第19話 逆転の発想

 予算削減と人員不足に直面したウォル=水原たちは、作戦を変更することにした。


「大規模な実証実験は後回しにしましょう」


「後回し?」


「まず、王都の具体的な問題を解決することから始めるんです」


ウォル=水原は王都の地図を広げた。


「この王都で最も深刻な衛生問題は何でしょうか?」


「そりゃあ、貧民街の水不足だろうな」


アルカナが答えた。


「王都南部の下町地区は、井戸が少なくて水の確保が大変なんだ」


「その地区の人口は?」


「約五万人ほど」


「五万人...」


ウォル=水原の目が輝いた。これは絶好のテストケースだった。


「その地区で小規模な上水道システムを構築できれば、効果を実証できます」


「小規模とはいえ、五万人は相当な規模だぞ」


「だからこそ意味があります。成功すれば、反対派も黙らざるを得ない」


しかし、問題は資金だった。予算が削減された今、大規模な工事は不可能である。


「何か良い方法はないかしら」


エルナが考え込んだ時、リリィが手を上げた。


「段階的に建設するのはどう?」


「段階的?」


「最初は一つの区画だけ。効果が証明されたら次の区画へ。少しずつ拡大していくの」


「それは素晴らしいアイデアです」


セオドアが興奮した。


「段階的建設なら初期投資を抑えられるし、問題が発生しても修正が容易です」


「よし、その方向で行こう」


ウォル=水原は決断した。


「まず、最も水不足が深刻な一区画を選んで、小規模な上水道を建設する」

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