
ふと皆そうだと周りを見てみれば勉強やスポーツそして趣味に没頭しそれらは取り柄と言えるものに昇華していた。
同じだけ時間があったはずなのに自分には何も無い・・・。
学生の今でしか出来ない事ってたぶん沢山あるのに・・・。
それに漸く気付いたのは中学三年に上がった頃。
何かに急かされる感覚に突き動かされてもう一度トライしてみようと手を付けてみたイラストは絵心の無さに撃沈して、編み物やマジックや格闘対戦ゲームも続かずにそれら全ての道具や機材は既に部屋のインテリアとなっている。
最早壁の模様と言っていい。今もそこある。
好きなのはアニメを観る事。
どんな困難にも屈しないキャラクター達の直向きな姿は現実のダメな自分にとって思わず胸が熱くなる程魅力的に映る。観る度、然も一緒になってやり遂げたかのように感じて自ずと自己肯定感が高まる。そんな錆びた自分にメッキをする、みたいな感覚がいつの間にか癖になっていた。
そうして現実と虚構が交錯している中、後に社会現象となるバンドアニメが放送されたのを観てすっかり感化された私は、こんな青春送ってみたいなぁ簡単そうにやってるしそれに楽しそう。これなら私でも続けられるかも?と始めたギターも一か月と持たずに辞めて早速インテリアの数に加わった挙句、友人にあげて今や部屋にすら無い。
確かあの辺に置いてた。残された用具が寂しい。
やっぱり・・・と言うか何と言うか・・・アニメのキャラクターって無限の精神力があるよなぁ。毎日ベストコンディションで疲れ知らずと言うか。
けど現実はそうじゃない・・・。
なかなか思う通りにはいかないよ・・・。
そんな事をぶつくさ言って早一年。
結局何もものになってない・・・!
三百六十五日もあったのに何やってんだ私はー!
それでも懲りずにこう思う。
はぁ・・・こんな私でも出来るようになる事あるのかなぁ・・・?
そう思う今日は中学卒業後の春休み最終日、でその朝。
ベッドで横になったまま、ん~~~~!と伸びをして体を起こす。
壁に掛かけたカレンダーには四月十日に花丸してある。
いやいや!今のままじゃダメだ!
勢い良く立ち上がる、も首を傾げる。
でも・・・何をすれば・・・?
ふっと湧いた熱意が一瞬で冷めてすとんと腰を下ろす。
明日から始まる高校生活。
せめて何か一つ出来るようになりたい。
新調した制服を眺めながらそう思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます