1-3 - 不法侵入じゃん……。
その空き家は非常に広かった。
クリスタルラインから広いとは聞いていたのだが、ロイは並の一軒家だろうと思っていたのだ。
「……マジか。ここ、絶対貴族サマの別荘だろ……」
そのレンガ造りの豪邸は、その建物自体でも想像の三倍はあった。それだけでなく、その豪邸がさらに縦横三倍に伸びても収まりきるようなでかい庭がある。
「いや、えと、ほら! あそことかちょっと崩れてるし、表札も折れちゃってるし、大丈夫だって! ぼくが三日いても怒られなかったし……」
手入れは適度にされているが、やや老朽化がみられる。表札はぱっきりと割れて半分がどこかへ行ってしまっている。
さすがに別荘といえども自らの名前を刻んだ表札がそのままというのは貴族にとってみれば面子の問題だ。誰か雇って修理くらいするだろう。空き家というのは本当かもしれない。
「……『
念のため、ロイは調べておくことにした。ふわりと透明なガラス板のようなものが宙に出現し、びっくりしたクリスタルラインが猫のように跳ねる。
「そ、それは……?」
「俺の固有魔法だよ。決めた場所内に質問の答えがあれば、それを持ってくることができる。……えー、この屋敷は空き家か?」
ガラス板が透明度を失い、白い曇りガラスのようになる。少しすると、その表面にペンで書くように字が浮き上がってきた。
『空き家ではない』
「……おい」
「え!? え!? に、荷物とか僕少し置いてるよ!?」
頭を抱えたロイが続いて、「現在も管理されているのか? あと、誰に? それと、次いつごろ見に来る?」と問いかける。
『されている。レイーザミン公爵。現在馬車がこちらへ向かっており、順調にいくと一時間で到着する』
「ええぇえええええええ!? ぼっ、ぼくっ、殺されるぅ! 荷物取ってくるぅううううう!」
とんでもないオーバースピードで屋敷の中へ突撃していくクリスタルライン。
「なんてバッドタイミングだよ」
荷物の整理がそうとう長引いたようで、ロイは時間を数えていなかったが、クリスタルラインが屋敷から出てくるのと同時に公爵家の馬車が屋敷の前に止まった。
ロイは走って逃げた。クリスタルラインは検閲官さんに頼んで大空を飛んだ。
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